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20年以上保存可能な電池登場!カギは電解質の不活性化にあり

水分をきっかけにエネルギーを供給!新発想のタフネス電池

「20年以上保存できる電池を開発」と聞いて驚かない人は、自宅や会社に保存してある電池をチェックしてみよう。なぜなら、電池の使用期限が過ぎているかもしれないからだ。一方、そんなの気にしていられないしわざわざ確認するのが面倒という人や防災意識の高い人にオススメなのが、シンガポールのスタートアップ企業が開発した究極の保存用電池・JAW Battery。20年以上の保存期間を実現し、「いざ」というときに使える可能性を飛躍的に向上させた新しい電池の仕組みとは?

今すぐ使わない電池を保存しておくという選択肢

いつ起こるか分からない不測の事態・停電。万が一に備え、電池を備蓄している人も少なくないだろう。

しかし、自宅にある電池の使用推奨期限は確認しているだろうか?

食べ物に賞味期限があるように、実は電池にも使用推奨期限というものがある。日本工業規格(JIS)の定義では「その期間内に使用を開始すれば電池は正常に作動し、JISに規定する持続時間等の性能を満足する期間」とされている。

電池の品質にもよるが、マンガンでは製造年月日から約2年、アルカリでは約5年(いずれも単三電池の場合)が一つの目安だ。最近では10年保存できる高性能なアルカリ電池も普及し、長期間保存しておきたいという利用者のニーズに応えている。

電池には必ず記載のある使用推奨期限。必ず一度は確認しておきたい

では、使用推奨期限を過ぎるとどうなるのか?

電池は少なからず自然放電してしまうため、電池容量が低下。いざというとき、使い始めてすぐに電池切れを起こしてしまうケースが考えられる。また、液漏れの可能性が高くなり、使用に危険が伴うこともある。いずれにせよ、停電などの緊急時には避けたいシチュエーションだ。

こういった問題を解決してくれると、クラウドファンディングサイト・Kickstarterで話題になっている電池がある。それがシンガポールに本社を構えるスタートアップ企業・Jaw Batteryが開発に成功した、20年以上保存しても使用できる電池「JAW Battery」だ。

JAW Batteryが20年以上の保存に耐え得る鍵は、電池(電解質)を不活性のまま製品化すること。通常、電池は出荷された段階ですぐに利用することが可能なのだが、その反面、製造された日から5年や10年といった使用推奨期限が生じてしまう。

一方でJAW Batteryは、あるひと手間を加えない限り利用することができない状態、つまり電気を帯びていない不活性のまま出荷するため、20年以上の保存が可能になるのだという。

そのひと手間も、電池をひねって水の中に約1分間漬けるだけ、といたってシンプル。内部に水分が充填されることで、電池(電解質)を活性化する仕組みだ。

Kickstarterで紹介されているJAW Batteryの概要動画(上)と画像(下)。このほか、コメディタッチの動画も紹介されている

開発者によると、牛乳やお茶のほか、尿でも活性化させることが可能だという。災害時、飲み水はとても貴重な存在となるため、あらゆる水分で活性化できる点も高く評価されている。

同社でJAW Battery開発のプロジェクトがスタートしたのは2008年。インドネシアや中国で起こった自然災害の報道を受け、災害へ向けた準備が何より重要だと感じたからだという。

当時は技術的に不可能だと考えられていたが、実験を重ねることで電解質から水分を取り出すことに成功。そして、乾燥した電解質を水分によって活性化させるためのシステムを設計できたことで製品化が現実的となった。ちなみに、それぞれの技術は特許を取得している。

左上から時計回りに並ぶ試作品。最初は蒸留水を使い、小さなLEDライトをつけるところからスタートした

さらに、電極をカスタマイズすることで、市販のアルカリ電池(1.5V)より約20%増の連続使用時間を達成。現段階で開発に成功しているのはAAサイズ(単三電池)のみだが、AAAサイズ(単四電池)と9V電池(角型電池)も開発の最終段階に入っているという。

気になる価格は、4本パックで10シンガポール$(約800円)から(HPはこちらwww.jawbatteries.com)。日本への配送は7月以降を予定している。

理論的には曲げたり大きくしたりするなど、さまざまな形状の電池を作れると話す同社。上記のAAAサイズや9Ⅴ電池のほか、今後は水が入ることで電源が起動して動く子ども向け玩具やヘリコプターから投下できる緊急用バッテリーの開発に着手する予定だ。また、海に投げ入れることでバッテリーを起動させる、緊急用ボートなども構想にあるという。

長期間の保存に耐えて水で活性化する電池が、公共施設や各家庭に備えられる日も近いのかもしれない。

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