1. TOP
  2. トピックス
  3. 新型の高容量電池が登場!?全固体型アルミニウム空気二次電池の開発に成功
トピックス

新型の高容量電池が登場!?全固体型アルミニウム空気二次電池の開発に成功

身近な金属「アルミニウム」×「空気」をエネルギーにした近未来型二次電池の誕生

最先端の二次電池(蓄電池)技術において重要な研究対象となっている「固体電池」と「空気電池」。その2つが融合したのが今回紹介する兵庫県の化学メーカー・冨士色素が開発した全固体型のアルミニウム空気二次電池。現在、二次電池の主流となっているリチウムではなく、アルミニウムに着目した新たな研究だ。リチウムイオン電池の次に量産化されるかもしれない、未来の新技術を紹介する。

繰り返す電池の覇権争い!新しい二次電池の主役となるのは…

世界最古といわれる「バグダッド電池」──。その歴史は約2000年以上も前とされている。

しかし、現代の乾電池の原型が開発されたのは、今からわずか131年前。以降、電池は急速に進化の一途をたどってきた。

まず普及したのは、使い切りタイプの一次電池。アルカリやマンガンなど、現在でも数多く使用されている、いわゆる「乾電池」だ。その後、充電して繰り返し使える二次電池が登場すると、電池の開発争いはその方向へと移行した。

さまざまなタイプが使われている電池。わずか約130年の間に開発が繰り返されてきた

初の二次電池は、ニッケル・カドミウム電池。1960年代に製品化され、幅広い用途で使われていた。しかし、カドミウムが有害物質であることに加えて容量が小さかったこともあり、取って代わるようにして作られたのが1990年に量産化されたニッケル水素電池だ。

一方、1991年に量産化されたのが、リチウムイオン電池。現在、スマートフォンやパソコン、電気自動車などに幅広く使われている電池だ。

かつては放電しきる前に充電すると電圧が下がる(メモリー効果)問題があったニッケル水素電池。しかし、三洋電機(当時)が開発した「eneloop」(現・Panasonicブランド)でその課題もクリアした

それぞれに強みと弱みがある2つの二次電池。両者が量産化されてから約30年を迎えようとしている今、新たな2つの二次電池の量産化に向けた激しい開発争いがあることをご存じだろうか?

それが「固体電池」と「空気電池」だ。

すでにEMIRAでは、固体電池と空気電池の開発現場をさまざまな形で紹介している。
※全固体リチウムイオン電池の開発を進める東京⼯業⼤学 菅野了次教授の記事はこちら
※ソフトバンクが参入し、2025年の実用化を目指すリチウム空気電池に関する記事はこちら

簡単に解説すると、これまで正極と負極の間にあった電解液を固体の電解質に替えるのが固体電池。正極の活物質に空気中の酸素を用いるのが空気電池だ。それぞれが小型化や安全性の向上、電気容量を高められるというメリットがある。

そんな中、兵庫県の化学メーカー・冨士色素が開発したのが、両方を掛け合わせた全固体型のアルミニウム空気二次電池だ。

コインセルタイプの全固体型アルミニウム空気二次電池の試作品

現在、各社で進められている固体電池と空気電池の研究では、いずれも電極にリチウムを用いたものが多い。これは、他の材料と比べて高容量化できることが主な要因として挙げられる。

しかし、リチウムには問題点もある。発火・爆発の可能性をもつ不安定な物質であることに加え、需要拡大によって、数十年の間に枯渇してしまう可能性もあるのだ。

そこで、冨士色素が着目したのがアルミニウム。アルミニウム空気電池にした場合、現行のリチウムイオン電池(150~250Wh/kg)の約30~50倍の電池容量(8100Wh/kg)を作り出すことが理論的には可能だという。

リチウム空気電池の理論容量(1万1400Wh/kg)には及ばないが、安全性が高い点や資源的に豊富で安価という点ではアルミニウムに軍配が上がると言えるのではないだろうか。

リサイクルしやすい素材としても知られる金属・アルミニウム。資源量に問題はない

そもそも、高容量であることから、軍などの一部ではすでに活用されているアルミニウム空気電池。しかし、使用していく中で酸化アルミニウムもしくは水酸化アルミニウムが副生成物として沈殿してしまい、電気を発生しなくなるという問題を抱えていた。

つまり、二次電池化には向かなかったというわけだ。

しかし、かねてからアルミニウム空気電池を研究していた冨士色素が、2013年に世界で初めての二次電池化に成功。現在でも性能を高めるための研究が繰り返されているという。

そして今回、開発されたのが全固体型のアルミニウム空気二次電池だ。負極にアルミニウム、空気極(正極)には炭素やチタン系などの材料を使用。電解質にはイオン液体に類似した深共晶溶媒を用い、かつ最適な添加剤を複合化させることで電解質の固体化に成功した。

なお、イオン液体とはイオンのみで構成された100℃以下では液体の塩のこと。第三の液体とも呼ばれ、難燃性の高さや誘電性・安全性に優れることから電解液や帯電防止剤などに使われている。今回の深共晶溶媒はこのイオン液体に非常に似た性質を持ちコスト的にも優れているという。

アルミニウム空気二次電池の概念図

今回、全固体化に成功したことで、従来のアルミニウム空気電池に比べて製造しやすくなり、性能を長期間にわたって安定化させる可能性が高まったという。

ただ現状では、電極と固体電解質の接触抵抗や電解質のバルク抵抗もあり、イオン液体系の液体の電解質を用いたアルミニウム空気電池より容量が少ないのが難点。

化学メーカーであるため本格的な電池製造のノウハウを持たないので、今後は国内外の協力機関と共に実用化に向けた検討を進めていくとのことだ。

これまで、目まぐるしく変わってきた電池の主役争い。数十年後、リチウムに代わってアルミニウムが二次電池の主役になっているのかもしれない。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitterでフォローしよう

この記事をシェア

  • Facebook
  • Twitter
  • はてぶ!
  • LINE
  1. TOP
  2. トピックス
  3. 新型の高容量電池が登場!?全固体型アルミニウム空気二次電池の開発に成功