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農業用水路が発電所に!国産らせん水車が岩手県で国内初導入

三枚羽スクリュー構造で高効率な発電を実現

環境問題や地球温暖化の影響を受けて、CO2を排出しないクリーンエネルギーへの転換期を迎えている昨今。私たちのエネルギー事情は今後大きく変貌することは間違いない。そうした中、日本が豊富に有する“水”を今以上に有効活用するべく、これまで発電には不向きとされていた農業用水路を使った水力発電システムが登場した。岩手県で運用が開始された、水力発電の新たな可能性を切り開く取り組みの詳細をご紹介する。

小水力発電のネックである発電コストの問題を解消

今後ますます需要の増加が見込まれる再生可能エネルギー。太陽光や風、地熱など自然界に存在するエネルギーは、発電の際にCO2を排出しない上、石油や天然ガスなどの化石エネルギーとは異なり、国内に豊富に存在する。持続可能な社会を実現するためにも必要不可欠といえる。

こうした再生可能エネルギーの利用は最近突如として始まったわけではなく、日本では例えば水力発電などが古くから活用されている。

水力発電は大まかにいえば、水が高いところから低いところに流れる時の位置エネルギーを利用し、水車を回転させて発電する方法のこと。そのため、水力発電所のほとんどは高低差のある山間部に設置されており、豊富な水資源に加えて、起伏に富んだ列島の地形はうってつけといえる。

また、太陽光や風力といった他の再生可能エネルギーが自然条件によって発電量を大きく変動させるのに対し、水力は渇水を除いてそうしたリスクは小さい。つまり、水力発電は一度発電所を造ってしまえば、長期的かつ安定的に電力を得ることができるのだ。

ダムおよび水力発電所は、社会科見学や観光地化した施設としてなじみ深い発電施設といえる

(C)haku / PIXTA(ピクスタ)

現在、日本の水力発電において主力を担うのは、ダムにためた水を放流することで発電するタイプで、水路式、ダム式、水路+ダム式がある。大きいもので最大出力100万kWを超える発電容量・能力を有する水力発電は、戦後日本の高度経済成長期を支える一翼を担った。

しかし、建設には莫大なコストがかかる上、河川をせき止めることから水質の悪化や生態系の変化を生むなど自然環境への影響が懸念される。

そこで近年、注目を集めているのが“小水力発電”だ。

ダムのように河川をせき止めずそのまま利用するため、環境配慮型の水力発電といわれている。しかし、小水力発電は小規模な河川を利用するため、設備投資額に対して発電量が小さく、発電コストが割高になってしまうという課題があった。そのため、小水力発電の普及は、いかに低コストでエネルギー効率よく発電できるかが鍵となる。

商用として国内に初めて導入された国産らせん水車

そうした中、八幡沢発電所(岩手県一関市)において、農業用水路を活用した日本初の国産らせん水車が4月10日より運転を開始した。

らせん水車の開発を手掛けたのは1946(昭和21)年の創業以来、国内外の水力発電事業に携わってきた日本工営株式会社(東京都千代田区)。農業用水路はこれまで十分な発電量を確保できなかったため、農業用水路は発電に不向きとされていたが、今回開発された発電システムでは低落差の水資源の有効活用を可能にした上、低コストで運用できるようになった。

日本工営のらせん水車への取り組みをまとめた動画

同社のらせん水車は、特性として
(1)三枚羽が連続するスクリュー構造としたことで低落差でも効率的な発電が可能
(2)シンプルな構造のため大規模な設置工事が不要で、設置工事期間の短縮や建設コストを削減
(3)枯葉や刈草などは羽根の間を通り抜けるため、ゴミなどの除塵作業が不要
(4)水質をクリーンに保つオイルレス軸受を使用
といった点が挙げられる。

地域の農業用水路の維持・管理を担い、八幡沢発電所を運営する照井土地改良区では、かねてよりこうした農業用水路に適したらせん水車の特徴に着目。既に導入済みの海外製らせん水車と比べて維持管理コストの改善が期待できることから、同地区2台目のらせん水車として国産らせん水車の採用に踏み切った。

八幡沢発電所に導入されたらせん水車は、直径2×長さ9.6(m)。最大出力は19.9kWで年間11万2759kWhを発電。これは一般家庭31世帯分に相当する

日本工営は今回の案件を通じて、「国産らせん水車の機能や魅力を発信し、再生可能なクリーンエネルギーである小水力発電の導入促進、また農業用水路の維持管理の負担軽減に貢献していきたい」という。

また現在、日本では企業や研究機関によって、より小さな水流から発電するマイクロ水力発電システムなど“水”の有効活用に向けた研究が進められている。
※リコーが開発中のマイクロ水力発電システムに関する記事はこちら

今回のようなアイデアをこらした発電設備が、使われていなかったエネルギーを資源に変える日がやってくるかもしれない。

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