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JAXA×トヨタ×ブリヂストンで有人月面探査車を開発!国際宇宙探査ミッションにチャレンジ

2029年の打ち上げを目指して、有人月面探査車(有人与圧ローバ)開発を加速

史上初となるブラックホールの撮影や、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」に人工クレーターを世界で初めて作るなど、最近は天文学や宇宙に関する話題に事欠かない。そんな中、コストや技術的な問題から1972年のアポロ17号以降行われていなかった有人月面探査も、NASA(米航空宇宙局)の新プロジェクトによって再開される日も近いのではとささやかれている。その来たるべき時に向けて、探査車開発プロジェクトを始動させたJAXA(宇宙航空研究開発機構)とトヨタの取り組みをご紹介する。

日本の技術力を結集したチームジャパンで未知なる国際宇宙探査に挑戦

1969年にアポロ11号で宇宙に飛び立ったニール・アームストロング船長が、人類で初めて月面に降り立ってからおよそ50年。今、米国を中心に有人月面探査を目指す動きが活発になっている。

NASAが現在計画中の「月軌道プラットフォーム-ゲートウェイ(以下、ゲートウェイ)」構想は、宇宙飛行士が再び月面へと降り立つべく、2026年までに地球と月の中継地点となる新たな国際拠点の小型宇宙ステーション、すなわちゲートウェイを月の周回軌道上に建設するというもの。そこから宇宙飛行士を月に送り込む計画で、2030年代にはゲートウェイを経由して有人火星探査の実施も目論む壮大な計画だ。

日本でも最近、小惑星「リュウグウ」へのタッチダウン(着地)、それに続いて探査機「はやぶさ2」が「リュウグウ」に人工のクレーターを作る衝突実験に成功するなど、世界初となる試みがニューストピックとなっている。

この「はやぶさ2」のような無人探査は、ゲートウェイ構想で宇宙飛行士を月面に送り込む段階になったときのいわば布石といっていい。有人探査の実現には無人探査との協調は必要不可欠であり、日本をはじめ各国が研究のしのぎを削る理由はここにある。

有人月面探査車(有人与圧ローバ)のイメージ動画

そうした中、JAXAとトヨタは3月12日、国際宇宙探査ミッションでの協業の可能性を検討していくことについて合意したと発表。

その第1弾として、かねてより共同研究が進められている月面での有人探査活動に必要なモビリティ「有人月面探査車(有人与圧ローバ)」開発を加速させる方針で、2029年の打ち上げを目指していくという。

完成に向けて、各種の検討・構想イメージが進められている有人与圧ローバのイメージ図。コンセプト案では、全長6.0m×全幅5.2m×全高×3.8mとマイクロバス約2台分の大きさに相当し、燃料電池で稼働する。居住空間は4畳半ワンルーム程度の13m2を確保し、通常2名が乗り込んで月面を移動する想定。緊急時には4名まで滞在が可能となる

現在、有人与圧ローバ ミッション構想では2機のローバを同時開発し、2029~34年にかけて月面5カ所の探査を順次実施していく予定だ。そして、1カ所ごとに探査期間を42日と設定し、その中でローバには1万km以上の走行を課すことになるという。

しかし、目標達成のためには、舗装された路面などが一切存在しない月面を安全に走行するという技術課題に加えて、輸送できる燃料が限られる状況下でいかにローバを効率的に動かすのか、エネルギーをどう確保するのかといった問題も当然存在する。

そこでトヨタは、エネルギー問題の解決策として次世代燃料電池車(FCV)技術を用いて、水素と酸素の満充てん状態で1000kmの走行を可能にするという計画を打ち出した。

有人与圧ローバ ミッション構想では、1カ所の探査終了後、宇宙飛行士はゲートウェイへ帰還し、ローバは次の探査場所へと自動運転で向かう。ローバの移動完了後に再びゲートウェイから宇宙飛行士を送り出し、有人探査を再開する計画だ

実は宇宙において燃料電池をエネルギー源に用いるというのは新しい話ではなく、1965年のジェミニ計画以降、アポロ計画やスペースシャトルでも利用されてきた。

そもそも燃料電池の仕組みは、“水の電気分解”とは反対に“水素と酸素を反応させることで発電し、水を排出する”というもの。

燃料自体が持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、発電ロスが少なく発電効率が非常に高い発電方法だ。また、燃料はどちらも気体であるため、タンクに入れておけば、エネルギーを長期間にわたって保存したり輸送することが可能となる。

有人与圧ローバの燃料タンク積み替えイメージ

こうした特徴を踏まえて、燃料電池は燃料の限られる宇宙空間におけるエネルギー源として最適と考えられている。

構想中の有人与圧ローバでは、燃料となる水素と酸素は地球から輸送し、タンクを交換しながら持続的な走行を目指していくという。また一方で、発電によって排出される水は冷却水のほか飲料水としても有効活用できるので、無駄がないのも大きい。

寺師(てらし)茂樹トヨタ自動車取締役副社長は、今回のプロジェクトに参加する意義の一つとして「もし今回のミッションで月に水資源が発見され、将来的にその水資源が活用できるならば、宇宙で安定的にエネルギーを蓄えて利用することも可能になる。太陽光発電で作った電気と月の水で電気分解を行い、酸素と水素として蓄える。それをもって燃料電池で発電し、排出された水は生活用水や燃料生産に用いる。このサイクルは地球での水素社会実現に向けた一つの雛形になり得る」とコメントしている。

月の公転周期は約27日となっているため、おおよそ昼間が2週間続く。そこで走行以外に必要な電力は太陽光発電を利用してまかなう予定だ

各国の熾烈な競争が行われている国際宇宙探査を勝ち抜くには、日本の技術力が集結し、一丸となって取り組むことがマストとなる。そうした中、4月11日にはブリヂストンの有人与圧ローバ開発への参画が発表された。

これまでにもローバに装着する接地体(車でいうところのタイヤ)について、JAXAと共同検討を実施し、トヨタとは技術パートナーとして連携していたブリヂストン。正式にメンバーに加わったことで、有人与圧ローバの技術課題の一つに挙げられている“月面への接地”の解決に向けた開発が加速しそうだ。

具体的には、これまでに同社が培ってきた地球上のあらゆる路面や走行に対する知見と技術力を生かし、月面で接地体が果たすべき4つの役割(重量を支える、駆動力・制動力を伝える、方向を転換・維持、路面変化に追従)を実現するしなやかで、かつ強じんな接地体の開発にチャレンジ。本ミッションに貢献していくという。

今後もさらなるメンバーを加えて、世界規模ならぬ宇宙規模で活躍するチームジャパンの未来に期待が膨らむばかりだ。

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