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世界最小の水力発電!? わずか1滴の水滴から5ボルト超の発電技術を開発

雨水や工場排水など、さまざまな水から給電可能! モニターやセンサーへの活用に期待大

日々目覚ましい進化を続けるIoT(モノのインターネット)化。さまざまなモノがインターネットに接続され、われわれの生活を支えている。IoT化する際、どこから電力を得るかというのがポイントになるが、近年は身近にある微小なエネルギーを活用する事例が増えているという。そうした中、名古屋大学と九州大学でつくる研究グループが着目したのは、わずか1滴の水滴から発電する技術だ。意外にも身近な元素を用いて開発に成功した、注目の技術を紹介する。

聞いたことはないかもしれないが、実は身近な存在?

鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン──。

これら元素の共通点をご存じだろうか?

答えは「必須微量元素」と呼ばれるもので、生命活動に不可欠な元素のこと。生物の体内に微量ながら必ず保持されており、カリウムやカルシウムといった「ミネラル」の中の一部だ。

鉄や亜鉛などは身近なミネラルとして有名だが、銅やマンガンが体内に保持されているというのは少し意外な話。ましてや、モリブデンという元素を初めて聞いた人も多いだろう。

モリブデンとは、原鉱石のモリブデナイトから命名されたレアメタルの一つ。鉄鋼材料の添加材として使用されることが多く、添加すると高温下での強度や硬度が向上することで知られている。

ちなみに、体内では肝臓や腎臓に存在し、代謝や鉄分の働きを高める作用がある。レバーや枝豆、白米に多く含まれ、造血に関わりが強いことから「血のミネラル」とも言われる存在だ。

枝豆の根に存在する根粒菌の中に多く含まれるモリブデン。食物からの吸収率は高いので、意識的に摂取しなくてもよいとされている

体内にも存在し、半導体の基板や溶接用の電極としても使われるモリブデン。

この元素が、近年の研究では電気を生み出す素材としての活用も模索されているという。

名古屋大学と九州大学でつくるグループが開発したのは、モリブデンの上を1滴の水滴が流れるだけで5ボルト以上の電気を生み出す技術だ。

わずかな水滴が流れるだけでエネルギーを生む仕組みは、炭素の層状物質であるグラファイトを1層まで薄くしたグラフェンで起こることが報告されていたが、出力電圧は0.1ボルト程度にとどまっていたという。

わずかな水滴から発電する技術の活用へ

実験に使用されたのは、半導体の原子層材料である二硫化モリブデンだ。

水滴を使った発電装置を作るためには、プラスチックフィルム上に大面積かつ1層の二硫化モリブデンが必要不可欠となる。しかし、従来の成膜技術で製作するのは非常に困難だったという。

そこで研究グループがまず取り組んだのが、原料となる酸化モリブデンを基盤と向き合うように設置し、均一に供給する方法。これにより、大面積化することに成功した。

二硫化モリブデンの成長技術を記した概念図

次いで取り組んだのが、サファイアの基板上で成膜した二硫化モリブデンをプラスチックフィルムに転写する技術だ。

従来は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)フィルムが使われていた転写工程において、ポリスチレンフィルムを支持材料として使用。表面エネルギーの違いを生かして、容易に転写することに成功した。

これまでの工程に加え、プラスチックフィルム上の二硫化モリブデンの両端に電極を取り付けることで発電装置が完成。45°に傾け、その上に数秒ごとに水滴を落として電圧の変化を調べた。

開発した発電装置(上)と水滴から発電するイメージ図(下)

すると、水滴ごとに5~8ボルトの電圧がパルス(短い波形)状に発生することが判明。

さらに、3つの発電装置を直列接続し、3滴の水滴を同時に流すことで15ボルトの電圧が得られることも確認した。

この電圧は、IoTデバイス向け電源として用いるには十分な数字だという。

実際にIoTデバイスを駆動させる電力を得るにはもっとたくさんの水滴が必要だが、1滴当たりの電力としてはグラフェンを大きく上回った。

出力電圧の波形。水滴が流れるたびに電圧が生じているのが分かる

今回の発電装置はプラスチックフィルムから形成されているため、高い柔軟性を誇るのも特徴だ。

これまでは難しかった配管の内側の曲面といった場所にも設置できるため、雨滴から発電する自己給電型の雨量計や酸性雨モニター、工場排水から発電する水質センサーなど、さまざまなIoTデバイスへの応用が期待されている。

環境に存在する熱や振動など、微小なエネルギーから電力を得る環境発電(エネルギーハーベスティング)に注目が集まる昨今。

電池を使用するのではなく、わずか1滴の水滴から発電する技術が未来を変えていくのかもしれない。

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