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「損失と損害(ロス&ダメージ)」を3分解説!

気候変動の影響に伴う損失と損害への対応

エネルギーの注目キーワードを3分で理解!今回のテーマは「損失と損害(ロス&ダメージ)」。COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)で大きな注目を集めた途上国への支援はどのようなものなのか。最低限知っておきたい「損失と損害」のポイントを解説します。

気候変動の影響が引き起こす損失と損害への対応

損失と損害(ロス&ダメージ)について、国際的に合意された定義はありませんが、参考として気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による「第6次評価報告書第2作業部会報告書」では、「気候変動の(観測された)影響と(予測される)リスクによる被害」を広く指すものとされ、「経済的・非経済的なものを含む」としています。

気候変動による影響には、台風や干ばつ、洪水などの短期的なものと、海面上昇や気温上昇、土地・森林の劣化などの長期的なものがあります。

気候変動対策には、「緩和」(温室効果ガス排出量の削減)と「適応」(現在および将来の気候変動の影響に応じて生態学的、社会的、経済的なシステムを調整し、被害を回避・軽減すること)があり、この緩和策や適応策によって回避できない、あるいは回避できなかった被害が「損失と損害」です。

COP27では損失と損害への資金提供に合意

近年、気候変動や災害リスクに脆弱な国(後発開発途上国や小島嶼国など)に対する支援の在り方、損失と損害への対応に注目が集まっていました。

2021年のCOP26では、損失と損害が今後も大きな脅威となることが認識され、先進国やさまざまな機関に対して支援の強化を求めました。

また、2022年のCOP27はエジプトで開催され、損失と損害が大きな議題となりました。

会期を延長した議論の末に合意されたCOP決定では、気候変動の悪影響に対して脆弱な国を支援するための基金の設立が盛り込まれました。2023年にアラブ首長国連邦で開催されるCOP28では、資金面での措置や基金の運用化について詳細が議論される予定です。

日本の損失と損害支援パッケージ

損失と損害に対する支援として、日本は「日本政府の気候変動の悪影響に伴う損失及び損害(ロス&ダメージ)支援パッケージ」をCOP27の場で公表しました。

これは環境省だけでなく、さまざまな省庁による既存の支援策をまとめたもので、損失と損害に対応する人材の育成や早期警戒システムの整備、災害リスクの管理、よりよい復興に向けた支援などが含まれています。

また、環境省は新たな取り組みとして、「アジア太平洋地域における官民連携による早期警戒システム導入促進イニシアティブ」を立ち上げました。

これは、日本の民間企業によって、各国の事情に応じた早期警戒システムの導入(観測機器の整備、観測データの分析・予測、気候情報サービスの提供など)や早期警戒システムを活用した事業展開を促進するものです。

環境省が日本の有志企業と連携体制をつくり、アジア地域で先行的に早期警戒システムのプロトタイプを構築。導入に向けた道筋を付けることを目指します。

COP28に向けて、資金拠出をはじめとする損失と損害に対する支援の議論はますます注目を集めます。

参考:
・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、『第6次評価報告書第2作業部会報告書』
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/
・地球環境戦略研究機関、『気候変動への「適応」と「損失と損害」 に関するCOP27の結果速報』(2022年11月)
https://www.iges.or.jp/jp/pub/adaptation-loss-damage-cop27/ja
・環境省、「国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)、京都議定書第17回締約国会合(CMP17)、パリ協定第4回締約国会合(CMA4)について【11/6~11/20 エジプト・シャルム・エル・シェイク】」
https://www.env.go.jp/earth/cop27cmp16cma311061118.html
・環境省、『日本政府の気候変動の悪影響に伴う損失及び損害(ロス&ダメージ)支援パッケージ』(2022年11月15日)
https://www.env.go.jp/content/000087002.pdf

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