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宅飲みで飲み過ぎの人に朗報!? 肝臓や腸へのアルコールダメージを緩和する乳酸菌を発見

アルコール依存症の薬や肝機能を助けるサプリメントとしての応用に期待

とても大切なものを意味する「肝心要(かんじんかなめ)」──この言葉を見ても分かるとおり、肝臓は人間にとって非常に重要なものだ。一番大きな臓器であり、体が必要なエネルギーを生み出す働きをも担っている。外出自粛中に宅飲みがブームとなったが、過度のアルコール摂取は健康のためにも控えたいところ。だが、ついつい深酒してしまうのが人間の悲しい性だ。そうした中、バナナの葉由来の乳酸菌に、アルコールのダメージを和らげる効果が発見されたという。愛飲家にとっては商品化が待たれる、話題の乳酸菌を紹介する。
TOP画像(左):koti / PIXTA(ピクスタ)

動物or植物、生菌or死菌……奥が深い乳酸菌

新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、新しい生活様式が推奨される今。アルコールを取り巻く環境も変化しつつある。

外出先での飲酒の機会が減ったことから、自宅で独り酒を楽しむ人が増加。また、インターネットを介したオンライン飲み会を満喫している人も多いという。

そんな宅飲み(自宅での飲酒)をする際に気を付けなければいけないのが深酒だ。「外で飲むよりくつろげる」「ベロベロになってもそのまま寝られるから安心」などの理由で、ついつい飲酒量が増えてしまった経験がある人も多いはず。

一時のブームではなく、今後も文化として定着しそうなオンライン飲み会。深酒にならないよう注意が必要だ

アルコールの分解を行う肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、もし異常があっても表面化しにくいのが特徴。症状が出始めたときには、すでに手遅れといったケースも少なくない。

そうした中、広島大学大学院医系科学研究科の杉山政則教授の研究により、植物由来の乳酸菌がアルコール摂取時に起こる肝機能の低下を抑える効果が発見された。同時に、腸内環境を整えることも証明され、世界中の研究者から驚きの声が上がったという。

今回実験に使用された植物乳酸菌は、ラクトバチルス・プランタルム SN13T(以下、SN13T株)。バナナの葉に由来するもので、胃酸や胆汁酸に対する耐性が高いのが特徴だ。

数nm(ナノメートル/1nmは100万分の1mm)程度の構造まで観察できる走査電子顕微鏡を用いて撮影されたSN13T株

そもそも乳酸菌とは、生きるために必要なエネルギーを得るために乳糖やブドウ糖など糖類(炭水化物)を分解して乳酸を作り出す細菌の総称で、分離源の違いから動物由来と植物由来の2つに大きく分類することができる。

動物乳酸菌は栄養が豊富なチーズや腸管内で見出され、主なエサは乳糖。動物乳酸菌でつくられたヨーグルトやチーズにいる乳酸菌は胃酸と胆汁酸に弱く、生きたまま腸に届きにくいと言われている。

一方、植物乳酸菌は果物や野菜、花などの植物表面に生息し、植物の浸出液やブドウ糖などを食べて乳酸をつくる。栄養が少ない場所に加え、カテキンやタンニン、ポリフェノール存在下でも生育でき、きわめて胃酸や胆汁酸に強いことから生きたまま腸に届きやすい。ちなみに、漬物やみそ、キムチなどの発酵食品からも摂取できる。

なお、生きた菌を生菌と呼び、酸や熱により死滅した状態を死菌と呼んで区別されることがある。

近年では「生きたまま腸に届く」とうたった乳製品が数多く販売されているが、フェカリス菌(人間の体内に元々存在する乳酸菌の一種)のように死滅した状態でも高い効果が得られる菌も存在するなど、人の健康維持には必ずしも生菌がよいとは限らない。

乳酸菌それぞれの特性はまだまだ解明されていないものが多いが、生菌でなければいけない場合もあることを証明したのが今回の研究結果だ。

肝臓と腸の状態、さらに生存率にも違いが

今回の実験では、マウスにエタノールを配合した食餌を与える際、SN13T株の生菌を与えた場合と与えない場合、死菌を同時に与えた場合で生存率の違いを調査。後日、同じ条件のもと追加の実験を行い、2週間後に血液検査などを実施し比較した。

まず、生存率では驚くべき違いが出た。

エタノール入りの食餌と生菌とを同時に摂取したグループでは、食餌のみ(非エタノール)のマウスたちと同様、35日後でも100%の生存率を達成。しかし、エタノール入りの食餌のみのグループや同時に死菌を与えたマウスたちでは、2週間を待たずとして0~10%という厳しい結果となった。

マウスを使った生存率のグラフ。エタノール+SN13T株生菌のグループとエサのみのグループが同じという結果にも驚きだ

同じ乳酸菌株でも死菌は効果がないことを証明した研究チームは、生菌の有用性を別の角度から確かめるべく、新たに用意したマウスを使って血液検査を実施。なお、前段の実験で死菌には効果がないことが判明したため、このフェーズで同グループは省かれている。

検査の結果、肝細胞のダメージを判断するAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/アミノ酸の合成や分解に関わる酵素の一つ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ/肝臓に存在し、肝臓の病気を反映すると考えられている)の数値で、明確な違いが表れた。

食餌のみを与えたマウスのAST値が49(誤差±3)、ALT値が26(誤差±3)であったのに対し、エタノール入りはそれぞれ180と120(いずれも誤差±40)に上昇。それに比べ、SN13T株の生菌を同時に摂取したマウスの値は、それぞれ130と90(いずれも誤差±20)に抑えられたことが判明した。

また、エタノール摂取群では腸内細菌叢(さいきんそう/腸内細菌の集まりのこと。腸内フローラとも言う)の破綻が確認され、腸に悪影響を与える細菌群が増加。食餌のみを与えられたグループと比べ、約590倍を記録した。一方、生菌を同時に摂取したグループでは63倍ほどの増加にとどまり、肝臓と合わせてアルコールの影響を抑制する効果を突き止めた。

栄養素やエネルギーを吸収する腸と、エネルギーを生み出し蓄える機能を持つ肝臓。人間にとって非常に大事な臓器の健康を保ってくれるこのSN13T株。

同研究チームは今後、飲酒が原因で体調を崩した患者のための医薬品をはじめ、日常的な飲酒に伴う肝機能の低下や腸内環境を予防改善するために有効なサプリメントなどの開発を目指すとのこと。「生菌の常温での長期保存性を確立することが目下の目標」と、杉山教授は語る。

アルコール好きの健康を守る、画期的な商品開発が待ち遠しいところだ。

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