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日本初! AIを用いた空調制御システムが名古屋ららぽーとで稼働開始

画像解析や来館者数予測など、AIならではの強みを生かしてCO2排出量削減に挑む

金融業や製造業、そして農業など、幅広い分野で導入が進んでいるAI(人工知能)。海外に比べて日本のAI技術活用は遅れているといわれるが、成長分野であることは疑う余地もない。そうした中、昨年9月にオープンした「三井ショッピングパークららぽーと名古屋みなとアクルス」で、AIを用いた空調制御システムが導入されたという。ビッグデータの解析や画像解析などを行い、無駄のない省エネ運転でCO2排出量削減を目指すこの先進的な取り組みをご紹介する。
TOP画像:(C)天空のジュピター・Job Design Photography / PIXTA(ピクスタ)

まだまだ続きそうな猛暑…悩ましいエアコンの使い方

ことしの夏も終盤戦。二十四節気では8月23日(金)に「処暑」を迎え、暦の上では暑さが引くころとされている。しかし、近年では9月まで猛暑が続くことも珍しくなく、ことしもまだまだ暑い日が続きそうな様相を呈している。

そこで気になるのが、夏の間フル稼働しているエアコンの電気料金ではないだろうか。資源エネルギー庁の推計によると、一般的な家庭の場合、夏の昼間14時ごろに使用されている家電製品全体の消費電力のうち、実に約6割をエアコンが占めているという。熱中症対策として、最近では就寝中にも冷房を使うことが推奨されており、ますます使用時間が延びる傾向にあるのも悩ましいところだ。

また、電気料金と共に気になるのが、地球温暖化の要因の一つとされるCO2(二酸化炭素)の排出量だ。エアコンを使えば使うほどCO2の排出量は増えてしまうわけだが、意外と簡単に削減できることをご存じだろうか?

同庁によると、外気温が31℃のとき、エアコンの設定温度を27℃から28℃に1℃上げるだけで年間14.7kgのCO2削減(9時間/日で試算)に。さらに、フィルターを2週間に1回程度こまめに清掃するだけでも年間15.6kg削減(目詰まりしたフィルター比)できるという。これは、高さ20~30mのスギが1年間で吸収するCO2量約14kgとほぼ同等の結果になる。

エアコンの設定温度を27℃から28℃に上げるだけなら、一般家庭でも簡単に実践できる

経済界でも喫緊の課題とされているCO2排出量の削減。一般家庭より大きな空調設備を使う商業施設や事業所にとっては、来館者や従業員の快適性を保ちつつ、いかにCO2を削減できるかが長年の問題となっている。

そうした中、昨年9月にオープンした「三井ショッピングパークららぽーと名古屋みなとアクルス」で導入された、AIを利用した空調制御システムが話題になっている。従来型の空調システムにAI技術をプラスすることで、年間30%以上のCO2削減が見込めるという。

AI空調制御システムによる3つの特徴とは

同施設は、地上4階建てに200を超える店舗が入り、延床面積が約12万4700m2にも及ぶ大型商業施設。

そのような大型施設の空調を効率よく制御するために、3つのAI技術が取り入れられているという。

まずは“AIによる画像解析”。

人が集まる吹き抜け空間やフードコートなどに設置したカメラで活動量を計測、また館内の別の場所に設置したサーモカメラにより、来館者の服装(半袖、長袖など)を推定。PMV空調制御を行うという。

PMV(Predicted Mean Vote)とは、デンマーク工科大学のファンガー教授が、1967年に快適方程式の導出を発表し、これをベースに室温や平均風速、着衣量など、人体の熱的快適感に影響する6つの要素を基に算出される指標のこと。それらを総合的に判断し、より多くの人が快適になるように無駄なく空調制御を行うものだ。これと合わせ、来館者の年代や性別の構成割合も同時に画像解析し、より省エネルギー性を高めている。

PMV空調制御の概略図。来館者それぞれ暑さの感じ方は異なるが、画像解析により快適性を高めている

次に“AIによる館内人数予測”。

曜日や天気予報、イベントの有無などの各種情報から、AIが来館者数を予測。結果を基に、館内のCO2濃度が基準値に収まる範囲で、最も効率的になるように外気を取り込んでいる。

例えば、休日にイベントが予定されている場合は来館者数が多くなるため、事前に多くの外気を少しずつ取り入れておく。すると、ピーク時に大量の外気を導入する必要がなくなるため、安定した空調設備の運用が可能になる。その結果、外気導入にかかるエネルギーが削減されるというわけだ。

AIを活用した予測連動省エネルギー制御の概念図。来館者数を予測し、効率的な空調運転計画を立案する

そして最後が“AIによるエネルギーの需要予測”だ。

館内の人数予測や外気温湿度、イベント情報などのビッグデータを基に、翌日に館内で使われるエネルギー需要をAIが予測。エアコンの冷媒蒸発温度を最適に制御することで、エアコンの超高効率運転を実現している。

こうした情報を基に空調システムをコントロールする仕組みは日本初の取り組みだという。

AIによってはじき出されたエネルギー需要予測を基に、エアコンの冷媒蒸発温度を可変させている

このAIを使った空調制御の取り組みは、国土交通省により「サステナブル建築物等先進事業(省CO2先導型)」として採択されているプロジェクト。

ららぽーとを運営する三井不動産、設計・施工を手掛けた竹中工務店は共に業界の盟主であり、今後このシステムが全国的な広がりをみせることにも期待がかかる。

これまで経験や感覚に頼っていた大型商業施設や事業所の空調制御は過不足が生じやすく、少なからず無駄にCO2を排出していたことは否めない。AIを用いた画期的な空調制御システムが普及すれば、より環境に優しい省エネルギー社会の実現に近づいていくのではないだろうか。

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