「クリーンテック」を3分解説！

エネルギー・電力分野に限らないクリーンテック

クリーンテックはクリーンテクノロジーとも呼ばれ、再生不可能な資源の利用を抑制（あるいはゼロに）し、従来の製品に比べて廃棄物の発生を大幅に少なくした製品やサービス、プロセスを指します。

個別の技術だけを指すのではなく、技術に関連したビジネスモデルも含み、主役となっているのはスタートアップ企業です。

元々2002年以降、ベンチャーキャピタルの投資家がテクノロジー投資のトレンドとしてクリーンテックに注目し始めました。

電気自動車の開発で知られる米国のTesla（テスラ）もその中で成功した企業の一つです。

後述する「Global Cleantech 100」では、エネルギー・電力分野だけでなく、資源・環境、輸送・ロジスティクス、農業・食料など6分野において注目されるクリーンテックが紹介されています。

クリーンテック業界注目の100社

米国・Cleantech Groupが「Global Cleantech 100」という報告書を毎年公表しています。

これは、世界のクリーンテック業界から、今後5～10年で市場に大きなインパクトを与える可能性が高いスタートアップを100社選定し、各社の事業概要を紹介したものです。

12回目となる2021年版でリスト入りした企業を見ると、地域別では北米が最も多く（62社）、欧州・イスラエルが33社、アジア・太平洋が5社となりました。

残念ながら、ここに日本企業は含まれていません。

ちなみに、エネルギー・電力部門でリスト入りしたのは39社。

例えば、「100%再生可能エネルギー電力の供給に向けて、長期の出力変動調整のためのエネルギー貯蔵技術の開発（グリーン水素の製造・輸送コスト低減含む）」を手掛ける中国・Alpha-ESS、米国・ESS、ドイツ・Hydrogeniousなど、「再生可能エネルギープロジェクトの効率的な計画・建設に関わる送電網のシミュレーションを行うネットワークプランニングツール」を提供するドイツ・Envelioやカナダ・Opus One、「建物・電気自動車・蓄電池などを含めて電力の需要と供給をリアルタイムでバランスを取るサービス」を提供するドイツ・Next Kraftwerke、米国・WeaveGridなどが挙げられました。

また、変動性再生可能エネルギーやバッテリー貯蔵を補完する技術として期待される核融合についても、商業化を加速させる技術を開発した米国・Commonwealth Fusion Systemsがリスト入りしています 。

核融合は、ゼロエミッションのベースロード電源としてのポテンシャルがあるとされています。

ベンチャーキャピタルの投資家がクリーンテックに再注目

「Global Cleantech 100」エネルギー・電力部門の中で、2021年の重要な投資テーマの例として、

①ビルのエネルギー管理
②エネルギー貯蔵
③水素
④核融合
⑤エネルギーをより柔軟に利用するための技術やプラットフォーム

が挙げられました。

全世界で気候変動対策への関心が高まり、国や企業でさまざまな取り組みが進む中で、ベンチャーキャピタルによるクリーンテックへの投資が再燃しつつあります。

最初のブームは、2005年から2011年ごろ。

しかし、その中心となったエネルギー部門は開発に長い時間がかかり、多くの資本支出が必要となる特徴から、ベンチャーキャピタルが大型投資で失敗した事例が多くありました。

現在は、AIやビッグデータの利用が進み、太陽光パネル、風力タービン（風車）などの価格が低下、蓄電池などへの需要が確実視されるようになったことで、再びベンチャーキャピタルがクリーンテックへ投資を始めたと考えられます。

日本のエネルギー企業も、脱炭素化に向けた新しい技術を求め、海外のスタートアップ企業への投資に取り組んでいます。

国や企業から「2050年カーボンニュートラル」といった宣言が相次いで提示される中、クリーンテックの世界的な開発競争はさらに加速することが見込まれます。

参考：
・Cleantech Group“2021 Global Cleantech 100 From Chaos to Transformation: The Companies and Themes Delivering Sustainable Innovation”（参照2021-01）
・CleanTech.org“What is Cleantech?”（参照2021-01）
・杉山昌広『エネルギー業界におけるベンチャーの役割―クリーンテックの台頭―』環境経済・政策研究，2014年7巻2号，p.77-90