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省エネ効果は年間146MWh! JR東日本が世界初の鉄道用超電導フライホイール蓄電システムを開発

6月8日より山梨県・穴山変電所で実証試験スタート

年々深刻さを増している地球温暖化を受けて、今後はあらゆる面でよりCO2(二酸化炭素)を排出しない仕組みが求められている。その中で、エコな乗り物の代名詞とされる鉄道の事業者である東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)が、ブレーキ時に失われる運動エネルギーを効率的に活用する省エネシステムの開発を発表した。世界初となる画期的な新システムの詳細を紹介する。
TOPおよびカルーセル画像:JR東日本

回生電力エネルギーを貯蔵するエコな新システム

多くの人が日常的に利用する鉄道──。

自動車など他の交通機関と比較すれば、単位輸送量あたりのCO2排出が少なく環境に優しい乗り物とされる。

しかしながら実際には、動力源に用いる電気をはじめ、消費するエネルギー量は膨大であり、間接的に大量のCO2排出に関係している。

そのため、鉄道各社ではエネルギー消費量を減らすさまざまな取り組みが行われている。

その一つが「回生ブレーキ」だ。

回生ブレーキとは、電車がブレーキをかけた際に失われる運動エネルギーでモーターを発電機として作動させ、電力に変換。架線を介して他の電車に供給することで、効率的なエネルギー利用が可能になる仕組みだ。

回生ブレーキのイメージ

この回生電力エネルギーは同じ変電区間に他の列車がいないと利用できない。そのため、他の列車がいない場合は地上に設置した蓄電池に貯蔵していた。

そうした中、JR東日本が、JR 東日本研究開発センター 環境技術研究所において、鉄道用超電導フライホイール蓄電システムの開発に成功。6月8日より中央本線穴山駅に隣接する穴山変電所(山梨県韮崎市)において実証試験を開始した。

穴山変電所に設置された「超電導フライホイール蓄電システム」。充放電を繰り返しても性能が劣化せず、有害物質を含まない構造で環境負荷が少ないという特性を持つ

画像提供:JR東日本

JR東日本、山梨県、公益財団法人鉄道総合技術研究所の3者が 2018年3月に締結した「超電導フライホイール技術に関する基本合意」に基づき、連携して取り組む今回の実証試験。

超電導フライホイール蓄電システムの鉄道への応用は世界初となる試みだ。

システムから放出されるエネルギーで登坂走行をアシスト

フライホイール蓄電システムとは、装置内部にある大型の円盤(=フライホイールローター)を回転させ、発電電動機を介して回生電力エネルギーを運動エネルギーとして貯蔵(充電)し、必要に応じてエネルギーを放出(放電)するというものである。

「超電導フライホイール蓄電システム」の概要図。蓄電容量は29kWhで、省エネ効果は年間146MWhが見込まれる

画像提供:JR東日本

さらに開発されたシステムには、フライホイールローターの荷重を受ける軸受け部分に超電導技術(超電導磁気軸受)を採用。

非接触化したことで、メンテナンスコストの削減やエネルギー損失の低減も図られている。

「鉄道用超電導フライホイール蓄電システム」は勾配を走行する列車のエネルギーを活用することから、実証試験の場として中央本線穴山駅に隣接する穴山変電所が選ばれた

具体的には、穴山駅付近の下り勾配を走行する列車から回生電力エネルギーを運動エネルギーとして貯蔵し、上り勾配を登坂走行する列車にエネルギーを放出。

このとき放出されたエネルギーで登坂走行をアシストするため、変電所から送電する電力削減が可能になるという仕組みだ。

「鉄道用超電導フライホイール蓄電システム」による実証試験の概要図

JR東日本では、穴山駅付近を走行する列車への充放電を実施し、充放電特性およびシステムの有効性の検証を行い、将来の実装を目指すとしている。

日本を代表する鉄道会社から誕生した世界初の鉄道用超電導フライホイール蓄電システム。

本格実装が実現すれば、鉄道がさらなるエコな乗り物になるに違いない。

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