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産廃の排出油脂が発電燃料に!バイオマス発電車でエネルギーを地産地消

松屋フーズから動物性油脂を回収して発電

飲食店や食品工場などから排出される排水の浄化過程において生成される油脂。再資源化が難しいことからこれまで資源として使用されることのなかったこの油脂を活用して、新たな都市資源として利用する取り組みが行われている。“新エネルギーの地産地消モデル”の確立を目指すというその詳細に迫る。

廃棄処分されていた未使用資源トラップグリース

NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)と、水質浄化と二酸化炭素排出削減のための都市型バイオマス発電を研究・開発する株式会社ティービーエム(埼玉県所沢市)は、2014年6月に飲食店や商業施設、食品工場など(以下、事業所)から排出されるトラップグリース(排出油脂)を原料とする発電用燃料の製造に日本で初めて成功。以来、安定的な発電技術の開発を推進し、ことし9月にこの燃料を利用し発電する発電機を搭載したバイオマス発電車の開発を発表した。

また、9月10日には、牛丼チェーンでおなじみの「松屋」を展開する株式会社 松屋フーズ全面協力のもと、埼玉県入間市で開催された「第23回 いるま太鼓セッション」において、トラップグリースを原料としたグリーン電力を発電・供給する世界初となる実証実験を実施。

この実証試験は、松屋フーズの埼玉県内98店舗から回収された動物性油脂を原料に製造した発電用燃料を使用して発電を行い、同イベントへ電力供給を行うもの。出店の調理機器や電灯、さらに熱中症対策となるクールスポットをつくるミスト発生装置などに、発電車から安定的にグリーン電力の供給がなされた。

なお、発電用燃料の原料として用いられているトラップグリースは、事業所に下水道や公共用水域へ汚水や油脂の直接流出を防ぐ目的で設置されていることが多い簡易な油水分離装置“グリース阻集器(グリース・トラップ)”で主に集められる動物性油脂だ。

「2012(平成24)年度 環境研究総合推進費補助金・研究事業 国立環境研究所」によると、その賦存量(ふぞんりょう/理論的に導き出された総量)は全国で年間31万トンと推定されるなど膨大な量が存在するが、これまでは水分含有率が高く、不純物も多いため再資源化は困難とされ、産業廃棄物として焼却処理されていた。

排水浄化からエネルギーを生み出すフード・グリーン発電の概要図

2013(平成25)年度を皮切りに、NEDOの「ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業」においてこの膨大な量の未使用資源トラップグリースをエネルギーに変換し、新たな都市資源として活用する「フード・グリーン発電」事業に取り組んでいるのが株式会社ティービーエムだ。

膨大な未使用資源活用へのチャレンジ

もともと店舗や施設の排水を浄化する独自技術を有していた同社。

排水油脂の資源化に向けて、グリース・トラップからトラップグリースを分離・回収する排水油脂回収技術と、エネルギー資源としては低品質な排水油脂を発電用燃料へ精製改質する技術および発電技術の確立に成功した。

これにより、これまで廃棄処分されるだけだったトラップグリースを発電用バイオマス燃料SMO(ストレート・ミックスト・オイルの略で通称「スモー」)として見事に作り変えたのだ。

さらに精製改質する技術開発を進めたことで、SMOに作り変える過程において、一切の化学薬品を使用せず、また副産物を出さないというメリットも得た。

また、SMO製造工場では、隣接するフード・グリーン発電所のディーゼル発電機の排ガスを利用するコージェネ(熱源より電力と熱を生産し供給するシステムの総称)機能で加温保湿を実現。これにより常温固化するSMO製造過程において一切の電力を使用しないのだという。

そしてこれらの集大成となるのが、バイオマス発電車だ。

バイオマス発電車は100KVA(キロボルトアンペア)規模のディーゼル発電機を搭載するため、80kW(100KVA×0.8<有効電力を皮相電力で割った値である力率>)の電力供給が可能。電力が必要なイベント会場などにグリーン電力を直接供給できるのもポイントとなる。

電力供給技術であるバイオマス発電車。移動が可能という利点を生かし災害時の独立電源としての役割も期待される

同社は今後も首都圏のイベントでバイオマス発電車による実証実験を重ね、2020年までに排水浄化からグリーン電力を生み出す「フード・グリーン発電システム」の首都圏全域への普及を目指すという。

■バイオマス発電車の実証実験予定
・10月28日(土)・29日(日)…第39回 入間万燈まつり(埼玉県入間市)
・11月3日(金・祝)…むさしのサイエンスフェスタ2017(東京都武蔵野市)
・11月10日(金)…第10回 むさしの環境フェスタ(東京都武蔵野市)
・11月24日(金)…ご当地鍋フェスティバル@日比谷公園(東京都千代田区)※イベント全体は23日(木・祝)~26日(日)
・12月3日(日)…Shibuya StreetDance Week2017(東京都渋谷区)

地域で必要な電力は地域で賄う──。

電気においてもそんな“地産地消”がトレンドとなる時代がもうすぐそこまでやってきている。

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