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2017.04.17
東大生考案!“脳が活性化”するおいしい料理3選
家庭でも簡単に作ることができる“脳に効く”料理とは?
人間は毎日の食事をエネルギー代謝の「TCAサイクル」(体内でエネルギーを作り出していく回路)に取り込み、活動エネルギーを生産する。このエネルギーを最も使うのは脳だ。そこで「脳エネルギー」特集の第2回では、料理を通して脳のパフォーマンスを向上させるレシピを考案し、実際に調理する東京大学料理愛好会に“脳活性化メニュー”について聞いた。
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INDEX
脳と体を作り上げる料理を求めて
バランスよく栄養を取りましょう――。
耳慣れた言葉だが、これは栄養をバランスよく摂取して、脳を上手に働かせ、健康な体を維持するということにほかならない。では、そのために必要な栄養とは何か?
東京大学料理愛好会は、2010年「平日さまざまな活動をする大学生が、週末にホッとひと息つける場所を作る」ことを目的に設立。現役バリバリの東大学生を中心に、日本女子大学の家政学部の学生という将来の料理のプロや東京女子大学、聖心女子大学などのメンバー約90名が在籍している。
レシピは担当の5名が持ち回りで考案、長期休暇や試験期間を除き1週間に1度、調理会を開催しているという。また、2012年には初の書籍『東大料理愛好会 頭がよくなるレシピ』(データハウス刊)を発売するなど、現役東大生の料理サークルとしてメディアの注目も浴びている。
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東大料理愛好会が手掛けたレシピ本の第1弾
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第2弾のおやつレシピ本『アタマとカラダが冴える! 東大おやつ教室』(新潮社刊/左)と、大手調理器具メーカー・サーモス社と提携した第3弾『東大料理愛好会が教える育脳レシピ』(データハウス刊/右)
そこで、4月初旬に行われた新入生歓迎会を兼ねた調理会にEMIRA編集部が潜入。彼らが作る“脳に効く”料理を探った。
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料理初心者が多かったが、新入生たちも積極的に調理に参加
“脳に効く”食材はコレだ!
今回の調理会では、前菜、メーン、デザートの3品のレシピに挑戦。ポイントは3皿を一度に取ることで“栄養の相乗効果で脳にいい”レシピになっていることだ。代表を務める東京大学文科三類2年・藤井俊行さんは言う。
「なにか一つの食材が”脳にいい”わけではありません。脳をうまく機能させるためには、それぞれの食べ物が持つ栄養を理解して特性を生かし、組み合わせることによって栄養素の吸収を促進、ひいては脳にいい食事ということになると思います。今回でいえば、脳を働かせるために必要な糖分をパスタ、脳細胞を作るタンパク質をマダイ、学習力がアップするレシチンを豆腐から取っています。また、全粒粉の食物繊維で腸を整え、栄養の吸収率を上げることなどが工夫されたレシピになっています」
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現在、代表を務めている東京大学文科三類2年の藤井俊行さん
実際にメニューを考案したのは、レシピ作成担当の一人、天谷奈菜子さん(上智大学外国語学部フランス語学科2年)。料理好きが高じてクッキングスクールでアルバイト中のため、栄養の知識はスクール講師との会話から得ているそうだ。さらに、自分で必要な栄養を入念に調べた上で、サークル役員にレシピを提案していた。
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今回のメニューを考案した天谷さん(右)は、調理の仕方もしっかりと指導する
「頭をよくするためには、勉強をしなければいけないですよね。その勉強のパフォーマンスを上げるためには、どんな栄養が必要なのかを考えてレシピを作っています。でも、ただ栄養が取れるだけじゃなくて、おいしさも追求したい。今回は、以前フランスを旅行したときに食べたトリュフのパスタから発想を得て、『キノコの豆腐クリームパスタ~トリュフ風味~』のレシピを提案しました。
現地で食べたものと変えたのはソース。生クリームではなく豆腐を使うことで、学習能力を上げるレシチンを取りながらも、ヘルシーに。また、デザートも作りたいと思って、ココアクッキーにしようと決めた時も、小麦粉ではなく全粒粉を使えば亜鉛やビタミンB1が摂取できて記憶力向上が期待できるので、粉の配分を変えました」
“脳にいい”だけではなく、食べてもおいしい料理をメンバーに作ってもらいたい。そんな思いからメニューを決めて、栄養素や相互作用を調べた上で素材を微調整する。それが、東大料理愛好会の提案する“脳に効くレシピ”だ。
東大料理愛好会が考案!“賢い脳になるディナー”
バラエティーに富んだ食材を使うことで、食べて楽しく、さらに多種多様な栄養を体内に入れることで、それぞれの相互作用により吸収率を高める。そんな趣旨のもと考えられた3皿がこれだ。
【真鯛のカルパッチョ】
「マダイに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は酸化しやすいんです。調べたら抗酸化ビタミンと一緒に取るのが効率的ということが分かったので、野菜を組み合わせました」(天谷さん)
そこで合わせたのが、ビタミンEやβ-カロテンを摂取できるベビーリーフと、ビタミンCが豊富なレモンだ。
●マダイ
脳の神経伝達物質の合成を促し、活性化に影響するタンパク質が豊富なマダイ。
「記憶、思考、集中力に影響するテオブロミン、脳の神経組織に多く存在して機能維持に必要不可欠な必須脂肪酸のDHAやEPAも含まれています」(天谷さん)
<材料/4人前>
マダイの刺身:1サク ベビーリーフ:40g プチトマト:5個 オリーブオイル:大さじ1 ポン酢しょうゆ:小さじ1 レモン汁:小さじ1 粗塩:ひとつまみ ブラックペッパー:少々
<調理工程>
1)オリーブオイル、ポン酢しょうゆ、レモン汁を合わせよくかき混ぜる
2)タイを薄めに切る
3)プチトマトは1個を4等分に切る
4)タイとベビーリーフを皿に盛り付け、(1)をかけまわし、最後に粗塩とブラックペッパーを散らして完成
【キノコの豆腐クリームパスタ~トリュフ風味~】
「ブドウ糖(炭水化物)は脳のエネルギーになるので、それをパスタでしっかり取ります。ソースに豆腐を使ったのは、学習能力を高めるレシチンが豊富だから」(天谷さん)
他にも、脳神経の興奮を抑える作用が期待されるカルシウムを含む牛乳。さらに脳の回転に関わり糖分をエネルギーに代えるTCAサイクルに寄与する、ビタミンB1を含むキノコを具にしたことで、トータルバランスが考えられている。
●パスタ
体内に入り分解されるとブドウ糖になる炭水化物。
「ブドウ糖は脳のエネルギー源で、不足をすると頭が働かなくなったり、イライラして集中できなくなるんです」
●キノコ
炭水化物を分解して、TCAサイクルに取り込む過程で必要となるビタミンB1。「キノコはビタミンB1も含まれていますし、また食物繊維も豊富なので腸内環境を整え、他の栄養が吸収しやすくなりますね」
●豆腐
「勉強をして覚えた情報をしっかり伝達するためには、豆腐のレシチンが必要」(いずれも天谷さん)だそうだ。また、生クリームの代わりに豆腐を使用しているため、カロリーを大幅に減らすことができて、一石二鳥。
<材料/4人前>
パスタ:400g キノコ:適量 絹ごし豆腐:200g 牛乳:大さじ4 粉チーズ:大さじ4 バター:60g トリュフソース:大さじ1 塩、コショウ:適量
<調理工程>
1)鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩(分量外)を入れて、パスタを規定時間より1分間短くゆでる
2)フライパンでバターを溶かして、牛乳を加える
3)キノコを小房に分けて(2)に入れる
4)火を止めて豆腐を崩しながら加え、泡立て器でよく混ぜてクリーム状にした後、粉チーズとトリュフソースを加える
5)(4)にパスタのゆで汁を加えて、程よい硬さにする
6)ゆで上がったパスタを皿に盛り付け、(5)を上からかけて完成
【全粒粉ココアクッキー】
「全粒粉には、脳の刺激伝達物質を合成する亜鉛、ブドウ糖の代謝を助けるビタミンB1と脳にいい栄養素が豊富に含まれています」(天谷さん)
クッキー作りに欠かせない小麦粉の半量を全粒粉に代えることで、栄養価値が大きく異なるのだ。
●全粒粉
小麦の表皮、胚芽、胚乳の全てを粉にした全粒粉。
「含まれている亜鉛は脳の刺激伝達物質を合成して、ビタミンB1はブドウ糖の代謝を助けます。食物繊維も豊富なため、腸の調子も整えてくれますね」
●ココア
「ココアには、脳を活性化して集中力を高めるテオブロミンが含まれています」(いずれも天谷さん)
そのため、自律神経を調節してリラックス効果が期待できる。
<材料/作りやすい分量>
全粒粉:50g 薄力粉:50g ココア:8g 上白糖:50g バター:50g 卵:1個
<調理工程>
1)卵、バターは室温に戻しておく
2)全粒粉、薄力粉、ココアを混ぜてふるう
3)バターをクリーム状になるまで混ぜる
4)(3)に上白糖を加えて混ぜ、白っぽくなったら卵を加えて全体を混ぜ合わせる
5)(2)の粉類を(4)に加えて、ひとまとまりになるまで混ぜる
6)(5)の生地を冷蔵庫で約30分ほど寝かす
7)冷蔵庫から取り出した(6)の生地を延ばして型で抜き、170℃に予熱したオーブンで15分間焼く
脳と食事の重要性を考える
最後に代表の藤井さんに、食事と脳の関係について聞いてみた。
「食事が体を作る、脳を活性化するという意識は必要だと思います。何が体にいいのか。どの栄養素の組み合わせが栄養の吸収を促進するのか。それを意識して食事をすること、もしくは料理をすることは高度な作業になりますが、大事なことだと思います」
そんな藤井さんが、日ごろから気を付けて食べるようにしている食材はキャベツ。その理由は腸内環境を整えるからだそうだ。
「腸内がきれいになれば、ほかの栄養素が吸収されやすいですよね。キャベツはさまざまな料理に使えるので、実に汎用性が高い食材だと思います」
食べたものが体と脳、つまりあすからの自分を作る。ともすれば本能の赴くままに好きなものを食べてしまうこともあるが、食事に対する意識を変えて栄養にまで気を配ることは、未来の自分を作るために重要なことと言えるだろう。
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