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自動走行ロボが荷物を配送! 神奈川県藤沢市でパナソニックが主導する「レジリエンスの高い街」

パナソニック工場跡地における、パナソニックら18団体および藤沢市が参画するまちづくりプロジェクト

パナソニックが中心となり、2014年にグランドオープンした神奈川県藤沢市の「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(以下、Fujisawa SST)」。コロナ禍において、いち早く自動走行ロボットによる住宅街向け配送サービスの実証実験(2020年11月と2021年3月の2段階)を始めるなど、関連団体と住民が一体となって変化への対応力を発揮。“100年続く街”というタウンコンセプトを証明するように進化を続けてきた。今後はどんな未来を描き、どんな課題を抱えているのだろうか。Fujisawa SST マネジメント株式会社 代表取締役社長の荒川剛氏に話を聞いた。

技術ではなく、住民の暮らし起点でスマートライフを実現

神奈川県藤沢市のパナソニック工場跡地に広がるFujisawa SSTには、現在、約19haの敷地に約560戸の家が立ち並び、およそ2000人の住民が暮らしている。

Fujisawa SSTには、現在約600戸の戸建て住宅が建築され、全て入居が完了している。今後は560戸規模の集合住宅が建設される予定

大きな特徴は、技術先行のインフラ起点ではなく、住民一人一人の“くらし”起点の街づくりを進めていること。

それを実現するために、独自のタウンマネジメント会社である「Fujisawa SSTマネジメント」が住民の生の声を拾い上げ、新しいサービスや技術を取り入れ街を発展させ続けている。同社の代表を務める荒川 剛氏に、具体的な街づくりのビジョンを語ってもらった。

「スマートシティというとエネルギーや環境保全への取り組みが中心になりがちですが、そこだけを突き詰めると我慢大会のようになってしまい、持続的に豊かな暮らしを実現することが難しくなってしまいます。そこで、Fujisawa SSTでは初期段階からエネルギーだけでなく、セキュリティ、モビリティ、コミュニティ、ウェルネスの5つのサービスをワンストップで提供することを目指しています。

もちろんわれわれだけの力では限界があるので、さまざまな分野の企業や地元の大学、そして藤沢市が参加した組織『Fujisawa SST協議会』を設立して官民連携で街づくりを推進してきました」

Fujisawa SSTマネジメント株式会社 代表取締役社長の荒川 剛氏

街全体の完成は2024年度以降となるが、既に5つの分野で提供されているサービスは多岐にわたる。

エネルギー分野では、全ての戸建て住宅に太陽光発電システムや蓄電池が設置されており、自立共生型のエネルギーマネジメントを目指している。

また、街全体のエネルギー需給データを収集しており、その日の電気やガスの使用状況、太陽光発電システムによる再生可能エネルギーの供給状況、CO2排出量などが各家庭において可視化できるようになっている。

全ての戸建て住宅にスマートテレビが設置されており、住民専用の掲示板機能「タウンポータル」で使用電力や街の情報を確認できる

セキュリティ分野では、まず街の出入り口を限定し、エリア全体として約50台ものカメラで見守りを行っている。

見守りカメラとセンサー付きLED街路灯がシステムで連動することにより、人が近づくと2~3歩先まで照度がアップする

さらに全住戸にホームセキュリティを標準装備し、日中はマネジメント会社の社員が、夜間はALSOKが巡回することで、開放的でありながら死角のないセキュリティを実現。

車が速度を出しにくい道路構造を採用するなど、交通安全の観点でも安心・安全の街づくりを進めている。

街なかに設置されている「見守りカメラ」の映像の一部はポータルサイトから閲覧できるようになっている

モビリティ分野では、将来的なEV(電気自動車)の普及とカーシェアリングの活用を想定したインフラづくりを実施。各住戸にEV用の充電コンセントを標準装備し、またEVのシェアリングサービスも導入。レンタカーデリバリーサービスや電動アシスト自転車のサイクルシェアも用意されている。

コミュニティ分野のサービスでは、住民と企業、住民と行政をつないで、街の運営に必要なさまざまな情報を提供。情報を一元的に可視化することによって、コミュニティがスムーズに運営できるよう支援している。

街の中心部にあるコミッティセンター。住民同士の触れ合いの場となっているだけでなく、防災施設としても機能する

最後にウェルネス分野では、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、各種クリニックや薬局、学習塾などが集まった複合型の施設「Wellness SQUARE」を設けている。

高齢者向け住宅では、クラウドサービスに対応するエアコンと非接触型センサーを組み合わせた見守りサービスや、室温コントロールなどのサービスも提供している。

サービス付き高齢者向け住宅がエリア内に配され、クリニックや薬局、教育施設も併設し、住民の健康管理をサポートする

「さまざまな取り組みをしているものの、一番の特徴はコミュニティの存在です。住民の方々だけではなく事業者も自治会に関わって、全員でより良い街をつくるという意識が共有できていると思います。設備などのハード面はどんどん陳腐化してしまうものですが、住民参加で街の課題を吸い上げたり、新しく導入したサービスの意見を伺うことで、街全体がアップデートを続けていく。それが私たちの理想とするサスティナブルなスマートシティの在り方です」

コミュニティの醸成が街のレジリエンスを高める

街に関わる全員が街の成長に携われるように、Fujisawa SSTでは、2014年から「まち親」プロジェクトと名付けた産官学と住民の共創型街づくりも行っている。

「住民の方々と企業の声を融合させるカタチで生まれた代表的なプロジェクトが、ヤマト運輸株式会社が運営する荷物配送の一元化サービスです。各宅配業者がそれぞれ配達するのではなく、全ての荷物を一つの施設に集約し、ヤマト運輸がまとめて各戸に配送するサービスです。住民の方々は荷物を一括で受け取ることができて、いつもと同じ配達員が配達してくれる安心感も得られます。一方、配送側も再配達のコストを削減できるというメリットがあります」

ヤマト運輸が運営する「Next Delivery SQUARE」。提携宅配業者の荷物はこちらに集められた後、Fujisawa SSTの住宅へ個別配送される

「近年はパナソニックの技術を生かして住民の快眠をサポートするサービスにも力を入れています。スマートフォンのアプリと、エアコン、スピーカーを搭載するLED照明を連動させることで快適な睡眠環境を作り出すシステムです。これも住民の方にモニターになってもらい、生活や健康状態など睡眠に関係するデータを収集することで2020年の3月に市場販売を開始することができました」

Fujisawa SSTのように自治体・企業・住民の連携を成立させることはスマートシティが成功する重要なキーポイントなのかもしれない。

「2020年11月に小型低速ロボットを使った住宅街向け配送サービスの実証実験を始めた際にも、行政から公道走行の特認許可をいただいたことで住民の方々からの信頼や理解を得られやすかったと思います。また、自分たちが関わったことでサービスが向上すると、自治会の会議などに参画するモチベーションも上がるという声もいただいています」

自動走行ロボットを活用した搬送サービスの実証実験が2020年12月よりスタート。住民からの公募を経て、名前が「湘南ハコボ」に決定した

実は、6年間にわたる住宅分譲の中で、新規に街の戸建て住宅を購入される世帯の動機は、少しずつ変化してきているという。

「初期は、スマートタウンということで環境やエネルギーにまつわる取り組みに関心の高い方が多く購入されていました。その後、住宅販売の2期、3期になると、先に住まわれている方が小さなお子さんを街の公園で遊ばせている様子を見て、街の“安心・安全”を気に入って購入される方が多いですね。最近では、街の中で企業が行う実証実験にも積極的に協力してくれる方も増えています。街の設備やサービスだけでなく、住む方の意識もどんどんアップデート変化されていくことがFujisawa SSTの特徴だと思っています」

新型コロナウイルスの感染拡大という誰も予測できなかった脅威を経験して、世界中の人々がライフスタイルや働き方の見直しを迫られた。

今後も未来を完璧に予測することは誰にもできない。

大切なのは、変化に対応する力を培っておくこと。

「街に求められる機能は住民の構成によっても変わりますし、社会環境の変化や政策の影響も受けると思います。ですから、変化に柔軟に対応できるように街のレジリエンスを高めることが重要で、その土壌となるのが当事者である住民の方や事業者の意識です。われわれとしては引き続きコミュニティの醸成に力を入れていきたいですし、それができれば自然と100年続く街になる予感がしています。技術力で勝負してきたパナソニックらしからぬ発言ですが(笑)」

1000世帯もの家族の営みが続くリアルなスマートタウンとして、技術先行ではなく住民の暮らし起点でまちづくりを進めてきたFujisawa SST。

目標を共有した住民たちが、より良い暮らしをつくるためのアイデアを出し、互いに支え合う。

『生きるエネルギー』が生まれる街として、今後つくられるスマートシティの指標になっていきそうだ。

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