特集
地球上にあふれる「ゴミ」について考える

人々の生活を支えるプラスチックに未来はあるのか?

日本における「ゴミ」の実情をひもときつつ、プラスチックと“賢く付き合う”こと

廃プラスチックにまつわる課題が頻繁に報じられるようになって久しい。2018年には、使用済みプラスチックをこれまで大量に受け入れていた中国が原則輸入禁止に。東南アジア諸国も、制限・拒否する動きが続いている。その一方で、現代人の生活の中では欠かすことのできない素材となっているプラスチック。環境に配慮したまま、これを使い続ける方法はあるのか──。環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室に、日本の廃プラスチックの実情と今後について聞いた。

人口1人あたりの容器包装プラスチックゴミが多い日本

1950年以降に全世界で生産されたプラスチックの総量は83億トンを超える。そして、そのうち63億トンはゴミとして廃棄されているという。

生産量の内訳を細かく見ると、例えば2018年6月にUNEP(国連環境計画)が発表した報告書『シングルユースプラスチック』では、「容器包装」にかかるプラスチックが生産量全体の36%を占め、電化製品や建築資材などを大きく上回っていることが分かる。

2018年にUNEPが発表した報告書。産業セクター別のプラスチックで最も生産量が多いセクターが「容器包装」。全体の36%を占めている

では、この容器包装の排気量を国別に見るとどうか。

人口1人あたりのプラスチック容器包装廃棄量をアメリカ、中国、EU、インド、そして日本で比較したデータがある。これによると日本はトータルの廃棄量こそ最小だが、人口1人あたりの廃棄量では中国やEUよりも多いということが明らかとなっている。

山吹色はプラスチック容器包装の総廃棄量(単位:百万トン)。赤茶色は人口1人あたりの廃棄量(単位:キログラム)。日本の人口1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量は、アメリカに次いで第2位

日本はなぜ人口1人あたりの廃棄量が多いのか。環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室の井関勇一郎係長は「一つには日本の文化も関係していると思う」と語る。

「買い物をしたときに経験があると思いますが、商品そのものが包装されていて、さらにそれを包む持ち運び用の包装がありますよね。贈答品であれば、もっと包装が増えます。礼儀作法という意味では日本の良い面でもあるのですが、最終的には中身以外はゴミになってしまいます。そこが弱点であり、プラスチックゴミを減らす余地があると思います」

では現在、日本ではどれくらいの量のプラスチックゴミが出ているのか。

「日本で1年間に排出される全てのゴミは、約4億3000万トン。そのうち900~1000万トンがプラスチックゴミです。割合でいえば2%くらいですね。その中で最も多いのは容器包装類で420万トン。建築系資材59万トン、自動車関連33万トン、家電28万トンと続きます(※2013年時点の数量)」

これらのプラスチックゴミは、通常の廃棄物の回収・処理ルートのほか、「容器包装リサイクル法」や「家電リサイクル法」などによって回収され、リサイクル・処理が施される。そのうちリサイクルについては2つの方法に分かれる。

プラスチックゴミについては「リサイクル」が25%、「熱回収」が57%。「未利用」が18%。このうち「リサイクル」の比率を上げていくことが目下の課題だ

「一つは“材料リサイクル”、または“マテリアルリサイクル”と呼ばれるものです。例えば、ペットボトルなどをきれいに洗浄して粉砕し、材料として再利用します。これが大体22%程度。もう一つは“ケミカルリサイクル”。こちらはさらに細かく、水素や酸素といった分子レベルまで戻し、新たにプラスチックなどの原料として利用するものです。ただし、こちらはエネルギーとコストがかかるという理由から、あまり積極的には行われてはおらず、全体の3%にとどまっています」

材料リサイクル22%+ケミカルリサイクル3%=25%。では残りの75%はどうなっているかというと…全体の57%を占めているのは“熱回収”だ。

「ほとんどのプラスチックは石油由来ですから、これを燃やすことでエネルギーを得ようというわけです。方法は3種類あって、まずは“廃棄物発電”。プラスチックゴミを燃やしたときの熱エネルギーでタービンを回して発電します。次にRPF(廃棄物固形燃料)やセメント燃料化。これはプラスチックゴミなどから固形燃料を製造したり、セメント製造時の燃料として利用したりするものです。そして3つ目が“熱利用”です。焼却時に発生する熱を温水プールなどで利用するタイプですね」

リサイクルと熱回収で82%。残る18%は有効利用のない焼却処分と埋め立て処理となっている。

日本国内でいかにプラスチックゴミを処理するか

再利用も熱利用もされず、焼却され、埋め立てられるプラスチックゴミがある。一方で、海外へと輸出されているプラスチックくずがあるという事実をご存じだろうか。

中国では1980年代以降、日本や欧米諸国からプラスチックくずなどを資源として輸入し、それを新たな製品の原料として再利用してきた。しかし近年、中国でも環境問題が取り沙汰される中、2017年7月に「輸入廃棄物管理目録」を改正。2018年1月から使用済みプラスチックの輸入禁止を実施することになる。

「2017年以前、中国へは約130万トン、そのほかの東南アジア諸国へ約20万トンのプラスチックくずを輸出していました。それが2018年には中国が約5万トン、東南アジアが約95万トンと、総量としては約50万トンほど減っています。輸出量が減った分、国内での処理が増えたということなのです」

では、その増えた50万トンを国内でスムーズに処理できているのかといえば、現状はそうとは言い切れない。

環境省が全国の地方自治体や産業廃棄物処理業者を対象に、2018年8月と2019年3月に行ったアンケートによれば、一部地域では上限超過などの保管基準違反が見られるなどプラスチックごみの適正な処理に支障が生じたり、不適正な処理事案が出てきたりすることが懸念されているという。

中国が使用済みプラスチックの受け入れを制限したことで、プラスチックくずを輸出する総量そのものが減った。それだけ国内処理が増えていることを意味する

さらに輸出量が減ったといっても、まだ100万トンは残る。今後、中国にならって東南アジア諸国が輸入を制限することも容易に考えられる。

そんな将来を見据えたとき、やはりプラスチックゴミの発生自体を抑制していく必要がある。

「まずリデュースとして何ができるか。その一つが2020年7月の実施が予定されている、レジ袋の有料化です。これまでも議論はありましたが、基本的に事業者の意思に任されていました。それを今回、義務化するということになります。同時に、冒頭でお話ししたように不必要な包装の簡易化を進めることも必要だと思います」

環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室の井関勇一郎係長。以前は福島県で産業廃棄物処理に携わっていた

もちろん、これだけで課題が解決するわけではない。「プラスチックゴミの問題には、いくつかの課題が複雑に絡み合っている」と井関係長は言う。

「先ほど“中国が使用済みプラスチックの受け入れをやめたために、そのぶん国内で処理する必要が出てきた”と話しました。これをより円滑に進めるためには、プラスチックゴミの総量そのものを減らす必要があります。一方では、海洋プラスチック問題もあります。こちらの課題はリデュースもさることながら、海に出さないこと。つまりきちんと回収を徹底することがポイントであり、その指針は『海洋プラスチックごみ対策アクションプラン』としてまとめました」

さらにプラスチックゴミに関する課題を複雑にさせているのが地球温暖化だ。

ほとんどのプラスチックは石油由来のもの。よってこれを焼却するとCO2が発生する。それは現時点でプラスチックゴミの処理方法として約57%を占める熱回収でもいえることだ。

「ですので、植物由来のバイオマスプラスチックを積極的に使用しようという議論があります。そうすれば焼却してもCO2は理論的には増えません。われわれは『プラスチック資源循環戦略』を策定したときに“3R+リニューアブル”という基本原則を打ち出しました。不必要なものを減らそうという“リデュース”、使えるものは繰り返し使おうという“リユース”、回収したものを再度資源として使う“リサイクル”。そして、代替素材に転換していこうという“リニューアブル”。先ほどのバイオマスプラスチックへの転換がこれを指しています」

環境省ではこの「プラスチック資源循環戦略」と「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」の2つを、日本におけるプラスチックゴミ対策の方針として進めていくという。

■プラスチック資源循環戦略
地球規模での資源・廃棄物制約、海洋プラスチック問題、地球温暖化などへの対策として、プラスチックの3R(リデュース、リユース、リサイクル)や適正処理をさらに進めるほか、イノベーションを促進する
【マイルストーン】
・2030年までにワンウェイプラスチックを累計25%排出抑制
・2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入
など

詳細はこちら


■海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
【取り組み】
・プラスチックごみの回収・適正処理の徹底
・ポイ捨て・不法投棄などによる海洋流出の防止・回収
など

詳細はこちら

プラスチックゴミを減らすためのライフスタイル

その悪影響が海洋汚染にまで広がっているプラスチックゴミ。

総量を減らす必要性は十分に理解できるが、その一方でわれわれの生活の中に浸透しているプラスチックをゼロにすることは難しいと言わざるを得ない。

「社会の中にこれだけプラスチックが浸透しているということは、そこにメリットもあるわけです。例えば、高機能なプラスチックの容器で包装することで食品の保存期間が延びることもあります。また、ガラス瓶や鉄に比べて圧倒的に軽いので、輸送時の環境負荷を軽減することもできます。このようにプラスチックにはメリットも多いのです」

つまり、使い方と回収・処理の両面からプラスチックとの付き合い方を考える必要があるわけだ。

環境省が推進する「プラスチック・スマート」キャンペーン。公式HPでは省庁や自治体、企業、団体から個人に至るまで、プラスチックに関わる課題の解決に向けた取り組みを紹介している

「そこでわれわれが掲げているのが『プラスチック・スマート』というキャンペーンです。具体的には、以前から進めているマイバッグやマイボトルの利用促進のさらなる強化もその一つ。マイバッグを持つことで、経済的な節約にもなるし、プラスチックゴミを減らすことにつながることをもっと理解してもらいたいと思っています」

マイバッグといえば、前述の通り、2020年7月1日からレジ袋有料化が開始される。対象となっているレジ袋は化石資源からできたプラスチック製の袋で、バイオマスプラスチックを25%以上使ったものや海中で水や二酸化炭素に分解されるものは対象外だという。

レジ袋有料化にあたり、業界団体が懸念していたのは“公平性”だ。今回、業種や規模にかかわらず全ての小売店が対象となったことで、有料化の義務化が進んだ。消費者の中には賛否両論あるようだが、できることから社会全体が変わっていくことが必要なのだろう。

また、変化する意識を高めていくためには企業・団体との連携も不可欠だ。環境省では「プラスチック・スマート」の認知度向上を目指し、アニメ映画『きみと、波にのれたら』とのコラボポスターを作成。若年層に向けたキャンペーンを行った。

「ゴミに対する意識を高めてもらう取り組みとして『スポーツゴミ拾い』などもあります。これは回収したゴミの種類でポイントを定め、チームごとに時間内でどれだけ得点を稼げるかを競うものです。すでに多くの自治体でスタートして盛り上がっています。そうやってプラスチックゴミやゴミそのものに対する知識と意識を高めてもらうことが大事なんだと考えています」
 
われわれの生活にさまざまなメリットをもたらしてきたプラスチック。

これからも上手に付き合っていくために、まずは必要以上に使わないこと。そしてしっかりと回収していくことが大切だといえる。



■プラスチック・スマート
詳細はこちら

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