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NFTが切り開く未来

NFTで人材育成・採用を活性化! 変わるWeb3時代の“学び方”

若手人材と採用企業、スポンサーをNFTで結ぶデジタル人材育成・採用一体型サービス「ONGAESHI」とは

Web3時代をけん引するNFT、ブロックチェーン技術を用いて、人材の育成・採用を支援するプラットフォームが今秋より本格始動する。今回は、そのNFTを活用した人材育成・採用プラットフォーム「ONGAESHI」プロジェクトのメンバー、慶應義塾大学経済学部の坂井豊貴教授に、このサービスでNFTがいかに活用されるのかを伺った。
(*ONGAESHIは現在進行中のプロジェクトであり、本文や図表など、本稿で説明されるONGAESHIの内容や仕組みは完全に確定しているわけでなく、今後必要に応じて修正され得る)

デジタル人材不足を解消する切り札

昨今、「ChatGPT」に代表されるAIや、IoTなど先端IT技術の躍進、企業のDX(Digital Transformation)推進が加速し、それらに対応できるデジタル人材のニーズが高まっている。

日本で経済学のビジネス実装をけん引する坂井教授は、ONGAESHIプロジェクトに深くコミット。さまざまな制度設計や、プロジェクトの展開に関わっている。

社会でIT人材への需要が高まる一方、供給は増えていない。新しいスキルを身に付ける“リスキリング”についても、20~30代の若手社会人の82%がリスキリングに実際に払える費用は年間5万円未満だという(「ONGAESHI」プロジェクトチーム調査による)。

こうした中、経済産業省の調査では、日本のデジタル人材は2030年には79万人が不足し、IT・デジタル分野にとどまらず日本企業の国際競争力の低下が危惧される。

「デジタル人材不足も含めた社会課題に、大学はじめ既存の教育機関が迅速に対応できるわけではありません。もう少し学びの選択肢を増やしたいと考えていた最中に出合ったのが『ONGAESHI』プロジェクトでした」

プロジェクトに参加する坂井教授は、まずは人材間競争と企業間競争を通じて、両者を効率的にマッチングさせる市場設計を担当した。

「連帯貢献システムは、海外のサッカークラブの移籍制度から発想を得たものです。採用企業が支払う費用の一部を人材育成に関わった全ての方々へ還元する仕組みです」(坂井氏)

ONGAESHIでは、人材(タレント)と採用企業を結び付ける他、人材向けの教育成果から報酬を受け取る講師、人材育成で報酬を得る教育のスポンサーを結び付ける

資料提供:「ONGAESHI」プロジェクト

ONGAESHIは「連帯貢献システム」で成り立つ。

まず、教育を受けさせたい人=スポンサーが受講権を購入。スポンサーはこの権利を、教育を受けたい人=タレントに貸し出す。そこで育ったタレントが、ONGAESHI内の企業に採用されると、その企業が一定の費用を支払う。その費用の一部は、人材育成へ貢献したリターンのように、スポンサーや講座の講師にまわる。

坂井教授は「教育を受けたい人=タレント、受けさせたい人=スポンサー、教育したい人=講師、採用したい企業を結び付けます。これにより、お金がなくて教育を受けられない人も教育を受けやすくなります。重要なのは、こうした仕組みを寄付や善意だけでまわそうとしないこと。というのは寄付や善意だけだと持続しないんですね。この点、スポンサーにもリターンが生じることは、ONGAESHIの持続可能性を高めます」と話す。

「お金の流れというのは発明になるんです。いまの流れは、人が先にお金を支払って教育を受け、その後に就職してお金を得る。だからお金を支払えない人は、教育を受けられない。ONGAESHIはスポンサーがお金を先に支払ってくれるから、無料で教育を受けられる。そして人が育って、この仕組みの中で就職するとスポンサーにリターンが行く。ONGAESHIはWeb3サービスの大本命だと確信しています」

若いデジタル人材候補にキャリアアップの機会を与えて、晴れて企業に採用された際には貢献金が還元される。

NFTの貸し付け・売買で、デジタル人材育成・採用を促進

ONGAESHIの特徴に関して、坂井教授は「NFTを会員証として使うアイデアはよく聞きます。このプロジェクトでは受講権がNFT化されます。ユニークな試みではないでしょうか」と話す。

スポンサーからタレントへ貸し出す受講権を「ポジション」としてNFT化し、一般的に資金供給が十分でない教育領域へ資金を呼び込む。スポンサーは育成報酬の一部を、タレントは教育と就職を、企業は教育を受けたタレントを得られ、「win-win-win」となる仕組みを実現させる。

スポンサーは購入したポジションNFT(受講権)をタレントに貸し出し。ポジションNFTには過去の所有状況などが記録され、タレントが企業に採用された場合、所有者には連帯貢献金が付与される。こうして「エコシステム」が成立する

資料提供:「ONGAESHI」プロジェクト

ONGAESHIのサービスイメージ。タレントはスマートフォンやタブレットでポジションNFTのレンタル、リスキリング、企業のマッチングを行う ※画面のデザインは制作中のもの

資料提供:「ONGAESHI」プロジェクト

こうした特徴も踏まえ、NFTを活用するサービスに関して坂井教授は「Web3時代のサービスは、“自由に売買できること”が重要」と強調する。

「例えば、これまで電子書籍は他者に売れませんでした。古本屋さんに売ることができない。所有の状態が確立してないんですね。自由に売買できない。ですがNFTだとそれが実現可能となります。ブロックチェーン技術によって、所有の状態が確立するからです。すると自由に売買できるので、電子書籍に資産価値が宿ります。このことの価値は軽視されがちですが、極めて重要です。たとえるなら、他人に売れず流動性のない株や不動産には、ろくに資産価値はありませんよね。その状況が変わるのです」

ポジションNFTの3つの機能。講座は受講権の貸し出しの他、講座の需要が高まった場合、不要になった場合など、権利の売買も可能

資料提供:「ONGAESHI」プロジェクト

Web3を代表するサービスを目指す

今年2月に概要が発表されたONGAESHIは、10月ごろのサービス提供開始に向けてスポンサー、タレント、講師、採用企業の登録を募っているが、坂井教授は「かなりいい反響です。NFTの販売も好調です」と手応えを感じている。

「ブロックチェーンやWeb3ビジネスを手掛ける企業の方々から『真に世に価値を生むサービスになっている』とリアクションいただけるのがうれしいです。ビットコインをきっかけにブロックチェーン技術に注目が集まって久しいですが、いよいよその技術に基づくWeb3の世界が始まろうとしています」

ONGAESHIのサービスイメージ。スポンサーが購入した受講権NFTをタレントに貸し出す画面 ※画面のデザインは制作中のもの

画像提供:「ONGAESHI」プロジェクト

その言葉の通り、今後もONGAESHIのスポンサーを増やすとともに、海外展開も視野に入れつつ情報発信は続けていく。海外においてもONGAESHIのようなプラットフォームの事例は目新しい。

講座の成績や学習履歴データを扱うONGAESHIは、個人情報の管理にもブロックチェーンシステムを活用する予定

画像提供:「ONGAESHI」プロジェクト

「まずはデジタル人材不足に対応するため、ONGAESHIへの参加を学生や社会人、企業へ浸透させ、ゆくゆくはデジタル人材以外の教育、育成、採用にも活用できるサービスへ成長させたいと考えています。

これまでブロックチェーンを用いた幾多のサービスが誕生しては消えてきました。果たしてWeb3というものは実現するのか。私は、ONGAESHIはその大本命で『これでダメならWeb3そのものがうまくいかない』と思っています」と坂井教授は話す。

多くのビジネスパーソンが技術の独自性に注目しながらも、ビジネスモデルへの活用の決定打が生まれずにいたNFTとブロックチェーン。

今後、Web3時代を担う人材を育てるビジネスモデルが、Web3時代の未来を切り開いていくのかもしれない。

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