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空想未来研究所2.0

壮大な物語はエネルギーも速さも桁違い!!/スター・ウォーズ

『スター・ウォーズ』で描かれたエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるのは『スター・ウォーズ』。世界中に数多くのファンを持ち、現在公開中の最新作「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」も大きな注目を集めています。そんな『スター・ウォーズ』の物語を支える技術を、エネルギーの観点から考察しました。

『スター・ウォーズ』の第1作が日本で公開されたのは1978年。日本中が沸きに沸いていたが、筆者は映画館に足を向けなかった。当時、かなり無理な受験を控えていて、とてもそんな気持ちにはなれなかったのだ。いま思えば無念! それでもオープニングをよく覚えているのは、テレビで何度も予告編が流れたからだろう。

小さな宇宙船を、巨大な宇宙船が追っている。その艦底が徐々に画面を覆っていくのだが、どこまで進んでも終わらない。どんだけデカいんだ、このフネは!?

その印象が強烈で、『スター・ウォーズ』については何度も研究した。講談社から『スター・ウォーズ空想科学読本』という本も出させてもらった。その過程で知ったけど、あの巨大な宇宙船は帝国軍の主力艦艇スター・デストロイヤー。全長1600m! 真っすぐ立てたら、東京スカイツリーの2.5倍!

このように『スター・ウォーズ』では、数字や原理がハッキリ示されていることが多い。この壮大な物語を支える技術に、エネルギーの観点から迫ってみよう。

ライトセーバーは強力すぎる!

初めてライトセーバーを見たとき、筆者は「光の刃」と信じて疑わなかった。

だから不思議にも思ったし、心配にもなった。光は、障害物がない限り、どこまでも真っすぐに進む。なぜ、1mほどの長さを保つのか? 光と光がぶつかり合うと、何事もなかったかのようにすれ違う。なぜ、剣と剣をぶつけ合う「撃剣」ができるのか? 相手のライトセーバーを、ライトセーバーで受け止めたつもりが、何の抵抗もなく素通りされて、ズンバラリンと斬られる、などということにならないか!?

ライトセーバーは、ジェダイやシスなど、フォースを持った者にしか使えない。彼らはフォースによって、ライトセーバーの長さを一定に保ったり、撃剣を可能にしたりしているのだろうか……と想像していたのである。

ところが、Wookieepedia(スター・ウォーズ百科事典)などによると、ライトセーバーの刃は、プラズマだという! プラズマとは、固体、液体、気体に続く「第4の状態」。高温によって、原子から電子がはじき飛ばされ、元に戻るときに光を放つ。稲妻やオーロラでは空気がプラズマに、蛍光灯の中では水銀がプラズマになっている。気体がプラズマになる温度は、物質によって違うが、およそ数千℃。稲妻で発生する空気のプラズマは2万~2万8000℃にも達するという。

このプラズマで、光の刃を作ることは可能なのだろうか? 現実世界にも、「プラズマトーチ」という工具がある。鉄板などを焼き切ったり、溶接したりするのに使われ、プラズマの温度は1万~2万℃になる。ただし、プラズマトーチから放たれるプラズマの長さはわずか数cm。空気に触れると熱を奪われて、気体に戻ってしまうからだ。

では、ライトセーバーは、どうやって1mほどもの長さを保っているのか。調べると、これも明確に説明されていた。フォース・フィールドでプラズマを剣の形に保っていて、固形物に触れたときだけ熱を放出するという。空気は固形物ではないから、熱を奪われることはない。そうだったのか!

そして思い出したのは、核融合である。核融合炉の中には、重水素(陽子1個+中性子1個)や三重水素(陽子1個+中性子2個)のプラズマが封入され、1億℃もの高温になる。核融合炉が、なぜそんな高温に耐えられるかというと、磁場でプラズマを閉じ込めて、核融合炉の壁に触れないようにしているからだ。ライトセーバーでは、フォース・フィールドが核融合における磁場の役割を果たしていると言えるだろう。

ライトセーバーの威力はすさまじく、ドロイド(ロボット)の腕を切り落としたりする。溶けた金属が飛び散ったりする様子はないので、おそらく蒸発させるのだろう。ドロイドの腕が直径10cmの鋼鉄製で、内部の半分が空洞だとしよう。ライトセーバーの直径が3cmだとすると、ドロイドの腕を切断するには、およそ900gの鉄を蒸発させる必要がある。元の温度が20℃だとすれば、これに必要な熱エネルギーは5600万Jだ。

ガソリン1.4L分だが、腕を切り落とす一瞬でこれだけのエネルギーを放つのがすごい。ジェダイたちが、プロ野球選手のスイングと同じ時速150kmでライトセーバーを振るうとしたら、直径10cmの腕を通過する時間は0.0024秒。この間に上記のエネルギーを放つ出力(1秒あたりのエネルギー)は、5600万J÷0.0024秒=230億W=2300万kW。国内最強クラスの富津火力発電所(516万kW)の総出力の4倍以上である。ライトセーバー、おそるべし!

スーパーレーザーは、強力すぎて超キケン!

エネルギーといえば、忘れられないのがデス・スターのスーパーレーザーだ。

直径120kmの巨大宇宙要塞から放たれた緑色の光線は、レイア姫の目の前で、彼女の故郷である惑星オルデランを破壊した! 改めて言うことでもないが、惑星を破壊するには、とてつもないエネルギーが必要だ。その理由は、「惑星が大きいから」だけではなく、「破片が互いの重力で引き合うから」。単に破壊しただけでは、破片が集まって元に戻ってしまうのだ。もちろん、完全に元に戻るのではなく、破片がぶつかり合うエネルギーでドロドロに溶け、地球が誕生した直後と同じマグマオーシャンとなってしまうが……。

ところが、惑星オルデランは、木っ端みじんに砕け散り、後には何も残らなかった。これはスーパーレーザーが、全ての破片に互いの重力を振り切る速度を与えたということだ。これに必要なエネルギーが最も小さくて済むのは、惑星の密度が中心から表面まで一様な場合で、次の式で求められる。

 惑星を破壊するエネルギー=3/5×惑星質量×惑星半径×重力加速度

重力加速度とは、惑星の表面における重力の強さを表す数値だ。オルデランの各数値が地球と同じだったとすると、質量は5.97×1024kg、半径は6.38×106m、重力加速度は9.8m/秒2。上の式に当てはめると、エネルギーは2.24×1032J。2023年に全世界で消費された一次エネルギー(6.22×1020J)の3600万億分である! こんな常軌を逸するエネルギーを放ったら、デス・スター自身もタダでは済まない。作用・反作用の法則によって、エネルギーを放った反作用で、後ろに飛ばされるからだ。

レーザーとは、光の位相(山と谷)をそろえて放つもの。光の場合、反作用で飛ばされる速度は、次の式で求められる。

 飛ばされる速度=放つエネルギー÷光速÷自分の質量

直径120kmのデス・スターが、全体積の10%を鋼鉄が占めるとすると、質量は7.12×1017kg=712兆t。光速は3.00×108m/秒。飛ばされる速度は、2.24×1032J÷3.00×108m/秒÷7.12×1017kg。スゴイ数字で2回も割るのだが、割られる数字がスゴすぎるので、速度は秒速105万m=マッハ3090! さようなら~。

このデス・スターにも、乗組員がいることを忘れてはいけない。彼らの立場に立てば、惑星オルデラン側の壁がマッハ3090で激突してくる! 乗組員の皆さんも、さようなら~。

光速の壁を破れ!

全作品のオープニングにあるように、『スター・ウォーズ』は「遠い昔、はるか彼方の銀河系」の物語。舞台は、どこか遠くの銀河なのだ。

「銀河」とは数百億~数千億の星の集まりで、その中で私たちの住む銀河を、日本では「銀河系」と呼ぶことが多い。英語ではどちらも“galaxy”だが、ここでは日本の習慣に沿って、私たちの銀河を「銀河系」に、他の銀河を「銀河」と呼ばせていただきたい。

銀河は、人間にとっては途轍もなく広大だ。私たちの銀河系は直径10万光年だが、『スター・ウォーズ』の銀河は、もっと広いらしい。銀河のはずれにある惑星カミーノは、中心から7万光年の距離にあるというのだから。私たちの銀河系と同じように円盤型なら、その直径は14万光年もあることになる。これは光の速度でも、端から端まで14万年かかる距離。普通の航行手段では、とても物語は成立しないが、『スター・ウォーズ』の世界には、「ハイパードライブ」がある。銀河のどこへでも、たちまち行ける!

その原理は、次のように説明されている。通常の「リアルスペース」で光速以上のスピードを出すと、「ハイパースペース」に到達できて、遠くの場所に短時間で行ける。ここから分かるのは、ハイパースペースに行くには、リアルスペースにおいて光速を超えなければならないこと。普通に考えると、これは難しい。アインシュタインの特殊相対性理論によれば、物体が持つエネルギーは、次の式で求められる。

 エネルギー=質量×光速2/√{1-(速度/光速)2

速度が光速に近づくと、分母の「√{1-(速度/光速)2}」がゼロに近づくから、エネルギーはどんどん大きくなる。ピッタリ光速だと、無限大! このため、物体の速度は光速を超えられないどころか、光速に達することさえできない。

だが、ハイパースペースでは光速を超えられるとしたら?
光速を超える世界については、現実の科学でも研究されていて、そこで運動する物体は「タキオン」と呼ばれる。そのエネルギーは次の式で求められる。

 エネルギー=質量×光速2/√{(速度/光速)2-1}

これはスバラシくないですか。速度が速くなればなるほど、分母の「√{(速度/光速)2-1}」が大きくなる。ということは、エネルギーは小さくなる。つまり、ハイパースペースが光速を超える世界だとしたら、スピードを上げるほど、エネルギーは小さくて済むのだ! 逆に、速度を遅くして光速に近づけると、エネルギーは無限大に近づく。

グラフに描くと、次のようになる。

つまり、現実世界からも、光速を超える世界からも、光速はどうしても超えられない障壁となるのだ(光速を超える世界に行けたとしたら、二度と現実の宇宙には戻れない)。ああ、この障壁さえ超えられたら、夢の超光速航行が可能になるのに……。

と切望する筆者のアタマに浮かんだのは「トンネル効果」だ。電流の場合は、本来は流れるはずのない障壁を超えて、流れることがある。このトンネル効果のおかげで、多くの電子機器は稼働しているし、コンピューター回路の微細化に限界があるのもトンネル効果のためだ。

現実世界と、光速を超える世界のあいだでも、トンネル効果に近い現象が起きないだろうか……。いや、『スター・ウォーズ』の世界では、それが起きているに違いない!

はるか昔の銀河を舞台に展開する物語。現実では考えられない技術が使われていて、想像を絶するエネルギーが放たれる。その中で、人々は敵対する勢力と戦いながら、自分の弱い心とも戦っている。こうした豊かな要素が、観る者の心をわき立たせ、親近感を集めてきたからこそ、半世紀近く前に始まった物語が、いまなお新しく紡がれ続けているのだろう。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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