
2021.8.2
「グリーン成長戦略」を3分解説!
カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを成長の機会とする産業政策
エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 第13回のテーマは「グリーン成長戦略」。カーボンニュートラル実現と共に経済成長を果たす新たな産業政策とは、どのようなものか。最低限知っておきたい「グリーン成長戦略」のポイントを解説します。
グリーン成長戦略とは、経済成長と環境適合を循環させる政府の指針
2021年6月、経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の改訂版を発表しました。
これは、2020年12月に発表された同戦略をより具体化させたものです。
グリーン成長戦略とは、経済成長と環境適合をうまく循環させるための産業政策です。
目標となるのは「2050年のカーボンニュートラル」であり、その実現に向けて民間企業のイノベーション創出に対する投資などをバックアップすることが国の役割としています。
具体的な政策ツールとして、政府はグリーンイノベーション基金(2兆円、今後10年間)の創設、投資促進税制、金融市場のルールづくりを通じた革新的技術へのファイナンスの呼び込み、規制改革・標準化による需要拡大と価格低減などを活用することを示しました。
産業構造を一大転換させる国の取り組み
2050年カーボンニュートラル(ネットゼロ)という非常に野心的な目標を達成するためには、従来の産業構造を抜本的に転換する必要があります。
しかし、産業構造は、転換を宣言するだけで変わるものではありません。
民間企業による技術開発や大規模な投資が必要となる中で、企業の取り組みを促すために、国の具体的な見通しや目標を示すものとして、当初のグリーン成長戦略が策定されました。
成長戦略と脱炭素化を結び付ける動きは、野心的な気候変動目標を掲げる欧州などにおいても見られます。
特に、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済的なダメージからの回復を脱炭素化と結び付け、さらにエネルギー転換(エネルギートランジション)も共存させようとする流れは、多くの国で注目されています。
脱炭素化と電化を中心とした14の産業分野のイノベーション
グリーン成長戦略では、成長が期待される14の重要な産業分野が特定されています。
14の分野のうち、エネルギー関連産業として洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)、水素・燃料アンモニア産業、次世代熱エネルギー産業、原子力産業の4つが挙げられました。
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その他、輸送・製造関連産業として7つ、家庭・オフィス関連産業として3つが挙げられている
戦略では、2021年から2050年まで、さまざまな産業において技術開発から商業化までの実行計画も明示されています。
たくさんの産業がカバーされていますが、電力部門では「電力の脱炭素化」が大前提となり、産業・運輸・業務・家庭部門では利用するエネルギーを電気にシフトしていくこと、つまり「電化」が中心に位置付けられています。
また、電化することが困難な部門では、二酸化炭素(CO2)の回収や水素の利用によって熱を脱炭素化することが言及されるとともに、製造プロセスに革新的な技術(例として水素還元製鉄)や炭素除去技術といったイノベーションが不可欠とされているのです。
民間企業による投資を誘引する上で、国が方針を示すことは重要です。
同時に、世界でも技術開発が加速する中、国内外の情勢と企業が直面する課題を丁寧に見極める必要もあります。
野心的な目標と現実のギャップを速やかに埋めていくことが求められるため、今後の戦略の見直しも注目されます。
参考:
・経済産業省『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』(2021年6月18日)
※参照:2021年7月29日
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