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オールマイトのパンチ1発は6730億Jのエネルギー! ヒロアカ発電力ランキング

『僕のヒーローアカデミア』で描かれたエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「発電力」。“個性”と呼ばれる超能力を駆使して戦う学生ヒーローたちの成長と葛藤を描いたマンガ『僕のヒーローアカデミア』(2014年~)。主人公をはじめとした彼らの“個性”によるエネルギーを使ったら、どれくらい発電できるのか考えてみました。

再生可能エネルギーと“個性”の共通点

資源エネルギー庁の資料によれば、2018年の日本の発電電力量のうち、16.9%を再生可能エネルギーが占めている。

その内訳は、水力7.7%、太陽光6.0%、バイオマス2.3%、風力0.7%、地熱0.2%。今更ながら、CO2(二酸化炭素)を出さず、エネルギー源を無限に得られる点で、水力も再生可能エネルギーであったと気付く。このほかに潮汐力や波力などもあるから、再生可能エネルギーとはなんとバラエティー豊かなことか。多様ということは、未来への可能性を秘めるだけでなく、不測の事態にも柔軟に対応できるわけで、素晴らしいことである。

エネルギーの多様性という意味で同じように感じるのが、『僕のヒーローアカデミア』だ。

このマンガでは超能力が“個性”と呼ばれ、世界人口の8割が何らかの“個性”を持っている。それを悪用する“敵”(ヴィラン)が多数はびこる一方で、“個性”を生かして彼らと戦うヒーローもいる。

そんな世界にあって、“無個性”だがヒーローに憧れていた主人公の緑谷出久(みどりやいずく)は、No.1ヒーローのオールマイトから素質を見抜かれ、“個性”「ワン・フォー・オール(身体能力強化)」を受け継ぐ。こうして出久はヒーローを養成する雄英高校への入学を果たすのだ。

出久が所属する1年A組は、すごい“個性”の持ち主ばかりだった。高速で走る、触れたものを無重力にする、体が透明になる、体から強酸を出す、ベルトからレーザーを出す、目や耳や腕を複製する、カエルにできることは大抵できる……まさに個性あふれる“個性”たちだ。

ここで取り上げたいのは、エネルギー関係の“個性”を持つ5人だ(五十音順)。

上鳴電気(かみなりでんき)…“個性”帯電/体に電気を蓄え、電撃を放つ
轟 焦凍(とどろきしょうと)…“個性”半冷半燃/右手で凍らせ、左手で燃やす
爆豪勝己(ばくごうかつき)…“個性”爆破/手から「ニトロのような汗」を出す
緑谷出久…“個性”ワン・フォー・オール/自らも傷ついてしまうほどに身体能力を向上させる
八百万 百(やおよろずもも)…“個性”創造/体脂肪からあらゆるものを作り出す

八百万 百は一見、エネルギーと関係なさそうだが、物質が変化すると、必ずエネルギーが出入りする。これほど多様性豊かだと、考えてみたくなる。彼ら彼女らがそのエネルギーで発電を行ったとき、どれほどの電気が作れるのか?

例によって、5位からのカウントダウン方式で紹介しましょー。

No.1ヒーローが放つ“ワンパン”のエネルギーは?

まず、マンガの冒頭でオールマイトが放ったエネルギーを見てみよう。作品の世界観をハッキリ表したシーンであり、彼は先ほどの5人の先生でもあるからだ。

全身アメーバ状の“敵”が出現し、爆豪を包み込む。当時まだ“無個性”だった出久は、考えるより先に体が動き、助けに走る。そこへオールマイトが現れ、出久と爆豪を引き寄せて、地面にパンチをぶち込む。その風圧で“敵”はバラバラに飛び散り、直後、突風が吹き、雨が降ってきた。

出久は「まさか今の風圧で……!? 上昇気流が…」と分析し、群衆は「右手一本で天気が変わっちまった!!!!」「すげえええええ これが……オールマイト!!!」と驚いた。パンチで上昇気流が発生し、雨が降る。そんなことが起こり得るのだろうか。

夏の夕立も、地面が太陽の熱で温められ、上昇気流が発生することで起きる。上昇気流に含まれる水蒸気が、上空で冷やされて雲となり、雨を降らせるのだ。

また、金づちで釘を打つと金づちも釘も熱くなるように、打撃は熱を発生させる。つまり、パンチが猛烈に強烈なら、莫大な熱が発生して雨が降ることもあり得るわけだ。実際に1945年3月10日の東京大空襲直後にも激しい降雨があった。

すると、オールマイトのパンチのエネルギーはどれほどか。

現場では多くの人々が見守っていたから、雨の降った領域が半径100mだったとしよう。これだけの面積に、真夏の太陽(1m2あたり850W)が7時間(午前10時~午後5時)照りつけたのと同じ熱が与えられたとすると、そのエネルギーは6730億J(ジュール)である。

これで発電した場合、どれほどの電力量が得られるのか。話を複雑化させないために、発電効率100%で考えよう。

1Jとは、1Wの電力を1秒間使ったときの消費エネルギーで、1kW時とは、1kWの電力を1時間使ったときのエネルギー。つまり、こうなる。

【 1[kW時]=1000[W]×3600[秒]=360万[J] 】

ここから6730億J=1万8700kW時。これは契約アンペア数40A(最大消費電力4kW)の世帯が、4673時間=195日間ぶっ通しで最大電力を使える電力量。それだけのエネルギーを、オールマイトはパンチ1発で放ったのだ!

この偉大な師を、5人の若者は超えられるのだろうか。

1kW時はけっこう大きなエネルギー

それでは、いよいよカウントダウンに入ろう。

★第5位:上鳴電気

雄英高校が“敵”の集団に襲われたとき、上鳴は電撃を放って、自分を包囲した数人の“敵”を同時に倒した。電撃が放たれた距離は10mほどで、空中放電には距離1mあたり50万Vの電圧が必要だから、彼は500万Vに帯電していたことになる。詳細は省くが、このとき上鳴の体には0.000278C(クーロン)の電荷がたまっていたはずだ。

電荷とは電気の量のことで、1Aの電流を1秒流したときに移動する電荷が1C。流れる電気で1Cというと大した量ではないが、帯電で1Cとはかなりの量である。雷雲でさえ、20Cほどなのだ。

帯電した電荷を放電するとき、エネルギーは次の式で求められる。

【 エネルギー[J]=1/2×電荷[C]×電圧[V] 】

ここから計算すると、上鳴が放ったエネルギーは695J。結構なエネルギーに見えるが、[kW時]に直すと0.000193kW時。20Wの電気スタンドが35秒しかつけられない! [kW時]というのがいかに大きな単位かよく分かる。

★4位:爆豪勝己

これは、『ヒロアカ』ファンには意外かもしれない。

手のひらから「ニトロのような汗」を出し、爆発させる彼は、屋内対人戦闘訓練で大爆発を起こし、自分のいたビルの壁を破壊した上に、爆風で隣のビルの5階までを破壊した。

両方のビルの破壊を同時に解析するのは難しいので、隣のビルの破壊だけで考えよう。その破壊力があれば、ついでに自分のいたビルも破壊できるだろう。

コンクリートの壁を破壊する爆風の圧力は1気圧といわれる。意外に低いと思われるかもしれないが、1気圧とは1㎡あたり10tの圧力だ。隣のビルの5階となると、直線距離で20mほどだろう。この距離に1気圧の圧力を及ばす爆発とは、2690万J。これだけのエネルギーを放つニトログリセリンとは、4.23kgである。モノスゴク汗っかきな少年だ!

しかし、これも7.47kW時。契約アンペア数40Aの一般家庭が、最大電力だと1時間52分しか過ごせない。オールマイトには程遠いなあ。

ついにオールマイトを超えた!

★3位:緑谷出久

全身の身体能力を強化する“個性”ワン・フォー・オールを受け継いだ出久だが、最も大きく強化されたと思われるのは、意外や意外、涙腺である。

体育祭の騎馬戦で、最終種目に進める4位にギリギリ滑り込んだ出久は、喜びのあまり天を仰いで号泣し、涙を噴水のように噴き上げて、コンクリート製の床に膝まで潜り込んだ!

コンクリートは1cm2あたり500kgの力に耐える。身長166cmの出久の靴のサイズは26cmほどだろう。自分の靴と比較すると、靴底の面積は220cm2になる。すると、足にかかった力は、片足に110t、両足で220t!

この力は、涙を噴き上げる反作用で生まれたと見られる。涙の噴流の断面が、直径2cmの円だったとすると、毎秒1650Lの涙を秒速1310m、マッハ3.85で噴出したことに! 水流もマッハ1.6を超えるとコンクリートが切れるから、“敵”との戦いでも、盛大に泣いてもらいたい。

泣いた時間が1秒だとすると、涙に与えたエネルギーは14億1000万J。これは393kW時であり、契約アンペア数40Aの家庭が4日と2時間暮らせる。オールマイトの後ろ姿が少し見えてきた。

★2位:轟 焦凍

炎を操るNo.2ヒーロー・エンデヴァーと、氷を操る母親の間に生まれた彼は、右手であらゆるものを凍らせ、左手からは灼熱の炎を出すことができる。初めてマンガで読んだときは、科学的に感動した!

マンガやアニメには氷雪系のキャラクターがたくさん出てくるが、何かを凍らせるには熱を奪う必要があり、その奪った熱をどうするのかという問題がある。体にため込むと体温が上がり、別の場所に捨てるとそこが灼熱地獄になる。焦凍は右手で凍らせ、左手で熱を放つことによって、この問題を見事に解決しているのである!

では、焦凍が左手から放つ熱エネルギーは、どれほどか。

筆者が知る限り、最大の氷を作ったのは、体育祭での1対1バトルトーナメントだ。1回戦で、焦凍は体育館のドームを突き破るほどの氷を作り、相手を氷漬けにした! その氷は直径10m、高さ50mほどで、推定重量3600tである!

この巨大な氷は、空気中の水蒸気から作ったと見られるが、気温20℃のとき、空気中の水蒸気からマイナス10℃の氷を作るには、次の4段階を踏まねばならない。熱エネルギーなので、ここでは[kcal]で表示する。

①20℃の水蒸気を20℃の水にする=1kgあたり587kcal(気化熱)
②20℃の水を0℃の水にする=1kgあたり20kcal
③0℃の水を0℃の氷にする=1kgあたり80kcal(融解熱)
④0℃の氷をマイナス10℃の氷にする=1kgあたり5kcal

合計692kcal。そして、1kcal=4184Jなので、692kcal=290万J。忘れてならないのは、これが氷1kgを作るのに奪う熱であること。3600tとなると、10兆4000億J。おお、ついにオールマイト(6730億J)を超えた!

焦凍が右手で氷を作った際に左手から出す熱で発電すれば、290万kW時の電力量が生み出せる。契約アンペア数40Aの家庭なら、82年7カ月暮らせる!

体脂肪から鉄を作るという偉業

すると当然、

★1位:八百万 百

となる。この人は、どれほどすごいのか。

彼女は、自らの体脂肪から、生物以外なら何でも作り出せる。

電撃から身を守る絶縁シート!
形状記憶合金を織り込んだ捕縛用リボン!
それを撃ち出すカタパルト!
大砲!
ガスマスク!
電波発信機&受信機!

これについて、本人が次のようなことを言っている。「私の“個性”は脂質をさまざまな原子に変換して創造する」。なんと、脂質をさまざまな原子に変換! 確かにそうでないと、カタパルトや大砲など金属製のものは作れないだろう。

だが、そうすると、莫大なエネルギーが出入りするはず。原子の種類が変わる「原子核反応」では、原子の組み合わせが変わる「化学反応」の何百万倍ものエネルギーが出入りするからだ。

例えば、体脂肪の中で最も多いトリパルミチン1kgを鉄に作り変えると、997.9gになる。そして、アインシュタインの特殊相対性理論によれば、減った分の質量がエネルギーに変わるのだ。その関係は、次の式で表される。

【 エネルギー[J]=減った質量[kg]×光速[m/秒]2 】

光速は秒速3億mで、上記の反応では2.1g減少しているから、こうなる。

【 エネルギー=0.0021[kg]×3億[m/秒]2=189兆[J] 】

しかもこれは、1kgの脂肪からほぼ1kgの鉄を作ることで発生するエネルギー。中でも大砲は、砲身の直径が50cm、肉厚が10cm、長さが1m50cmもある。

鉄製なら重量は1.5tであり、台座も同じとすれは計3t。放出されるエネルギーは56京7000兆J=1580億kW時。日本最大級の発電能力を持つ富津火力発電所(516万kW)が3年半かけて生み出す電力量であり、2018年の日本の発電電力量(1兆1706億kW時)の13.5%! 開いた口がふさがりません。

※オールマイトも含めたランキングです

さまざまな形で、大小さまざまなエネルギーを生み出す個性たち。その量は比較できるが、個性に優劣はつけられない。小さなエネルギーしか生み出せない個性が、他人には代われない役割を果たすこともあるからだ。みんなが自分の個性を生かして、邪悪なものを跳ねのける。人間の想像力は本当に素晴らしい!

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