2021.9.28
「プラスチック新法」を3分解説!
プラスチックの資源循環体制を強化する法律
エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 第15回のテーマは「プラスチック新法」。使い捨てプラスチックの削減が話題になっているが、これまでのリサイクル法とは何が違うのか。最低限知っておきたいポイントを解説します。
INDEX
プラスチック資源の扱いが2022年4月から変わる
プラスチック新法とは、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」のことを指します。
2021年3月に法律案が閣議決定され、6月に国会で成立、2022年4月の施行が予定されています。
既存のリサイクル法として、「容器包装リサイクル法」「家電リサイクル法」「自動車リサイクル法」などが挙げられますが、これらは全て製品に焦点を当てた法律です。
一方のプラスチック新法は、プラスチックという素材に焦点を当て、プラスチックを使用した製品の設計・製造から廃棄物の処理までのライフサイクル全体で資源循環を促すことが目的です。
日本は2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定し、マイルストーンとして2030年までに使い捨てプラスチック製品(ワンウェイプラスチック)を累積で25%排出抑制することなどを盛り込みました。
今後、経済産業大臣および環境大臣がプラスチック新法の主務を担い、同戦略で掲げられたマイルストーンの達成を目指していきます。
プラスチック製品の設計・製造・処理段階ごとの循環促進策
プラスチック新法には、ライフサイクルの各段階でプラスチック資源循環の取り組みを促進するための措置として、次のような内容が盛り込まれています。
① 製品の設計・製造段階
・製造事業者などが努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定し、同指針に適合した製品であることを認定する仕組みを設ける。
②製品の販売・提供段階
・ワンウェイプラスチックの提供事業者が取り組むべき判断基準を策定し、使用の合理化を求める。
③使用済み製品の排出・回収・リサイクル段階
・容器包装リサイクル法の仕組みを活用して、市町村および再商品化事業者による効率的な再商品化を可能とする仕組みを導入する。
・製造事業者などが自主回収と再資源化を実施できる仕組み(国の許可不要)を構築する。
・排出事業者が取り組むべき判断基準を策定し、排出事業者の再資源化計画を認定する仕組みを設ける。
これらを基にプラスチック使用量の削減を進めた上で、必要不可欠な使用分は再生素材や再生可能資源へ切り替えてリサイクルし、プラスチック資源を循環していきます。
それが難しい場合は、焼却処理の段階で発生する熱を回収し、エネルギーとして利用すること(サーマルリサイクル)が必要とされています。
サーキュラーエコノミーへの移行を目指す
また、プラスチック新法では、次のような消費者の責務も規定されました。
・分別排出に努めること
・プラスチック製品をなるべく長期間使用すること
・過剰な使用を抑えて廃棄物の排出を減らすこと
・再資源化された製品を使用するよう努めること
事業者や市町村の取り組みだけでなく、消費者も資源循環に対する理解を深め、意識して行動を変化させることが求められます。
日本はこれまで、サーマルリサイクルや海外輸出によって使用済みプラスチックを処理してきました。
つまり、使い終わったプラスチック製品を廃棄物として扱っており、マテリアルリサイクル(再資源化、再生利用)が十分に進んでいないといえます。
一方の欧州では、資源を循環させることで新たな市場や産業を創出し、雇用拡大にもつなげることを狙った、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への転換が進められています。
EUの循環型経済行動計画(2020年3月発表)では、包装や建設資材、自動車といった主要なプラスチックが使われている製品について、再生材料の含有量の必須要件を提案するとしています。
日本もプラスチック新法によって、循環型経済への移行に向けた一歩を踏み出しましたが、もちろん一気に転換することはできません。
今後、取り組みを進める中で生じた課題に対応しながら、着実に移行することが期待されます。
参考:
・経済産業省・環境省『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の概要』(2021年3月9日)
・経済産業省・環境省『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案・理由』(2021年3月9日)
※参照:2021年9月21日
-
この記事が気に入ったら
いいね!しよう -
Twitterでフォローしよう
Follow @emira_edit
写真:なべすん / PIXTA(ピクスタ)