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空想未来研究所2.0

大空翼、日向小次郎、若島津健。記憶に残るあの技の威力は?/キャプテン翼

『キャプテン翼』で描かれたエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるのは『キャプテン翼』。いよいよ来月に迫った「FIFAワールドカップ2026」の開幕を前に、主人公の大空翼とライバルたちが繰り出す超絶プレーをエネルギーの観点から考察しました。

ワールドカップが近づくたびに思う。日本代表に、翼くんたちがいてくれたらなあ!

『キャプテン翼』の連載開始は1981年。Jリーグ開幕の12年前、日本代表のワールドカップ初出場の17年前。2つのエポックは、この名作が生み出したと言っていいだろう。

マンガに登場した選手たちは、本当にすごかった。
天才的な個人技と、不屈の精神力で、チームを勝利に導く大空翼。
猛虎の異名のままに、敵陣を一直線に突破する日向小次郎。
ペナルティーエリア外からのシュートは、必ず止める若林源三。
逆を突かれても、空手の技でセーブする若島津健。
驚異の空中サッカーを展開する双子の兄弟、立花政夫&和夫。
とても全ては紹介し切れない。

そして、翼くんには岬太郎が、小次郎には沢田タケシがいる。どのチームにも、「キミがそこにいたか!」と歓声を上げたくなるバイプレーヤーがいる。サッカーが、チームスポーツであることを教えてくれたのも『キャプテン翼』だった。

このキラ星のような選手たちの中から、3人を研究しよう。
誰もが応援してきた翼くん。その最大のライバル・日向小次郎。翼くんのシュートを何度も止めた若島津健。さあ、試合開始のフエが鳴る!

ボールだけじゃなく、「空気」も友達!?

翼くんの数あるプレーの中で、筆者が驚いたのは「ゴールネット破り」だった。

第6回全日本少年サッカー大会の決勝戦で見せたプレーで、このとき翼くん、小学6年生! これについては『空想未来研究所2.0』でも2018年に研究した。また、静岡のテレビ番組でネットメーカーの協力を仰いで実現した大々的な実験の結果から、浮かび上がってきたボールのスピードは、時速5900km=マッハ4.8であった!

【2018年6月掲載記事】
大ケガ覚悟!ボルト超えのスピードで対峙すれば翼くんのシュートは止められる 「キャプテン翼」で描かれたネット破りシュートについて考察してみた

だが、マンガをよく読むと、翼くんは、それ以前にも驚異のキック力を見せている。 翼くんが南葛小に転校してきたばかりの頃。修哲小の若林くんの見事なセービングに魅せられて、「挑戦状」を送る。ボールにフェルトペンで「ちょうせん状 場所 町のサッカー場 大空翼」と書いて、丘の上から若林くんの大邸宅に蹴り込んだのだ。

庭で練習していた若林くんは、飛んでくるボールに気付き、バシッと受け止めて、その場にいた専属コーチとこんなやりとりをする。

若林くん「あの丘からとんできたんです」
コーチ 「なにィ!? うそをつくな! ここからどれだけあると思っているんだ!?」「源三!おまえのみまちがえだ! ここまでとどくわけがない」。

コーチがそう言うのも無理はない。丘の上から若林くんの邸(やしき)まで、どう見ても500mはある!

サッカーボールを蹴って、こんなに飛ばすとは、大変なことだ。バナナシュートも、ドライブシュートも、無回転シュートも、空気の力を利用している。翼くんは「ボールは友達」と言ったが、サッカーにおいては、空気も友達なのだ。

空気は、ボールの動きを邪魔する「空気抵抗」も生み出す。ここでは、話が複雑化するのを避けるために、ボールの回転、後方に発生する渦、上下方向の空気抵抗は無視して、水平方向に働く空気抵抗だけを考えよう。

水平方向の空気抵抗には、「一定の距離を進むごとに、一定の割合で速度が遅くなる」という法則がある。これは野球についてよく研究されていて、ピッチャーズプレートからホームベースまでの18.44mを飛ぶ間に、スピードが90%に落ちることが分かっている。例えば、時速150kmで投げられたボールは、キャッチャーに届く頃には時速150km×0.9=時速135kmに落ちているのだ。

空気抵抗は、ボールの断面積が大きいほど強くなる。また、質量が大きいほど空気抵抗の影響を受けにくくなる。翼くんが蹴った少年用のサッカーボールは、直径20.5cm、重さ350~390g。重さを中間値の370gで考えよう。野球の硬式ボール(直径7.4cm、重量145g)と比べると、断面積は7.67倍も大きいが、質量は2.55倍でしかない。

この結果、サッカーボールは、野球ボールより7.67÷2.55=3.01倍もスピードが落ちやすい。つまり、わずか18.44÷3.01=6.13m進むごとに、スピードは90%に落ちていくのだ。

こういうボールを500mも飛ばしたということは、蹴ったときのスピードはどれほどだったのか? ものすごい数値が出そうで、もう計算するのも怖いけど……。

蹴った瞬間のスピードはマッハ200超!

このようなケースでは、ゴールからさかのぼって考える。

若林くんは、「バチィ」という音を立ててボールを受け止めた。ここから、受け止めたときの速度を、時速50kmと考えよう。すると、その6.13m手前では、時速50km÷0.9=時速55.6kmだったことになる。以後、6.13m戻るごとに、速度は「÷0.9」=「÷9/10」=「×10/9」を繰り返すことになる。例えば、100m手前では、こうだ。

 「×10/9」の回数=100÷6.13=16.3回
 速度=50[km/h]×(10/9)16.3=50[km/h]×5.58=279[km/h]

あとは同じ計算の繰り返しだ。
200m手前では、279[km/h]×5.58=1557[km/h]=マッハ1.27!
300m手前では、1557[km/h]×5.58=8687[km/h]=マッハ7.10!
400m手前では、8687[km/h]×5.58=4万8470[km/h]=マッハ39.6!

筆者の目測通り、距離が500mあったとすれば、翼くんが蹴った瞬間は?

 4万8470[km/h]×5.58=27万500[km/h]=マッハ221!

地球上でマッハ33以上の速度を持つ物体は、空気抵抗がなければ、地球の重力を振り切って二度と落ちてこない。それでも若林邸に落下したのは、強烈なドライブがかかっていたか、ここまで無視してきた「上下方向の空気抵抗」のおかげだろう。

だがこれを、ゴールネット破りのマッハ4.8と比べるのは、適切とは言えない。ネット破りは、リアルな激闘の中で生まれたプレー。500mキックは、マンガが始まったばかりの牧歌的な空気の中で、サッカーへの夢と、翼くんへの期待を象徴するシーンだからだ。ただ一つ言えるのは、ボールを500m蹴れる翼くんなら、数カ月後にネットを破っても不思議はないということだ。

コンクリートを砕き、2人を飛ばす!

日向小次郎といえば、この技をおいて他にないだろう。そう、タイガーショット!

全国中学生サッカー大会の直前、小次郎は自分の甘さを思い知り、かつて指導を受けた吉良監督のいる沖縄へ向かう。台風の荒波をボールで打ち砕く特訓で、強靭(きょうじん)な足腰と爆発的なキック力を身に付けた。
ところが、東邦学園中の北詰監督は、無断でチームを離れた小次郎に激怒。今大会、小次郎を使わないと言う。
松上(まつかみ)中学との1回戦、小次郎はジャージーのままグラウンドに出る。味方がミドルシュートを打つと、コートの外で、それより後方から同時にシュートして、ゴールの向こうにあるコンクリートの壁にぶつける。壁には直径10cmほどの穴が開き、周りにはクモの巣のようなひびが入っていた!

これは、背筋も凍るシーンだ。
コンクリートのように「硬くもろい壁の一点」に衝撃を与えると、当たった面ではなく、当たったのとは反対側がラッパ状に破壊される。衝撃が加わると、当たった面には圧縮力が、反対側には引きはがす力がかかるが、コンクリートは圧縮力よりも引きはがす力に弱く、衝撃が一点に加わると、斜めの方向にも力が発生するからだ。

コンクリートの場合、ラッパの側面の角度は、前方から52度。壁の厚さを50cmとすると、ラッパの開口部の直径は1m38cmにもなる!

破壊されたコンクリートの体積は537L。重量は1260kg=1.26t! これだけのコンクリートを砕くエネルギーは12万6000J。車重1tの乗用車が時速57kmで激突するのと同じ! 中学生用のサッカーボール(410~450g)の中間値(430g)で計算すると、ボールの速度は時速2760km=マッハ2.25!

だが、これを上回るシーンも現出した。
南葛中との決勝戦、小次郎はタイガーショットを放つが、キーパー森崎くんの真正面。森崎くんは胸で受け止めたが、ボールの勢いがすさまじく、ほぼ一直線にゴールにたたき込まれた! かに見えたが、翼くんが横から飛び込んで、森崎くんを空中でキャッチ! したけれど、2人まとめてゴールにたたき込まれる!

このときのタイガーショットの速度は、「運動量保存の法則」で求められる。何かが起きる前後で、「運動量=質量×速度」は変わらないという基本法則だ。

森崎くんが受け止める前、運動量を持っていたのはボールだけで、質量は0.43kg。
手元の資料(※)によれば、中3のときの体重は、翼くん55kg、森崎くん60kg。
※出典元:『キャプテン翼3109日全記録』(高橋陽一/集英社)

翼くんが森崎くんを受け止めた後の質量は、55+60+0.43=115.43kg。また、2人は地上1.5mほどの高さから、ゴールがなければ5mは飛んでいきそうに見えた。そうなる速度は、秒速9.04m=時速32.5kmだ。

運動量保存の法則によって、次の式が成り立つ。

 0.43[kg]×ボールの速度=115.43[kg]×9.04[m/秒]

ここから、ボールの速度は、115.43×9.04÷0.43=秒速2430m=時速8740km=マッハ7.14!

もしコンクリートの壁に当たっていたら、12.7tが砕けていた。エネルギーは、1.26tの壁を破壊したときの10倍ということだ。これに耐えた森崎くんも超人である!

ボールの2倍の速度で跳んだ!?

若島津健は、数々のスーパーセーブを見せた。

中でも多くの人の心に焼き付いているのは「三角げりディフェンス」であろう。逆を突かれたり、体勢を崩されたりすると、ゴールポストを蹴って反対側に跳び、鮮やかにキャッチ!

圧巻は、南葛中との決勝戦だ。激しいボールまわしの果てに、翼くんのセンタリングを受けて、井沢くんがゴール右隅にダイビングヘッド。ゴールに向かって左へ振られていた若島津くんは、ゴールポストを蹴って右へ跳び、パンチングでセーブした!

状況の分かる角度から描かれたコマで測定すると、若島津くんは「井沢くんがヘディングした地点から、自分がパンチングした地点まで」の2倍ほどの距離を跳んでいる。井沢くんのヘディングと、若島津くんのゴールポストからのジャンプが同時だったとすると、若島津くんは、ボールの速度の2倍の速さで跳んだということだ! 井沢くんのヘディングシュートが時速50kmだとしても、時速100km! 仰角(地面からの角度)が、最も飛距離の出る45度だったら、79mも跳んでいた!

また、高校生の50m走のタイムと、垂直跳びの平均を比較すると、人間はジャンプの速度の2倍の速度で走れるようだ。すると、若島津くんは時速200kmで走れる!? 100mのタイムは1秒8!?

まあこれは、計算で出てくる異常な数字かもしれないが、若島津くんは、敵も味方も気付かないうちに、相手ゴール近くに現れて、シュートを決めたことが何度かある。足がモノスゴク速いのは、間違いないだろう。

スポーツですごい選手が出現すると、多くの人がその競技自体に惹かれる。やってみたいと思う若い人たちも増え、国民みんなで応援するようになり、優れた選手も次々に現れる。この幸せなスパイラルが、1作のマンガから始まったという事実を、私たちは目の当たりにしてきた。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

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