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自転車に新たなジャンル誕生! 欧州発祥の新型電動アシスト自転車「e-BIKE」とは

専用ドライブユニットによる力強い走り! 悪路走行もOKで日常使いからレジャー利用までこなす万能性

欧州を発祥とする新しいタイプの電動アシスト自転車「e-BIKE」が、自転車ファンの間で注目を集めている。一般的な電動アシスト自転車と比べて動力性能に優れ、さらにバッテリーの持ちも長いことから、最近のコロナ禍を受けて自転車通勤に使われるケースも増えているという。そんなe-BIKEの魅力と今後の可能性について、2020年、株式会社ミヤタサイクルから社名を変更したメリダジャパン株式会社のe-BIKE担当者に話を聞いた。
TOP画像提供:メリダジャパン株式会社

従来の電動アシスト自転車とは別ジャンルとして登場したe-BIKE

クルマやバイクの電動化が進む中、自転車にも電動化という新たな波が訪れている。

コロナ禍において、3密を避けながら移動やレジャーが楽しめるとあって自転車の存在が見直される中、近年e-BIKEと呼ばれる新ジャンルが注目を集めている。

一般的にe-BIKEと呼ばれるものは、従来の電動アシスト自転車とは異なるスポーツライドに特化した性能を持つバイクを指す。

アルミやカーボンファイバー製のスポーツバイクフレームに、高性能センサーによってペダリングと一体化したようなナチュラルなアシストが得られる専用ドライブユニット(アシストを行うモーターと、それを制御するROMやバッテリーなどの総称)を搭載。トルク、パワーの出方が異なるのはもちろん、小型で軽量という特性も相まって、一般的な電動アシスト自転車では困難だった長距離や急な坂道が、より快適になった。

トルクやパワーがあるe-BIKEであれば、急な上り坂でも容易に上っていくことができる

画像提供:メリダジャパン株式会社

また、アシスト距離についても従来の電動アシスト自転車は40~50kmでバッテリーが切れていたのに対して、e-BIKEの多くが航続距離100km超を実現。エネルギー効率がよく、特にレジャー利用において、その恩恵は絶大といえる。

国内でe-BIKEの先鞭(せんべん)をつけたのは、電動アシスト自転車のパイオニアであるヤマハ発動機株式会社。続いて、同じく自社でドライブユニットを開発するパナソニック サイクルテック株式会社が展開していた。

しかし、市場として確立されたのは、日本の株式会社シマノをはじめ、ドイツのボッシュや中国のバーファンといったドライブユニット専門メーカーが、国内レギュレーションに合致したe-BIKEドライブユニットをリリースした2018年のこと。

ここから国内外のスポーツ自転車メーカーによるe-BIKE開発が激化する。その中で最も積極的な姿勢を見せているのが、昨年、株式会社ミヤタサイクルから社名を変えたメリダジャパン株式会社だ。

同社では日本人プロロードレーサーの第一人者・新城幸也選手(バーレーン・マクラーレン所属)が使用するバイクブランドとして人気がある台湾の自転車メーカー「MERIDA(メリダ)」と、国産老舗ブランド「MIYATA」を合わせて、現在14車種のe-BIKEをリリースしている。

ドライブユニット専門メーカーの登場によりラインアップが拡大

「2010年にボッシュが専用ユニットを開発してから、e-BIKEは欧州のマーケットでどんどん普及していきました。メリダも2013年にシマノが参入したタイミングで、欧州において展開をスタート。その後、シマノが日本でも展開を開始したことから、われわれ(2010年にミヤタサイクルがMERIDAと資本提携)もやろうという流れになりました。そして、まさに今、やるならe-BIKEの国内トップブランドを目指そうと注力しています」

メリダジャパン ブランドマネジメント部プロダクトマネジメントグループの原藤豊グループ長は、e-BIKEに取り組み始めた経緯についてこう語る。

e-BIKEのマーケットや製品ごとの特性、さらに今後の可能性を語る原藤氏

欧州においてe-BIKEという新ジャンルが盛り上がっていることは早い段階から日本にも伝わっていた。ところが、電動アシスト自転車のレギュレーションが欧州各国よりも厳しい上、自転車に対する価値観や文化の違いなどもあり、国内での普及は難しいのではという向きもあった。

だが、国内で長くスポーツバイクを展開してきた老舗メーカーの読みは鋭かった。

「欧州で脚光を浴びている状況は、われわれだけでなく、国内の自転車ユーザーや愛好家にも伝わっていたと思います。彼らにとって大きな魅力の一つが、家族や友人同士でグループライドを楽しむ際に、e-BIKEが体力の差を埋めてくれることです。このニーズは国内にもあると思いました。また、欧州で特に人気が高いMTB(マウンテンバイク)にドライブユニットを搭載した『e-MTB』が登場したことで、国内でもここ数年、MTBのレジャー人気がさらに高まりました。MTBは最もe-BIKEの恩恵が受けられるジャンルなので、ここにもニーズがあると考えたわけですね。電動アシストは、誰の目にも分かりやすい付加価値になり得るのです」

健康に良い、交通渋滞を起こさない、災害時の活用が期待できる、交通死亡事故が減少するといった自転車のメリットを最大活用、推進するため2017年に施行された自転車活用推進法により、多くの地域が取り組んでいるのが、スキー場のグリーンシーズンを活用するなどしたMTBフィールド拡大だ。

モーターアシストにより上りが楽になれば、ビギナーや体力に不安がある女性、さらにはシニア層であってもMTBの楽しさを味わうことができる。

e-BIKEの魅力が最大限に生かせるe-MTBの開発に注力

こうして推進法施行後の2018年、多くのメーカーがe-BIKEの国内リリースに名乗りを上げた。

しかし、当時シマノの国内仕様ドライブユニットは「STEPS E8080」という1種類のみ。完成車メーカー(フレームを製造しパーツを組み合わせ、構成する、一般的に自転車メーカーと呼ばれる企業)がこれに手を加えることはない。

つまり、このドライブユニットが持つ特性をどのように生かすかが、開発競争の焦点であった。

シマノが国内仕様として最初に市場投入したe-BIKEドライブユニット「STEPS E8080」。現在は「SHIMANO STEPS」としてシリーズ化され、この他に基本性能を継承しつつ、高いコストパフォーマンスを実現した「STEPS E6180」「STEPS E5080」の計3タイプがラインアップされている

画像提供:メリダジャパン株式会社

「e-BIKEの歴史が浅い国内では、走行性能に加えて最終的にどの価格帯に収まるのかということも戦略上重要になります。最初にシマノがリリースした『STEPS E8080』は、2020年現在の3機種の中で最も高性能なドライブユニットです。しかし、われわれが最初に出したミヤタ『クルーズ』はクロスバイクタイプで日常使いがコンセプト。ですので、どちらかというとパフォーマンスよりも価格を意識した作りになっています。

そして、次に出したミヤタ『リッジランナー』は本格的なe-MTBということで、従来MTBの持つ乗り味を崩さないよう、ジオメトリー(形状)をはじめ、さまざまな部分で工夫を施しています。特に、モーターとバッテリーが追加されるので、重量バランスやフレーム、各パーツの剛性など、既存の自転車から大きく見直さなければなりませんでした」

2018年登場のミヤタ「クルーズ」は、シティライドからロングライドまで楽しめる万能e-BIKE。2021モデルでは「クルーズ6180」「クルーズ5080」の2バージョンが追加された

画像提供:メリダジャパン株式会社

競合メーカーも、街乗りやロングライド向けのe-クロスと本格的e-MTBの2タイプに注力している。中でも特に性能面でのブラッシュアップが進んでいるのがe-MTBだ。

メリダジャパンもその後、リアサスペンションがないハードテイルタイプの「eBIG.NINE」と、前後にサスペンションを備えるフルサスペンションタイプである「eONE.SIXTY」の2シリーズを展開。いずれもバッテリーはフレームのダウンチューブ内の搭載へと進化し、見た目にもスポーティーな仕上がりとなっている。

バッテリーはフレームに内蔵されている

画像提供:メリダジャパン株式会社

さらに「eONE.SIXTY」は、2019年登場の「eONE-SIXTY 9000」においてカーボンフレームを採用し、抜群の安定性&低重心設計を実現。また、シマノのコンポーネント「Deore XT」とFOX製サスペンションも搭載された豪華なパーツ構成で究極の性能を持つe-BIKEとなった。

メリダブランドのe-MTBフラッグシップモデル「eONE-SIXTY 10K」は、カーボンメインフレームにインチューブバッテリーを内蔵。パワフルでコンパクトなシマノ「STEPS E8080」を搭載し、リアサスペンションの可動域160mmを生かし切るリアスイングアーム構造を実現

画像提供:メリダジャパン株式会社

そして、2020年夏に発表された2021年モデル「eONE-SIXTY 10K」では、大容量630Whインチューブバッテリーやシマノの最高峰MTBギアコンポ「XTR」、DT Swiss HXC1250カーボンホイールといったグレードアップパーツを搭載。価格は110万円(税別)というハイエンドモデルが登場した。

コロナ禍で増加する自転車通勤者もe-BIKEに注目

「クルマ好きの人がいつかフェラーリやポルシェに乗りたいと考えることと同様に、自転車ユーザーにも憧れの存在があることはe-BIKEというジャンルが定着する上で大切です。もちろんメーカーとしても、ブランド力を高めるためにフラッグシップモデルの存在は重要だと考えています」

ミヤタe-BIKEの第2弾はハードテイルMTBタイプの「リッジランナー」。2021モデルではシマノ「STEPS E6180」搭載を前提に設計された専用フレームのニューバージョンも登場した

画像提供:メリダジャパン株式会社

コロナ禍で増加傾向にある自転車通勤者にも、アシスト距離が長く、走りがより快適なe-BIKEは注目されているようだ。

「販売台数はe-BIKEリリース初年度から段階的に伸びており、普及は着実に進んでいると思います。弊社の最初のモデルである『クルーズ』は今、通勤用として日常的に使われており、当初の狙いどおりです。一般的な認知度はまだまだといったところですが、それはイコール、伸び代がまだあるということ。ことしもさらに躍進するものと予想しています。今後は国内に多いロードバイクユーザーにアプローチできる車種など、新たなe-BIKEにも着手していきたいですね」

メリダジャパンが2018年、静岡県伊豆の国市にオープンした世界最大級の展示・試乗施設「MERIDA X BASE(メリダ・エックスベース)」。国内で取り扱う全車種約200台の試乗が可能

画像提供:メリダジャパン株式会社

メリダジャパンがより多機種のe-BIKEを展開して販売台数を伸ばしている理由に、自社で運営する静岡県伊豆の国市の世界最大級サイクリング施設「MERIDA X BASE」の存在がある。

「乗ってみなければ価値が分かりにくいと言われるe-BIKEを、実際により多くのスポーツバイクファンに体感してもらえることが何より大きいですね」(原藤氏)

加えて、今はコロナ禍により純粋なニーズとして、その存在を知らなかった人もe-BIKEへとたどり着いている。

新たなモビリティー、新ジャンルの電動アシスト自転車として、e-BIKEは着実にそのポジションを得ようとしている。

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