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ゲーム×エネルギー思考の未来ビジネス

「EMIRAビジコン2026」最優秀賞! エコバッグを使うのが楽しくなる育成アプリとは

九州大学芸術工学部の学生たちがゲーム思考で考えた省エネ施策

“ゲーム×エネルギー”をテーマに開催された「EMIRAビジコン2026 エネルギー・インカレ」。最高賞のEMIRA最優秀賞に輝いたのは、ポイントカード機能付きの専用エコバッグを購入するとプレイ可能となるキャラクター育成ゲームアプリ。受賞した九州大学芸術工学部 芸術工学科 メディアデザインコースの学生チーム「MD」のメンバーに着想の詳細を聞いた。

買い物でのうっかりがアイデアの始まり

今、ゲームデザインの要素や仕組みをビジネス、教育といったゲーム以外の領域に応用した「ゲーミフィケーション」や、遊びを通して学びを得られる「エデュテインメント」(教育:Educationと娯楽:Entertainmentを組み合わせた造語)が注目を集めている。

※ゲーミフィケーションに関する記事:掛け算で“行動変容”を! EMIRAビジコン2026テーマ「ゲーム×エネルギー」への期待

こうしたゲームや遊びの要素を取り入れることで、例えばカーボンニュートラル社会の実現や地方創生といった社会課題に貢献することはできないか──。ゲームが生活の一部になっている現代ならではのテーマに、全国の学生から、さまざまなビジネスアイデアが寄せられた。

廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの課題を解決するために、2020年7月1日より全国で義務化された、プラスチック製レジ袋の有料化。施行から5年が過ぎた現在、多くの消費者が「エコバッグ」「マイバッグ」と呼ばれる買い物袋を持参することで、エネルギー削減に貢献している。

しかしバッグを持ち歩くことを忘れ、買った商品をむき出しのままで持ち帰るという経験をした人も少なくないはず。MDのメンバー、末永千絢さんもその一人だ。

「買い物へ出掛けたとき、いつも携帯しているエコバッグを自宅に忘れてしまったのです。『あっ、忘れた!』って買った野菜を手で持って帰りました。そのときは困ったんですけど、ふと『何か忘れないようにするアイデアはないかな?』と考え始めました」

ビジコンへの提案を目指し、末永さんは学内で仲間を募りチームを結成。「MD」は、所属する九州大学芸術工学部 芸術工学科 メディアデザインコースの頭文字から命名された。

大学で多様なメディアを駆使し、「人をつなぐ・人に伝える」デザインを学ぶチームの面々にとって、今回のEMIRAビジコンのテーマは、日ごろの学びの成果が発揮できる機会となった。

チームMDからプレゼンに登壇した3人。左から末永千絢さん、中島 優さん、太田 響さん

「僕らが所属するメディアデザインコースは、映像だったりゲームだったりと、幅広い分野にまたがっていますが、デザインの勉強が基本なので、スライドのデザインやゲーム自体のシステムのデザインといった部分に、普段の学びを反映できたと思います」(太田さん)

そうして誕生したのが、レジ袋購入の抑制と、エコバッグの継続的な利用を推進するアプリ「TSUKUMO(ツクモ)」のビジネスアイデアだ。

「最初に、ユーザーはポイントカード機能が付いた専用エコバッグを購入しアプリに登録します。買い物時に、専用エコバッグのバーコードを提示するとアプリにポイントがたまる仕組みです」(中島さん)

「アプリ内ではエコバッグがモチーフのキャラクター『つくも』を育てる“放置型育成ゲーム”が楽しめます。ポイントがたまると『つくも』が成長し、ポイント還元率が高まり、一定レベルごとに現実のお買い物で使えるクーポンが配布されたりします」(太田さん)

ライバルチームからも「遊んでみたい」と好反応

ユーザーは、ポイントカードを使用するために、自然とエコバッグを忘れず持ち歩くようになり、キャラクターの成長とクーポン配布を目的とした長期使用にもつながる。

「主な導入先はスーパーマーケットを想定し、収益源はエコバッグ販売と『つくも』との会話の中で登場する広告費です。店舗側には、アプリ内のアンケートによる顧客データの獲得、レジ袋とポイントカードの一体化でレジ応対が軽減されるメリットが生まれます」(末永さん)

「TSUKUMO」のプレイ画面イメージ。エコバッグをモチーフとしたキャラクターがかわいらしい

プレゼンでは、日ごろからデザインを学んでいる彼らが作成した、シンプルで分かりやすいスライドや、長く愛用されてきた物品には神や精霊が宿るという日本古来の伝承“付喪神(九十九神)”からヒントを得た「つくも」が一定の会計ポイントによって、赤ちゃんの状態から成長していく過程などを紹介。審査員のみならず、最終審査に参加した他チームにも「『つくも』を育成してみたい」という期待感が生まれていた。

アプリを介したアンケートによる顧客データ分析や広告展開にはじまり、スーパーやコンビニエンスストアといった小売店側のメリット、エコバッグ利用動機のきっかけとなるエネルギー削減、そして同じビジネスモデルを適用してのマイボトル利用運動など、アイデアのさらなる広がりをしっかりとイメージできるプレゼンが高評価につながり、今回の受賞に結び付いた。

エコバッグ、アプリ、ゲームを掛け合わせたエコバッグの利用推進、長期利用を促すサービスという斬新なビジネスアイデアを企画・プレゼンし、EMIRA最優秀賞に輝いた

プレゼン直後には、審査員から「ウサギに見える『つくも』の顔が、実はエコバッグなのがいい」という評価に加え、「セルフレジとの連携も考えられるのでは」など、さらなるビジネスアイデアへのヒントがメンバーに送られた。

EMIRA最優秀賞の贈呈では、早稲田大学政治経済学術院の下川哲教授が「アイデアの目的とゲームのキャラがしっかりマッチしていたということ、ビジネス性も期待できるというところを高く評価しました」と講評を述べた。

地域での取り組みでアイデア実現の可能性も

今回、チームMDは初のビジネスコンテスト参加で最優秀賞を獲得した。

「信じられないという気持ちが大きいですが、時間をかけてチームの全員で積み上げてきた成果だと思っています」(中島さん)

「最優秀賞をいただけることが本当にうれしくて。最後の1、2週間は、結構みんなギリギリまで粘って作ってくれた分がしっかり実ったなと感じています」(末永さん)

「素直にうれしいですね。自分たちが力を入れていたゲームの部分が講評でも評価され、狙い通りにいったのかなと感じています」(太田さん)

チームの結成は、末永さんが主導だった。

「“ゲーム×エネルギー”というテーマだったので、ゲームに詳しい人を集めようと思って声を掛けました。顔見知り以上の同じ研究室の仲間という関係性の中で、テーマに合う人を探してスカウトしました」(末永さん)

EMIRA最優秀賞を受賞直後、複数メディアの取材に臨む3人

彼らのアイデアの中でも、ゲーム性の高さは多くの審査員の好評を得た。

「キャラクターなどのデザインは私が担当しました。キャラクターを褒めていただいたのは、素直にうれしかったですし、自分の強みがゲームのデザインの部分なので、そこがしっかり出せたのは良かったです」(末永さん)

その一方で、ビジネス、そしてエネルギー面でのアイデアには、若干の不安を感じていたという。

「ビジネス面やエネルギー面がまだ弱いというのは、書類審査のフィードバックでいただいていました。自分たちの専門分野でもあるデザインとは異なり、学んでいない分野でしたが、自分たちなりのロジックで質問には答えられるよう、資料を強化して、今日の最終審査に臨みました」(太田さん)

「“ゲーム×エネルギー”というテーマを、どうやってゲーミフィケーションに落とし込むか、というところから始めました。ビジネスモデルとしても、店舗側に協力してもらうことが前提になっていますので、その方にどんな形のメリットが与えられるかというのを考え、その上でゲーミフィケーションやキャラクターを使うという特徴を生かして、アプリ内広告やアンケートを取るといった方法を考えました」(中島さん)

今回、EMIRA最優秀賞を獲得したことを機に、アイデアの実現も夢ではないと感じた3人。

「地域で実験的に導入していくのが最初の一歩になるかなと思うんですね。そうなった場合、私たちのグループは、ビジネス面が少し弱いので、九州大学のビジネスに強い人たちや別のグループと協力しながら地域で取り組んでいけたら実現する可能性もあるのかなと思います」(太田さん)

「このアイデアを実現するには、人手も不足しています。ビジネスと向き合える専門的な人材であったり、チャット機能とかもやりたいと考えていたので、もっと複雑な情報のやりとりができる人材であったり、エコバッグの形状といった部分でプロダクトを作れる人材だったりと、それぞれのプロフェッショナルが必要になっていくのかなと思いました」(末永さん)

「実現を視野に入れるとしたら、地域の方々の協力に加えてスタートアップ企業との協働開発など、何か勢いがつくようなことがあればいいなと思います」(中島さん)

現代に生きる人々、中でもこれからの社会を担うZ世代には「あって当たり前」「生活の一部」となっているゲーム。

そのゲームをゲーミフィケーションという形で、エネルギー削減という社会課題へ軽やかに融合させたMDのメンバー。

彼らの柔軟な思考から生まれたアイデアが、より良い未来を築いていくはずだ。

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