空想未来研究所2.0

クレーターのサイズで比較! アキラ、鉄雄、人類で一番すごいエネルギーを放ったのは?

『AKIRA』の超エネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「クレーター」。物語の舞台が“まさに今”である超名作SFマンガ『AKIRA』(1982~1990年)で、主要キャラクターたちが放つ超膨大なエネルギーがどれほどだったのか、考えてみました。

まるで予言!? 奇跡の作品『AKIRA』

『AKIRA』は、とてつもないマンガだった。

1982年12月6日午後2時17分、関東地区に新型爆弾が投下される。それから9時間後、3度目の世界大戦が勃発した。それから38年後、東京湾にネオ東京が建設され、見事な復興が遂げられていた。

こうした世界で、暴走族のリーダー・金田は、親友を殺した鉄雄をつけ狙う。鉄雄はかつて仲間だっただけに、金田の怒りは大きい。そうするうちに、暴走族、反政府ゲリラ、軍、新興宗教団体、超能力者集団「ナンバーズ」が入り乱れる抗争の渦に巻き込まれていく。

物語の焦点は、ナンバーズ。彼らは手も触れずに人を死なせ、建物を破壊し、他人の脳に語りかけ、瞬間移動する。そして、恐るべき事実が明かされた。1982年の大爆発は、ナンバーズ28号の「アキラ」という少年が起こしたものだったのだ!

冷凍睡眠から目覚めたアキラを巡って、各勢力間の抗争は激化する。その中で、ナンバーズの超能力は、宇宙の時間とエネルギーの流れから生まれていたことが明らかになる……。

『AKIRA』の物語は、スケールの壮大さに驚くばかりだが、もう一つ驚くべきことがある。1982年の38年後といえば2020年。今年なのだ! そして、『AKIRA』のネオ東京でも、2020年に東京五輪が開かれる!

『AKIRA』の連載開始は1982年。現実世界で東京五輪の開催が決定したのは2013年だから、奇跡的な一致である。これもナンバーズの力なのか……。

非科学的な妄想をしている場合ではない。五輪イヤー最初の『EMIRA』で、『AKIRA』を取り上げずしてなんとする。

主眼はもちろん、作品中で解き放たれた莫大なエネルギーである。

巨大クレーターを作ったアキラのエネルギー

38年の星霜を経て、ネオ東京は大都会となっていた。かつての東京は「旧市街」と呼ばれ、五輪大会のメインスタジアムもここに建設されている。その一方で、爆心に形成されたクレーターは、いまだに放置されていた。

だが、おかげでクレーターのサイズが測定できる。そこから、1982年にアキラが起こした爆発のエネルギーが求められる。

マンガのコマで測ると、クレーターの直径は、金田たちがバイクで走っていた高速道路の幅の37.5倍に及ぶ。その高速道路は、片側2車線で路肩はない。現在の首都高速道路と同じく、1車線の幅員が3.5m、中央分離帯の幅が1.75mとすると、道路全体の幅は

3.5m×2+1.75m+3.5m×2=15.75m

となる。

その37.5倍ということは、クレーターの直径は591m。国会議事堂、衆・参議員会館、首相官邸、内閣府の敷地がスッポリ入るという巨大さだ。

これを形成するエネルギーとは、どれほどのものか。

『いつ起こる小惑星大衝突』(地球衝突小惑星研究会/講談社ブルーバックス)に、小惑星の衝突のエネルギーから、発生するクレーターの直径を求める式が載っている。そこから逆に、クレーターの直径[m]からエネルギー[J(ジュール)]を求める式を作ると、こうなる。

エネルギー=1.006×107×直径3.05

これに直径=591mを代入すると、エネルギー=2.83×1016J。爆薬に換算して676万t分である。そんな爆発を東京で……!

2.83×1016Jとは、日本最強の富津火力発電所がフルパワー(516万kW)で稼働しても、作るのに64日かかるエネルギー。平和利用すれば、喜ばれただろうなあ。

鉄雄の超エネルギー! 比較できるのは人類の歴史!?

物語では、さらに大きなエネルギーが放たれた。

鉄雄がナンバーズ41号となり、己の力を見せつけるために、あろうことか月までジャンプして、巨大なクレーターを作って見せたのだ!

マンガのコマで測ると、発生したクレーターの直径は月の直径の45%ほどもある。

月の直径は3470kmで、その45%とは1560km。本州から九州までがスッポリ入る! そのサイズは、アキラが作ったクレーターの2650倍にも及ぶ。

前出の式にあるように、エネルギーはクレーター直径のほぼ3乗に比例するから、直径が2650倍となると、エネルギーはとてつもないものになる。計算すると7.71×1026J。富津発電所720億年分! 

というより、全世界で消費されているエネルギー(4.5×1020J)の171万年分! 

新興宗教団体「ミヤコ教」の教祖・ミヤコ様は「ナンバーズはこれまでに人類が消費してきたエネルギーさえ、一瞬にして費やせる」と言っていた。人類が消費してきたエネルギーは、大半がここ250年(産業革命以降)のものだから、その言葉に偽りナシ!

だが、鉄雄はその前後にもスゴイことをしている。そう、月へ行き、帰ってきた。マンガの描写から、帰りこそ1分ぐらいかかったように見えるが、行きはおそらく10秒ほど!

地球から月までは38万4400kmと言われるが、これは中心間の距離であり、地表から月面までは、これから地球の半径6380kmと、月の半径1740kmを引いた37万6280kmになる。

これを10秒で飛行する速度とは、秒速3万7628km=マッハ11万700=光速の12.55%!

鉄雄の体重を70kgとすると、この速度に達するためのエネルギーは5.01×1016J。アキラが1982年にクレーターを作ったエネルギーは2.83×1016Jだから、その1.8倍!

現場へ行くだけで、物語の始まりとなった大事件を超えた。恐るべし、ナンバーズ41号!

生身の人間も負けていない

『AKIRA』では、ナンバーズ以外の人間も莫大なエネルギーを放っている。

それは軍が保有する衛星兵器SOL(ソル)。軍事衛星に搭載されたレーザー砲で、地上の標的をピンポイントで狙える。

第1射は1982年のクレーターの外輪山の一部を吹き飛ばし、第2射は地面を大きく破壊して、無数の巨大な岩を舞い上がらせた。おそらく、発生した熱で空気が急膨張し、爆風が起きたものと思われる。とてつもない威力である。

しかも、ビームの直径がデカい。第1射のコマで測定すると、ビームの直径はクレーターの直径の37.5分の1もある。

皆さん、覚えていらっしゃいますか、この「37.5」という数字を。

そう、クレーターの直径は高速道路の幅の37.5倍。これまた奇跡の一致! もはやソラ恐ろしくすらあるけれど、この超破壊ビームは、片側2車線、両側4車線の高速道路の幅と同じ直径があるのだ。すなわち、15.75m!

レーザーの性能の一つに、「パワー密度(面積当たりのパワー)」がある。金属などを切断する加工用レーザーの場合、100億[W/cm2]のオーダー。

もし、SOLのパワー密度もこれと同じだとすると、パワーはビームの断面積=195m2=195万cm2をかけて、1.95×1016W。現在、日本全国で発電されている電力の20万倍に迫るという、とてつもないものになる。

[W]×[秒]=[J]の関係から、1秒発射したときのエネルギーは1.95×1016J。1982年にアキラが放ったエネルギーの70%であり、直径523mのクレーターができても不思議はなかった!

超能力者たちが宇宙の時間とエネルギーの流れから莫大なエネルギーを放てば、人間も科学の力でそれに比肩するエネルギーを放つ。戦いは果てしなくエスカレートしていくが、それでも、仲間と生きて再会すれば涙して喜び、帰らぬ友に思いをはせる主人公たちの姿は、やはりエネルギーは平和のために使うべきとあらためて確信させてくれる。人間の想像力は、本当に素晴らしい。

※原稿では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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