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2021.3.15
「EMIRAビジコン2021」最優秀賞、発表!全国の学生182チームの頂点が決まる
「食×エネルギー」をテーマにしたビジネスアイデアコンテストの最終審査が開催される
EMIRAと早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム(以下、PEP)が、昨年に続き2回目の開催となる学生ビジネスアイデアコンテスト「EMIRAビジコン2021 エネルギー・インカレ」を共同で開催した。2021年2月27日に東京都内で開かれた最終審査では、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、最終審査に残った5組がオンライン上でプレゼンテーション。最も優れたアイデアに授与されるEMIRA最優秀賞に輝いたのは、どんなアイデアか?
2021年のテーマは「食×エネルギー」
イノベーションを「エネルギー」という視点から読み解いて未来を考えるメディア「EMIRA」と、電力・エネルギー業界の人材育成を進める「PEP」。この2つがタッグを組んで開催する学生ビジネスアイデアコンテスト「EMIRAビジコン2021 エネルギー・インカレ」の最終審査が2021年2月27日に行われた。
今回のテーマは、電力をはじめとする現代社会において不可欠な「エネルギー」と、人が生きていく上で欠かせない「食」を組み合わせた「食×エネルギー」。2020年に続き、2回目の開催となる。
※第1回「EMIRAビジコン2020 エネルギー・インカレ」のリポートはこちら
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オンラインでの開催となった「EMIRAビジコン2021 エネルギー・インカレ」。プレゼンテーションは画面越しに行われた
2020年10月1日から12月25日までの約3カ月間にわたり、理系・文系を問わず全国の大学生・大学院生(高等専門学校生を含む)からビジネスアイデアを募集。前回を超える182の応募が集まった。
生産や加工、保存に流通、そして販売と、食のあらゆる工程においてエネルギーは切っても切り離せないもの。そんな親和性の高い「食」と「エネルギー」の関係にフォーカスしたビジネスアイデアから、最終審査に残ったのは次の5つ。
1.食の不均衡をエネルギーの視点で 食品ロスから食品とエネルギーを/東北大学大学院「宏塾」(東北大学大学院 工学研究科・工学部 猪股研究室)
2.食品廃棄物を用いた野菜の栽培と貧困削減/秋田大学 国際資源学部 資源政策コース 国際協力研究ゼミ
3.農家の共同運送を可能にするシステムの構築/Team Agridge Project(横浜国立大学)
4.Fridge Food Scanner/Fridge Foods Scanner(早稲田大学)
5.大企業とESG投融資で食料不足を解決!! ミドリムシで動く農業機械『アグレナ』!/The middle(金沢工業大学)
審査員と特別審査員の計5名が東京都内の一室に集まり、新型コロナウイルス感染症への対策として、5チームのプレゼンテーションはオンラインで審査する形となった。
開会に際して、EMIRAの亀谷潮太編集長があいさつし、今回のテーマである「食×エネルギー」について、「食はエッセンシャルな問題であると同時にエンターテインメント要素があり、さらには哲学的な側面もある。経済的、社会的な視点からも検討できる広がりのあるテーマ」とし、「どのように面白いアイデアを提案してくれるのか、楽しみにしています」と期待を込めた。
続いて、亀谷編集長と共に審査員を務めるPEPプログラムコーディネータ―の林泰弘教授(早稲田大学 理工学術院)、東京電力ベンチャーズ株式会社の赤塚新司代表取締役社長、特別審査員を務める株式会社出前館エグゼクティブ・アドバイザーの中村利江さん、株式会社マクアケR&Dプロデューサー/クリエイティブディレクターの北原成憲さんの紹介を経て、早速プレゼンテーションが始まった。
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(写真奥から)審査員の亀谷編集長、赤塚代表取締役社長、林教授、特別審査員の北原さん、中村さん
冷蔵庫カメラに持続可能な野菜…ユニークなアイデアが一堂に
トップバッターは、東北大学大学院「宏塾」による「食の不均衡をエネルギーの視点で 食品ロスから食品とエネルギーを」のプレゼンテーション。
昨今、日本では廃棄による食品ロスが問題視されている一方で、世界的に見ると9人に1人が栄養不足状態という「食の不均衡」が生じている。加えて、食品廃棄のための運搬や焼却によるエネルギーロスも無視できなくなっており、経済的な観点からも「食の不均衡」は解決すべきと問題提起を行った。
この解決策として、農家から廃棄される野菜や果物を乾燥食品として商品化し、同時に小売店から出る消費期限切れ食品をバイオマス燃料化することで、廃棄食品に新しい価値を生み出すことを提案。途上国への展開も視野に入れながら、食品ロスとエネルギーロスの問題を共にクリアし、社会課題の解決につなげていくとした。
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東北大学大学院「宏塾」の長谷川就さんと浦田宙明さん(写真左から)。チーム名の「宏塾」は、2人が所属する研究室の猪股宏教授から
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食品ロスとエネルギーロスの問題を切り口にして、食の不均衡解消、CO2排出量削減、地政学的リスクの減少、そして再生可能エネルギーへのシフトと、多面的に社会問題を解決に導けることをアピールした
出典:東北大学大学院「宏塾」プレゼンテーション資料より
2番手は秋田大学 国際資源学部 資源政策コース 国際協力研究ゼミによる「食品廃棄物を用いた野菜の栽培と貧困削減」。こちらも「食品ロス」問題の解決を目標に掲げたものの、バイオガス発電由来のエコな肥料で作る「持続可能な野菜」をプロジェクトの中心にした。
農業従事者、消費者、発電所、さらにはフードバンクを持続可能なサイクルでつなぎ、食の不均衡と農業の衰退という社会問題を解決に導くとし、1番手とは異なるアプローチでテーマに迫った。
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秋田大学 国際資源学部 資源政策コース 国際協力研究ゼミの太田晶人さん、串田大空さん、村上凌太さん、成田恭歌さん(写真左上より時計回り)
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「持続可能な野菜」をブランド野菜として価値を確立することで築けるサイクル。「持続可能」という言葉を自分たちで再定義し、そこを出発点として展開していったアイデアは、他にはないユニークなものだった
出典:秋田大学 国際資源学部 資源政策コース 国際協力研究ゼミプレゼンテーション資料より
3番手として登場したのは、Team Agridge Project。これまでの2チームとは少し異なり、作物を出荷・運搬する際に発生するエネルギーロスを防ぐ効率の良い共同配送システムを提案した。
農業で地域活性化を試みる学生団体のメンバーらしく、アイデアの出発点は地域農家との触れ合いから。そこで聞いた「共同配送をやりたくても連携が難しい」「スケジュール管理がうまくできない」という悩みから、高齢者目線でのフォロー態勢を組んだ、直感的に使いやすいWebシステムを構築。民間デリバリーサービスとの連携も組み込み、配送コストとエネルギー消費を同時に削減することを想定し、実現すれば1農家あたり年間9600円のコスト削減効果があると試算した。
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Team Agridge Projectの清水翼さんと加藤宗一郎さん(写真左から)。2人は横浜国立大学に通う2年生
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普段から接している農家から悩みをヒアリングし、その解決策として構築したビジネスアイデア。ターゲットは都市部の農家なので、都市交通の渋滞緩和にもつながる
出典:Team Agridge Projectプレゼンテーション資料より
4番目となったFridge Food Scannerは、家庭の冷蔵庫内にカメラを取り付け、アプリによる食品管理でフードロス削減につなげるサービス「Fridge Food Scanner」を提案した。
サブスクリプション方式のビジネスモデルにし、不足した食品の自動発注や、冷蔵庫内にあるもので作れるレシピの提案といった付加サービスの可能性も示唆。効率良く冷蔵庫を利用して、家庭から出る食品ロスを減らせば、1家庭あたり年間約9万円の節約にもつながるという内容だった。
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Fridge Food Scannerを提案した早稲⽥⼤学の三上翔太さんと青柳雄大さん(写真左から)。他チームよりも「食」のエンターテインメント性にフォーカスしたプレゼンテーションだった
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Fridge Food Scannerはカメラ販売で収入を得る想定だったが、審査員からは「カメラは無料配布にし、サービスでもうける手法も考えてみては?」とアドバイスも
出典:Fridge Foods Scannerプレゼンテーション資料より
最後の出番となったのはThe middle。「大企業とESG投融資で食料不足を解決!! ミドリムシで動く農業機械『アグレナ』!」は、ユーグレナ(ミドリムシ)を原料としたバイオディーゼル燃料で農機を動かし、大企業による農業運営で日本の食料自給率を改善しようというアイデアだ。
ユーグレナを原料にしたバイオディーゼル燃料は既に実用化されており、軽油と100%代替が可能。現在、実際に使われている農機にそのまま使用できる。こうした取り組みからESG(環境・社会・ガバナンス)投融資による資金調達が可能であり、大企業にも参入メリットがあると主張。結果、食料自給率が向上できると提案した。
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金沢工業大学に通う、The middleの堀凌人さんと保科洸成さん(写真左から)。チーム名の由来を聞くと、「まだ自分たちは中途半端なので」と謙虚
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実際に農業従事者や信用金庫のSDGsコンサルタントにインタビューした動画を入れるなど、その熱意に審査員席からは感嘆の声が漏れた
出典:The middleプレゼンテーション資料より
前回以上に細部まで練り込まれたビジネスアイデアがそろい、審査員席も熱を帯びた。各チームの質疑応答時には、質問だけではなくアイデアの実現に向けた具体的なアドバイスも飛び交った。
182のビジネスアイデアの頂点「EMIRA最優秀賞」決定
プレゼンテーションが終わると、すぐさま審査員と特別審査員による審査が開始。プランごとに審査員同士の熱い意見が交わされた後、ついにEMIRA最優秀賞が決まった。
2021年のEMIRA最優秀賞に輝いたのは、東北大学大学院「宏塾」によるビジネスアイデア「食の不均衡をエネルギーの視点で 食品ロスから食品とエネルギーを」。食品ロスとエネルギーロスの問題解決を同時に行い、複合させることで「食の不均衡」をも解消に導けること。さらに、ビジネスモデルの海外輸出を見据えたという多面性が高く評価された。
大賞を受賞した宏塾の浦田さんは、「大変光栄に思っています。食品ロスを減らすのにエネルギーを使ってしまうなど、とても深いテーマでした。事業を行う際にはいろいろな課題が連動すると感じたので、これからは多面的に捉えていきたいと思います」と、その喜びを言葉にした。
ほか、KADOKAWA賞には「Fridge Food Scanner」、TEPCO賞には「秋田大学 国際資源学部 資源政策コース 国際協力研究ゼミ」、優秀賞には「Team Agridge Project」と「The middle」がそれぞれ選ばれた。
表彰式後、PEPの林教授は総評として、「学生の皆さんがたくさんのアイデアを出してくれたことは、日本の未来にとっても世界の未来にとっても素晴らしいこと。楽しく聞かせてもらいましたし、皆さんの視点にはいつも感動を覚えます」と学生たちを称賛。
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林教授は総評の中で、「大学でオンデマンド授業が増えて寂しい気持ちがある中で、こういう機会が皆さんの研究が一歩進むきっかけになれば」と、学生たちを気遣った
続けて、「『食×エネルギー』というテーマで皆さんが考えたアイデアが社会の中で実現し、日本や世界が変わっていくことを祈念してやみません」と、コロナ禍に負けずアイデアを仕上げてきた学生たちにねぎらいの言葉を掛け、オンラインで行われた「EMIRAビジコン2021 エネルギー・インカレ」の最終審査を締めくくった。
◆アーカイブページはこちら
https://emira-t.jp/bizcon2021/archives/
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text:仁井慎治(エイトワークス) photo:野口岳彦
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