2024.9.11
自然災害の激甚化で重要度が高まる。「エネルギーレジリエンス」を3分解説!
エネルギー供給支障からの迅速な復旧能力
エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 今回のテーマは「エネルギーレジリエンス」。持続可能な成長にも貢献する価値として重視されているが、どのようなものなのか。最低限知っておきたい「エネルギーレジリエンス」のポイントを解説します。
災害などを通じて重要性が再認識
レジリエンス(resilience)は、もともと「回復力」や「弾力」、「強靭(きょうじん)さ」といった意味の言葉です。
エネルギーレジリエンス(energy resilience)とは、エネルギーの供給支障が発生した場合に、ハード・ソフトの両面で被害影響を最小化し、迅速な復旧を遂行する能力を指します。
日本では、特に2018年の北海道胆振東部地震によるブラックアウトや2019年の台風15号などによる大規模停電の発生などによって、エネルギーレジリエンスの重要性が再認識されました。
また、レジリエンスは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の中でも目標9(強靭なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る)や目標11(包摂的で安全かつ強靭で持続可能な都市及び人間居住を実現する)に位置付けられ、持続可能な成長に貢献する価値とされています。
日本の取り組み:エネルギー供給強靭化法
日本では2020年6月に「エネルギー供給強靱化法」が成立しました。
同法は、3つの法の改正で構成されます。そのうちの一つである電気事業法の改正では、自然災害の被害対応を踏まえ、一般送配電事業者間での「災害時連携計画」作成や復旧費用の「相互扶助制度」創設、地域間連系線の増強を促進するための制度整備などが盛り込まれました。
また、日本では、これまで企業においてコストとみなされがちだったエネルギーレジリエンス強化のための投資を積極的に促すため、2020年2月から専門家委員会で議論が始まりました。
同委員会では、産業・学術・金融の専門家が集まり、強化の取り組みを適切に評価し、事業や投融資につなげていくために必要な仕組みが議論され、評価の枠組みの項目案を含む中間論点整理が発表されました。
国際的な取り組み:APEC
アジア太平洋経済協力(APEC)では、2014年からエネルギーレジリエンスについて議論されてきました。
2015年のAPECエネルギー大臣会合では、エネルギー安全保障と持続可能な発展を推進するうえでエネルギーレジリエンスの向上が重要と言及した「セブ宣言」が発表されました。
セブ宣言に基づいてタスクフォースが設置され、参加エコノミー(国・地域)の取り組みや得られた教訓の共有が行われ、2020年8月には「エネルギーレジリエンス原則」に合意、2023年2月に「エネルギーレジリエンス・ガイドライン」がまとめられました。
ガイドラインは、APECにおけるエネルギーレジリエンス強化のための計画策定を支援することを目的としています。APECエコノミーからは、事例研究を含めたより具体的で実践的なガイダンスの策定が求められているところです。
自然災害などによる被害が年々増加しつつある中で、エネルギーインフラへの短期・長期的なリスクを把握しつつ、エネルギーレジリエンス強化への投資が十分に確保されるための適切な評価や仕組みの確立が、日本のみならず世界で注目されています。
参考:
・経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2020」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2020html/
・経済産業省 エネルギーレジリエンスの定量評価に向けた専門家会合「中間論点整理」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/energy_resilience/pdf/20200720_01.pdf
・APEC, “APEC Energy Resiliency Guidelines”(February 2023)
https://www.apec.org/publications/2023/02/apec-energy-resiliency-guidelines
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