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空想未来研究所2.0

ポケモンのエネルギー、2位はライコウ、1位は…?/ポケットモンスター

『ポケットモンスター』で描かれたエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「ポケモン」。今年4月に主人公を一新した新シリーズアニメも始まったゲーム『ポケットモンスター』シリーズから、すさまじいエネルギーを放つポケモンをランキング形式で紹介します。

ポケモンたちのエネルギー

ポケモンのゲームソフト第1作『ポケットモンスター 赤・緑』が発売されたのは1996年2月27日。筆者の第1作『空想科学読本』が店頭に並んだ翌日である。それだけに勝手な親近感を抱いていて、これまでに研究してきたポケモンは100体以上。『ポケモン空想科学読本』全4巻も書かせていただいた。

そうした中で驚くのは、ポケモンたちの中には、すさまじいエネルギーを放つものがいることだ。新しいゲームの発売とともに公表される『ポケモンずかん』には、次のような記述がめじろ押しである。

<バンギラス 高さ2.0m 重さ202.0kg よろいポケモン「バンギラスが 暴れると 山が 崩れ 川が 埋まるため 地図を 書き換える ことになる」>

<ルギア 高さ5.2m 重さ216.0kg せんすいポケモン「深い 海溝の 底で 眠る。ルギアが 羽ばたくと 40日 あらしが 続くと 言われている」>

<ゲンシグラードン 高さ5.0m 重さ999.7kg たいりくポケモン「大地を 盛り上げて 大陸を 広げた ポケモンと 神話で 語り 継がれる。カイオーガと 死闘の 末 眠りに ついた」>

身長数mの生物が、山を崩したり、40日も続く嵐を起こしたり、大陸を広げたり! 具体的にどうやったのかは分からず、中でもルギアやゲンシグラードンについては、計算の方法も分からないが、とてつもないエネルギーが放たれたのは間違いない。

そこで今回は、ポケモン図鑑の記述から、筆者に可能な範囲で、ポケモンたちが放ったエネルギーを求めてみよう。

ここで選んだのは、5体のポケモンたち。彼らに関する記述を読むと、エネルギーそのもの(単位はJ)よりも、「1秒当たりのエネルギー」すなわち出力(科学では仕事率、英語ではパワー。単位はkW)で比べた方がよさそうである。

さあ、始めよう。ポケモンのエネルギーのランキング発表を!

大地を掘り進むイワーク

第5位は「イワーク」。

高さ8.8m、重さ210.0kg。この「いわへびポケモン」について、ポケモン図鑑はこう語る。

「普段は 土の中に 住んでいる。地中を 時速80キロで 掘りながら エサを探す」

地中を時速80kmで掘り進む!? トンネル建設で使われるシールドマシンさえ、時速3m(kmではない)なのに、その2万6700倍! もちろん、シールドマシンは単に掘るだけでなくトンネルの内壁なども造りながら進んでいくのだが、現実世界の土の王者・モグラでさえ時速18mだから、その4440倍である。

これにはいったい、どれほどの出力が必要なのか。

地中を掘り進むには、岩石を破壊し続けなければならない。イワークは蛇のような形をしていて、全長の8.8mと比べると、体の直径は1mほどだ。しかし、頭部にはその直径にほぼ等しいトサカが付いている。これも通すには、直径2mは必要だろう。

時速80kmとは秒速22.2mなので、1秒間に破壊する岩石の体積は、半径×半径×円周率×長さで69.8㎥。岩石の密度は平均2.7[t/㎥]なので、1秒間に188tの岩を破壊することになる。岩石を破壊するには、1t当たり10万Jのエネルギーが必要だから、毎秒毎秒1880万Jを出し続けることになる。それはすなわち1880万W=1万8800kWだ。

乗用車の最高出力(強いもので440kW)の43倍! 体重は5分の1ほどなのに! これで5位!

隕石を食べるレックウザ

4位は「レックウザ」。

高さ7.0m、重さ206.5kgの「てんくうポケモン」で、図鑑にはこう記されている。

「オゾン層を 飛び続け エサとなる 隕石を くらう。体内に たまった 隕石の エネルギーで メガシンカする」

隕石を食らうとはモノスゴイ!

隕石の速度は、秒速10~40km。最も速い秒速40kmとはマッハ118である。レックウザの口に入る隕石となると、最大でも直径50cmほどだろう。計算すると、その重さは200kg前後になる。

これはレックウザの体重とほぼ同じ。すると、レックウザも同じ速度で迎え撃たないと、口にパクッと入れた瞬間、後ろへぶっ飛ばされてしまう。体重206.5kgのレックウザが、秒速40kmで飛ぶエネルギーとは、1/2×体重×速度2=1/2×206.5[kg]×4万[m/秒]2=1650億J!

問題の出力は、食べる対象が隕石であることが効いてくる。隕石は上空100kmぐらいから空気との衝突によって光を放つ。これが流れ星だ。

一方、オゾン層の高さは、地上10~50km。レックウザがその中間の地上30kmにいるとしたら、真上から落ちてきた隕石は、光り始めてから70km進んだところで、レックウザがいる高さに達する。

レックウザが隕石の光に気付くや否や上昇を始めたとすると、秒速40kmで迎え撃つのは1.17秒後。必要な出力は1650億J÷1.17秒=1420億W=1億4200万kW。

全国の発電所の総発電力(およそ1億kW)を上回る! 比較の対象が、乗用車から一気に全国の総発電力に! それでも4位!

山を崩すバンギラス

3位は冒頭でも紹介した「バンギラス」。

高さ2.0m、重さ202.0kgの「よろいポケモン」だ。

「バンギラスが 暴れると 山が 崩れ 川が 埋まるため 地図を 書き換える ことになる」。

問題は、バンギラスが崩すという山の規模だ。これはもう仮定するしかないので、高さが1000m、形が富士山(3776m)と同じだと考えよう。すると、縦も横も高さ3.776分の1になるので、山の重さは3.776の3乗=53.8分の1になる。

富士山は1兆tの岩石で形成されているので、重さはおよそ200億tだ。前述のように、岩石1tを破壊するには10万Jが必要なので、バンギラスが発揮したエネルギーは2000兆J!

出力は、破壊の仕方にもよる。5時間ぐらいかけて、ドカドカパンチを打ち込んだ? いや、そんな地味な作業は、バンギラスには似合わない。全力で突進して、ドバーン!と一撃で崩したのではないか。

体重202kgで2000兆Jのエネルギーを出すための速度とは、秒速4450km=マッハ1万3100! バンギラスが1km離れた所から助走して、この速度に達したとすれば、所要時間は0.000449秒。

出力はエネルギーをこれで割って445兆kW。全世界で消費されるエネルギー(年間石油140億t分)を出力に置き換えた場合の22万倍! これでも3位! 2位と1位はどうなってしまうのか……。

雷の速度を宿すライコウ

2位は「ライコウ」。

高さ1.9m、重さ178.0kgの「いかずちポケモン」だ。

「雷の スピードを 宿した ポケモン。その遠ぼえは 雷が 落ちた ときの ように空気を 震わせ 大地を 揺るがす」

雷のスピードって、どんなの!?

空気は、普段は電気を通さないが、雷雲と地面の間の電圧が限界を超えると、雷雲から地面に向かって、電気が流れる。ただし、一気に地面まで届くのではなく、50mほど流れると、一瞬そこで止まり、少しでも流れやすい方向へ、また50mほど流れる。これを繰り返すから、稲妻はジグザグになったり、枝分かれしたりする。

上のようにして電気の通り道ができると、雷雲と地面の間の空気は、電気が流れやすい状態になる。そのジグザグの道に沿って、一気に大電流が流れるのだ。これが稲妻で、そのスピードは光の速さの3分の1。秒速10万km=マッハ29万4000!

この速度になると、エネルギーは前述のような単純な式では求められず、特殊相対性理論を使う必要がある。体重178kgのライコウの場合、それは97京J。「京」は「兆」の1万倍だ。

その助走距離も1kmとすると、所要時間は10万分の2秒。すると出力は4850京kW。比較の対象は、もはやバンギラスしかなく、その1万900倍!

1位はランターン!

さて、注目の1位は? 高さ1.2m、重さ22.5kgの「ライトポケモン」の「ランターン」である。

つぶらな瞳がキュートで、頭に2つの黄色いボールが付いていて、チョウチンアンコウを思い切りかわいくしたような姿だ。強そうには見えないが、このボールが放つ光は半端ではない。

「ランターンの だす 光は 5000メートルの 深さからでも 水面に 届くほど 明るい」

なななな、なんと、深海5000mからでも届く光!?

水深200mの海は真っ暗という話を聞いたことはないだろうか。これは太陽の光が海水に吸収されて、100m潜るごとに、100分の1に暗くなるからだ。200m潜ると、100分の1が2回で1万分の1。だから、水深200m以深は「深海」と呼ばれる。

すると、水深5000mからの光は?

100分の1が50回繰り返されて、「100の50乗=10の100乗」分の1に! しかも、ランターンのボールのような点光源からの光は、四方八方に広がるため、距離の2乗に反比例して暗くなる。この二重の減弱を受けてなお、水面から見えるとは、恐るべきことだ。

もし、ランターンの光が、水面から6等星(肉眼で見える最も暗い星)と同じ明るさで見えるとしたら、その出力は3.44×10の95乗kW。

無量大数でさえ10の68乗だから、ランターンの光の出力を表現できる言葉は、日本語にはありません! 太陽ですら3.83×10の23乗kWなのに! 全宇宙の星の光を合わせても、4×10の45乗kWなのに! 

こんな光を出したら、地球が一瞬で蒸発するどころか、1秒光っただけで、そのエネルギーは、宇宙の始まりであるビッグバンを26桁ほど上回る。つまり現在の宇宙は消え去って、新しい宇宙が100000000000000000000000000(1026)個生まれる!

27年間にわたって、多くの子どもや大人たちを楽しませてきたキャラたち。こんなに長く愛されるのは、制作者たちがあらん限りの想像力を注ぎ込んできたからだろう。それがたとえ、宇宙を滅ぼすことになろうとも、全力で拍手を送りたい。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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