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将来は宇宙での利用も!? 日本の最新住宅システムで南極大陸に挑戦

限られたエネルギーを効率的に利用し、快適な住環境を実現

JAXA(宇宙航空研究開発機構)、国立極地研究所、ミサワホーム、ミサワホーム総合研究所は、かねてより共同研究を進めていた「南極移動基地ユニット」を公開。併せて2020年2~9月にかけて南極で実証実験を行うことを発表した。将来の月面探査での活躍も期待される、日本の住宅技術の最新情報をご紹介する。

未来の住宅や月面基地への技術応用を狙う

人口減少や高齢化による職人不足や環境問題、住宅ストック(中古物件)の活用などさまざまな問題を抱えている日本。これらの課題を解決するために、既存技術の発展と新たなイノベーションは建築業界にとっても喫緊の課題といえる。

一方で、JAXAは2015年度に宇宙探査イノベーションハブを立ち上げた。JST(科学技術振興機構)の支援を受け、これまでの宇宙で得た技術を地上に応用しようという考えではなく、地上の技術をいかに宇宙で活用するかに主軸を置いた取り組みを進めている。民間企業と共に宇宙探査に必要な技術と地上における技術で同時にイノベーションを起こそうというものだ。
※JAXA宇宙探査イノベーションハブの構想の基、月面基地建設を見据える星野 健氏の記事はこちら

公開された「南極移動基地ユニット」。1ユニットのサイズは、全長約6、全幅2.5、全高約3(各m)、床面積は約11.82m2。単独のユニットを2基連結することで床面積を約33m2まで拡張できる

そうした中で、エネルギー技術・IoT技術・工業化技術を用いた新たな住宅技術構築を目指すミサワホームと、月面で簡単に有人拠点を造ることができるシステムを構築したいJAXAの思惑が一致。地上における未来志向の住宅や将来的な月面の有人基地への応用を目的に、ミサワホームの提案「持続可能な新しい住宅システム構築」がJAXAの宇宙探査イノベーションハブの研究提案募集(REP)に採択され、2017年より共同で技術開発を推し進めてきた。

とはいえ、いきなり宇宙というフィールドで実験するわけにはいかない。

そこで、宇宙と同様に過酷な環境であり、「簡易施工性」「自然エネルギーシステム」「センサー技術を活用したモニタリング」などの実現目標が共通している南極を実験の場に選定。設営が簡易で長距離移動も可能な小型ユニット「南極移動基地ユニット」を製作し、南極で極地観測などを行う国立極地研究所と共に、2020年2月から9月にかけて南極で実証実験を行う運びとなった。

セルサイクル工法(建築の省力化技術)を採用し、専門的な知識のない作業者でも施工を可能にした「南極移動基地ユニット」ジョイントの様子

太陽光エネルギーの多重利用で高効率に活用

実証実験では、「南極移動基地ユニット」が過酷な環境下において対応できる性能を有しているかを調べるため、さまざまな実証を予定している。中でも注目したいのがエネルギーの活用方法だ。

資源の限られる宇宙ではエネルギー源はほぼ太陽光に限られる。その貴重なエネルギーを無駄なく有効に活用することは必須であり、これは再生可能エネルギーを基に持続可能な社会の実現を目指す地上と共通する課題でもある。

そこで「南極移動基地ユニット」では、太陽エネルギーを最大限に活用する“カスケードソーラーシステム”が採用された。

カスケードソーラーシステムの概要図

具体的には、太陽高度の低い南極に対応するため壁面に配置されたPVモジュール(ソーラーパネル)による太陽光発電に加え、極地の低温と太陽光で暖められたPVモジュール裏面の太陽熱空気との温度差で発電する温度差発電モジュールとを併せて電気パネルヒーターを動かす電力を確保。さらにPVモジュール裏面で暖められた太陽熱は集熱ファンによって温風の熱源としても利用する。

また、床には蓄熱素材を敷き詰め、急な室温の変化を抑える工夫も施された。

「南極移動基地ユニット」の外壁を覆うPVモジュールは家庭用の太陽光発電で使われるものと同一。低温領域で発電量がどう変化するかも実証課題の一つ

窓には二重サッシを採用。外側はポリカーボネートとビル用サッシを組み合わせて堅牢性を、内側は真空ガラスと樹脂サッシを用いて断熱性を担保する

蓄熱素材により室温の変動を和らげる効果も期待できる

さらにエネルギーを効率的に利用するために、室内のCO2を管理するセンサー情報(CO2濃度制御)と連動したデマンド換気システムを採用。室内環境を的確に把握することで換気量を最適化し、エネルギーと熱量のロスの削減につなげている。

デマンド換気システムの概要図

CO2センサーと排気ファンを組み合わせたデマンド換気システム。センサーによる監視で、エネルギーの効率化や室内環境の快適化を図る

現場で実証実験を指揮する61次隊副隊長兼越冬隊隊長の青山雄一氏は、「南極大陸における研究は各国がしのぎを削っている状況で、“今この研究を行えば最先端にたどり着ける”という場合は機動性が重要になってきます。従来は拠点を立てるだけで、2シーズン3シーズン使ってしまうこともあります。もし南極移動基地ユニットが実用化されれば、すぐに観測が始められることができ、大きなメリットになります」と期待を寄せている。

「昭和基地自体も閉ざされた閉鎖空間なので、南極移動基地ユニットを隊員の息抜きにも利用できれば」とリフレッシュ効果にも期待している青山副隊長

さまざまな最新技術が盛り込まれた「南極移動基地ユニット」。

今回得られるデータによっては、私たちが暮らす未来の住宅の形もおぼろげながら見えてくるかもしれない。

そのためにも、まずは南極の地での活躍に期待したい。

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