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「ネガティブエミッション技術」を3分解説!

ネガティブエミッション技術とは、大気中のCO2を減らす技術

エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 第11回のテーマは「ネガティブエミッション技術」。DACCSやBECCSなど、カーボンニュートラルの達成に向けて注目が集まる技術にはどのようなものがあるのか。最低限知っておきたい「ネガティブエミッション技術」のポイントを解説します。

CO2を大気から直接回収し、貯留するDACCS

温室効果ガスの多くを占めるCO2(二酸化炭素)。これを大気中から除去する技術のことを「ネガティブエミッション技術」と呼んでいます。

世界でさまざまな研究開発が進められていますが、その中で代表的なものに「DACCS」があります。

これはDAC(Direct Air Capture:直接空気回収)とCCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)を組み合わせた名称で、大気中からCO2を永続的に除去し、CO2の排出量をマイナスにする仕組みです。

DACとは、大気中のCO2を直接回収する技術を指します。

大気を集めた後、溶剤を用いて化学的に特殊な液体に吸収させて分離する方法や、選択的に透過する膜で分離する方法などでCO2を回収することができます。

そうして回収したCO2を地中などに埋めて貯留すると(=CCS)、大気への排出量がマイナスになるのです。

ちなみに、DACで回収したCO2は、燃料や化学物質、建材などの製造に利用することもできます。

ただし、大気中に含まれるCO2濃度は0.04%と低いため、回収率で考えると、DACCSは今のところまだ多くのエネルギーを消費するコストが高い技術です。

それでも日本をはじめ、欧州や米国、カナダなどでスタートアップが実用化に向けて研究開発を進めており、2020年時点で既に15の小規模プラントが操業しています。

中でもカナダのCarbon Engineering社は、米国において年間100万tものCO2を回収できる大規模DACプラントを建設中で、注目を集めています。

出典:Carbon Engineering公式サイトより

バイオエネルギーとCCSを組み合わせたBECCS

ネガティブエミッション技術の代表例としては、DACCSの他にも「BECCS」が挙げられます。

BECCSとはBioEnergy with Carbon Capture and Storageの略で、CCS付きバイオエネルギー(生物体由来のエネルギー)を指します。

バイオマス(バイオ燃料)を利用した場合、例えば樹木が成長過程で吸収したCO2と、その樹木由来の燃料を燃焼した際に排出するCO2は同量と考えることができます。

そのため、CO2排出量が元々ネットゼロ(正味でプラス・マイナスがゼロ)であるバイオマスの燃焼によって排出されたCO2を回収し、地中などに貯留すれば、ネガティブエミッションになるというものです。

BECCSは、現在最も発達したCO2除去技術の一つとされ、世界中でBECCS施設が操業しており、エタノール製造のような産業プロセスやバイオマスを利用した発電所からCO2の回収が行われています。

「2050年ネットゼロ」という日本の野心的な目標を達成するには、このBECCSが重要な役割を果たすのはもちろん、DACCSのさらなる効率向上やコスト低減に向けた取り組みも求められるでしょう。

CO2を減らす自然の力

大気中のCO2を除去する方法としては、自然の力を利用、もしくは強化して利用するものもあります。

陸地なら森林がない場所で樹木を育てたり(植林)、過去に森林があった場所に再び森林をつくったり(再植林)、海洋なら沿岸の海草藻場を復元するなどして、大気中のCO2を継続的に吸収できるようにすることが挙げられます。

他にも、近代的な農法を用いて土壌中の炭素含有量を増加させる土地管理方法があります。

これはバイオ炭(バイオマスから製造された炭)を土壌に加えることで、数百年から数千年にわたって炭素を貯蔵するというものです。

さらには、細かく粉砕した岩石を土壌にまき大気中のCO2と化学反応を起こさせる「風化促進」や、植物プランクトンなどがCO2を吸収する能力を高めるため海に栄養分を加える「海洋肥沃化」といったアプローチも、CO2除去の可能性やコスト、リスクなどを理解するために研究が進められています。

各国政府が、より高い温室効果ガス排出削減目標を相次いで提示しています。

目標を達成するには、コストとポテンシャルを十分に考慮しながら、さまざまな方法でCO2排出量をネットゼロ、さらにネガティブエミッションへ近づける取り組みが必要です。

参考:
IEA (2020), Direct Air Capture, IEA, Paris
IEA (2020), Going carbon negative: What are the technology options?, IEA, Paris
IEA (2020), “Energy Technology Perspectives 2020”
※参照:2021年5月24日

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