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いつでもどこでも手洗いを! 新型コロナウイルスまでも取り除く循環式ポータブル手洗い機が登場

水の循環効率は98%以上! わずか20リットルの水で繰り返し衛生的に利用できる秘密に迫る

買い物を終えた後や公共交通機関の利用後など、外出先のふとした瞬間に手を洗いたくなった経験はないだろうか? 特にことしは新型コロナウイルスの世界的感染拡大を受け、手洗いの需要が非常に高いのは言うまでもない。そうした中、わずかな水と電源さえあれば、あらゆる場所で利用できるポータブル手洗い機が登場したという。独自の水循環技術を生かし、被災地支援も行ってきたスタートアップ企業の新たな挑戦を紹介する。

「水」のインフラがなくても手洗いを可能に

いまだ世界各地で猛威を振るい続ける新型コロナウイルス。アメリカでは感染者数の累計が1000万人を超え、ヨーロッパではこの春以来のロックダウンを実施する国も増えてきた。

日本においては、高いマスクの着用率やソーシャルディスタンスなどの対策が功を奏しているとされている。また、「手洗い・うがい」といった、日常における基本的な衛生管理を重んじる国民性が関係していると分析する専門家の声も多い。

一方、手洗いやうがいを望んでも、気軽に行えない国・地域があるのも事実だ。

去る10月15日の「世界手洗いの日」に合わせてユニセフがまとめた情報によると、世界人口のおよそ40%、約30億人が石鹸や手洗いの設備を自宅に持たないという。

また、43%の学校には石鹸と水で手を洗う設備がなく、約8億1800万人の子供たちが気軽に手洗いできない環境に置かれている。

正しい手洗いをするだけで下痢性疾患を30~48%、急性呼吸器感染症を最大23%減らすことができるという研究結果もあるが、水道を設置するのは容易ではない。

河川や浄水場の整備、水道管の敷設、設備のメンテナンスなど、多額の費用と膨大なエネルギーがかかるためだ。そもそも雨がほとんど降らない地域もあることから、現状の水道インフラを画一的に世界へ広げていくのは現実的ではないとも言える。

そうした中、電源と20リットルの水さえあれば繰り返し手洗いができるポータブル手洗い機が話題を集めているという。

その名は「WOSH(ウォッシュ)」。東京に本拠を構えるスタートアップ・WOTA(ウォータ)株式会社が開発した。

ことし12月に出荷予定のWOSH。安全に利用できるさまざまな工夫が凝らしてある

水の循環技術を生かした事業を展開する同社の設立は2014年。当初はライフラインが断絶された被災地などで繰り返し利用できるシャワーの開発を行い、2016年の熊本地震や2018年の西日本豪雨などの被災地で使用された実績を持つ。

2019年11月には、シャワーを浴びる際に必要な物をパッケージング化した「WOTA BOX」の販売を開始。企業や自治体での導入が進んでいる。

水の循環技術を取り入れ、100リットルで約100回のシャワー入浴を実現するWOTA BOX。屋外のシャワーキットと組み合わせて使用する

その経験と技術をベースにして作られたのがWOSHだ。

驚くほどきれいな水を繰り返しつくる技術

WOTA社の調べによると、国内において「外出先で手を洗いたいのに手洗い場がなくて困っている」と回答した人は約8割。衛生先進国と言われる日本ですら手洗いの場所や機会が不足していることが、ポータブル手洗い機開発の背景にある。

WOSHの直径は約60cmで、高さは約106cm。外装にはドラム缶をアップサイクルして利用することで、循環型社会に貢献する一台に仕上げている。

重さは約60kgながら本体下部に車輪がついており、必要に応じて移動することが可能。コンセントさえあればどこでも設置でき、ポータブル電源でも稼働する。

また、ハンドソープディスペンザーが蛇口横に付属しているほか、正しい手洗いとして提唱されている30秒を天面の光でカウントしてくれるセーフティー・リング機能なども搭載している。

シンプルなデザインのため、場所を選ばずに設置可能。消費電力は平均400W

20リットルの水を繰り返し再利用できるWOSH最大の特徴は、約98%という非常に高い水の循環効率だ。

その秘密は、WOTA社独自のテクノロジーにある。

まず、3種類の膜による水のろ過。

2つの活性炭フィルターとROフィルター(逆浸透膜)の3つの膜を使い、徹底的に不純物を除去している。なお、ROフィルターの目は非常に細かく、孔(あな)の大きさは約1~2nm(ナノメートル)。インフルエンザウイルスの直径が約80~120nm、新型コロナウイルスが約50~200nmといわれているため、万が一感染者が手を洗った場合にもこの段階で取り除くことができる。

その後、塩素添加や深紫外線照射によって、手洗いに適したきれいな状態の水にしていく。循環して使用することを目的としているため飲用は想定していないが、WHO(世界保健機関)の飲料水ガイドラインや各国の飲料水基準に準ずる衛生的な水が繰り返し供給できる能力があるという。

本体左側に取り付けられているのが活性炭を使用したフィルター。その他の消耗品も簡単に交換できる

きれいにろ過された水は、本体上部の蛇口に手をかざすだけで出てくる非接触の仕組みを採用。水質やフィルターの状態は9つのセンサーで常時監視していることから、安全への信頼性も高い。

さらに、WOSHにはスマートフォンの表面を深紫外線で除菌する機能も搭載。手を洗っているわずか20秒間で、99.9%以上を除菌できるという。

日常生活に欠かせないスマートフォンを除菌することで、手洗いの効果を最大限持続させる狙い

ことし12月から出荷予定のWOSHは、一括購入や月々のリースが可能。設置費やフィルターなどの消耗品費が別途必要となる。

なお、人が多く出入りする場所にアルコールを常設していると、1カ所あたり月5万円以上の費用がかかることもあるため、WOSHを導入した方が経済的負担が軽くなるケースも十分に考えられる。

2021年には、日本とアメリカで約1万台の販売を目標としているWOSH。将来的には、難民キャンプや水道インフラが整っていない地域への展開も目指すという。

折しも、新型コロナウイルスの感染拡大によって手洗いの重要性が再認識された今。

必要最低限のエネルギーで手洗いが可能になるWOSHによって、守られる命があるのかもしれない。

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