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電気の力で味をちょい足し! 食べ物の味を操る手袋型デバイスの開発に明大が挑む

味気ない食事も電気味覚でおいしく変化させる技術は、健康分野での活用に期待大

ついつい食べ過ぎてしまう塩分や糖分を多く含んだ食べ物。“昔はどれだけ食べても平気だったのに、最近は高血圧や体重増加など、目に見える変化が気になる”という人も多いのではないだろうか? そうした中、舌に電気刺激を与えることで、塩味や甘味を強めることができるデバイスの開発が、明治大学の研究室で進んでいるという。健康管理や医療分野に使えるのはもちろん、あっと驚く場面での活用も検討されている未来のデバイスを紹介する。

食べ物の味を変える電気味覚とは?

梅雨が明ければ、いよいよ夏本番。男女問わず、Tシャツや水着など体形がわかりやすい服装になることが多いこの時季は、これまで見て見ぬふりをしてきた体のたるみがより気になる季節でもある。

2017(平成29)年度、厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、日本人男性の約30.7%、女性の約21.9%(いずれも20歳以上)が肥満状態にあるといわれている。

ちなみに、ここでいう肥満状態というのはBMI(ボディマス指数)の数値が25以上。BMIは、体重kg÷(身長×身長m)で算出できる。最近は体組成計などで簡単に計測できるため、自分のBMIを把握している人も少なくないだろう。

しかし、自らの肥満状態を把握しながらも、減量に向けていざ行動に移せる人は一握り。ここ何十年にわたって、テレビや雑誌で「ラクして痩せる」特集が組まれているのがその証拠ともいえる。

肥満を放っておけば、糖尿病や高血圧などの生活習慣病にかかるリスクが高まるほか、重篤な病気になる可能性も増加。食事制限がかかり、自分の食べたいものが食べられなくなるという事態を招く可能性もある。

そんな中、ダイエットや健康維持に一役買いそうな研究が、明治大学総合数理学部の宮下芳明研究室で進められている。

それが、なんと“食べ物の味を変える手袋”だ。

これは、宮下教授と同学科3年の鍜治慶亘さんが、ことし6月に東京大学で開催された「日本バーチャルリアリティ学会 第1回神経刺激インターフェース研究会」で発表したもの。

食べ物の味を変える手袋のキーワードは、「電気味覚」と「ウェアラブル」にある。

そもそも電気味覚とは、舌に電気刺激を与えた場合に感じる塩味や酸味などのこと。元来、味覚障害が疑われる人に対する医療行為の一つとして、微弱な電気を舌に流してその有無を確かめるために活用されてきた。

ここに着想を得たのが同研究室。料理に使われる塩の使用量を減らし、その分を電気味覚で強めるというアイデアだ。

まず、同研究室卒業生の中村裕美さんが在学中に作製したのが、柄の中に電池を内蔵した電気味覚フォーク。フォークが舌に触れると、舌、腕、手、フォークの柄と電気の回路ができる仕組みだった。

図のような回路によって電気味覚が与えられる。これは、電気の発生源がフォーク、または手袋でも同じ原理となる

そして、この電気味覚フォークの進化系が、今回発表された食べ物の味を変える手袋だ。

手袋の人差し指に電極が取り付けられており、金属製のスプーンやフォーク、コップなどを介して舌に電気味覚を与えることが可能。人差し指の位置で、電気のオンオフや電気味覚の強弱をつけることができるという。

食べ物の味を変える手袋の試作品。今後は見た目の改良点が加えられていく予定だという

また、ウェアラブル端末にしたことで、これまで難しかった手づかみで食べるものに対しても電気味覚を与えることに成功。

バナナやイチゴなど、主に果物を食べる場面が想定されている。

健康分野はもちろん、意外なシーンでの活用法も

塩味や酸味、苦味のほか、甘味も増幅させることができるという電気味覚。実用化された場合には、さまざまな場面での活用が考えられる。

まずは、健康・医療分野。

先の国民健康・栄養調査によると、日本人の1日当たりの食塩摂取量(食塩相当量)は男性10.8g、女性9.1g。しかし、WHO(世界保健機関)によると、5g未満にするのが望ましいとされている。つまり、日本は塩分摂取量がかなり多い国に当てはまる。

そこで期待されているのが、日常生活に電気味覚を取り入れること。塩分を減らすと味気ない食事になってしまいがちだが、電気味覚で塩味を強めながら食事を楽しむことで、ストレスなく健康を維持することができる。

もちろんこれは、甘いものを控えなくてはいけない食事制限がある人やダイエットにも応用可能だ。

たとえば、甘い飲み物が手放せない人。清涼飲料水に多量の砂糖が含まれているというのは有名な話だが、ついつい日常的に飲んでしまう人も多いのではないだろうか?

しかしWHOによれば、肥満などを予防するために摂取してよい一日の糖類は約25gとされている。一般的な缶コーヒーに約10~15g、500mlの炭酸飲料に約40~50g含まれていることを考えると、いかに自分が多くの糖類を摂取しているかが分かるだろう。

もし日常的に飲む缶コーヒーを微糖タイプに切り替えることができれば、糖類は約1~5gに減らすことが可能。電気味覚で甘味を強めれば糖類をカットした状態で満足いく甘味を感じることができ、無理なくラクしてダイエットや肥満予防に取り組めるというわけだ。

次に、エンタメ分野。

今後、電気味覚でもっと細かい味の表現ができるようになれば、映画の世界で出されているような食事や飲み物と同じ味をバーチャルで楽しむことが可能に。映画館では風や香りといった体感型(4D)の演出が増えているが、そこに電気味覚を用いた”味”が追加されるかもしれない。

また、有名シェフの味を再現した電気味覚端末を販売することも考えられる。これまでレシピといえば文字や写真だけの情報だったが、そこに電気味覚の”お手本”を付け加えるのだ。

とはいえ、電気味覚はまだまだ研究途中の分野。食べ物の味を変える手袋も試作段階であり、今後もさまざまな改良がされていく予定だ。

健康分野のみならず、食の楽しさを飛躍的に向上させてくれる可能性を持つ電気味覚。今後の研究からも目が離せない。

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