
2022.2.4
SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のターゲット3を3分解説!
目標7-3「2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる」とは?
エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 第19回のテーマは、SDGs(持続可能な開発目標)の「目標7のターゲット3」(以下、SDG 7.3)。「エネルギー効率の改善率を倍増させる」とは、どういった状態を目指すことなのか。前回に続き、SDGsに掲げられている7つ目の目標「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を掘り下げます。
INDEX
「SDG7.3」はエネルギー効率をどれだけ改善できるか
SDGs(Sustainable Development Goals)の目標7(SDG7)は、ゴールに設定された「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」へたどり着くため、具体的な3つの達成基準(ターゲット)を掲げています。
その3つ目がSDG7.3である「2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる」です。
※「SDG7.1」はこちら>>SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のターゲット1を3分解説!
※「SDG7.2」はこちら>>SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のターゲット2を3分解説!
「エネルギー効率」とは、「生産活動量」(GDP、生産・製造数、売上高など生産量を示す値)当たりの「エネルギー消費量」で評価されます。
このエネルギー効率がどれだけ改善しているのかを測る指標となるのが、GDP当たりの一次エネルギー(石油や天然ガス、水力、太陽熱など天然資源から得られるエネルギー)で示される「エネルギー強度(Energy intensity)」です。
「一次エネルギー供給量÷GDP=エネルギー強度」で求められ、単位当たりの経済生産を生み出すために、どれくらいのエネルギーが使われているかが分かります。
エネルギー強度が小さいほど、より少ないエネルギーで同じだけの価値を生み出すことになり、効率が良いとなるのです。
世界のエネルギー効率の改善率は鈍化傾向
国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、世界のエネルギー強度の改善率(前年比)は、2015年の3.2%から2016年に2.5%、2017年に1.7%、2018年に0.9%、2019年に1.7%と鈍化傾向にあります。
この背景には、多くの主要経済国でエネルギー効率政策の実施が弱まったことや、製鉄やセメント、化学などエネルギー集約型と呼ばれる産業を基盤とした国において、エネルギー需要が大きく伸びたことが挙げられます。
また、2020年の見通しでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって、改善率が低くなることも予測されています。
SDG7.3の達成には、2030年まで年平均約3%の改善が必要であり、エネルギー効率の改善に向けた政策の実施と強化が重要なポイントとなります。
実現には、義務的な基準を策定することに加え、定期的な見直しや引き上げも重要となります。
建物の改修や電気自動車の購入に対する減税、公的融資などのインセンティブ、技術革新やエネルギー管理の進歩も、エネルギー効率の改善に貢献していきます。
2030年に向けて掲げられたSDG7.3のマイルストーンと実現方法
2021年9月、国連総会主催で首脳レベルの会合「エネルギー・ハイレベル対話」が開かれ、その成果としてSDG7の達成に向けた世界的なロードマップが公表されました。
SDG7.3に関しては、次のようなマイルストーンが表明されています。
・世界の再生可能エネルギーとエネルギー効率への年間投資を2025年に倍増、2030年に3倍にする
・化石燃料消費に対する補助金を再生可能エネルギーやエネルギー効率へと振り向ける
・世界のエネルギー効率の改善率を倍増させる
(2021年11月3日、国連事務総長発表より抜粋)
なお、SDG7には実現のための方法として「7.a」と「7.b」も示されています。
【7.a】
2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率、および先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究および技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
【7.b】
2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国(※1)、内陸開発途上国(※2)のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。
7.aや7.bで示されているように、世界全体での目標達成には投資の促進やインフラの拡大、技術向上が不可欠です。
さまざまな国際協力が既に進められていますが、全ての国、人、組織が目標を意識して行動することが一層求められています。
※1 小島嶼開発途上国(SIDS):小さな島で国土が構成される開発途上国。地球温暖化による海面上昇の被害を受けやすく、島国固有の問題による脆弱性のために,持続可能な開発が困難だとされる。太平洋、カリブ、アフリカ地域などの38か国(国連加盟国)と複数の非国連加盟国・地域が含まれている。
※2 内陸開発途上国(LLDC):国土が海から隔絶され、国際市場への距離や物流コストなどの経済社会発展上の制約を抱える、地勢的に開発に不利な途上国。
参考:
United Nations, SDGs,
United Nations, High-level Dialogue on Energy New York, September 2021,
IEA (2020), SDG7: Data and Projections, IEA, Paris
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イラスト:wowomnom / PIXTA(ピクスタ)