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太陽光発電の救世主!AIを搭載した雑草の成長抑制ロボが登場

小型太陽電池で自律的に稼働、環境に配慮した方法で雑草管理を実現する

どこでもニョキニョキと育つ“雑草”が日差しを遮り、設置された太陽光発電施設の発電量を低下させてしまう。全国各地で発生しているこの悩ましい問題を解決するべく、雑草を踏みつけることで成長を抑制するロボットが登場。雑草の持つ特性だけでなく、環境問題にも着目して開発されたスグレモノの実力に迫る。

植物学の知見をロボットに応用!

鋭利な刃物で雑草を根こそぎ刈り取るのではなく、強力な除草剤を散布するわけでもない。ただただ鉄板で“踏みつける”。そしてその圧力で雑草の成長を抑える……。

それが栃木県宇都宮市で太陽光発電事業を行うフィールド開発が生み出したロボット「グラプレス」の得意技だ。

パワー自慢のタフな戦車をイメージさせる機能を持っているものの、外観はいたって素朴。車体には、安全走行を可能にするための誘導、障害物センサーや踏みつけるステンレス板を備え、上部に動力源であるソーラーパネルを背負っている。

「グラプレス」の試作機。サイズは縦125×横80cm、重さは約60kgというコンパクトなもの

「グラプレス」は、主に太陽光発電施設での使用を想定して開発された自動走行ロボットだ。関東を中心に幅広い地域から太陽光発電システムの設備工事を請け負うフィールド開発にとって、どんな場所でも生い茂る雑草は倒すべき“大敵”だったという。

「雑草が成長して太陽光発電パネルに日陰をもたらすだけでも、発電量は大幅に低下します。それが毎年繰り返されると、施主の方々は採算が圧迫されるばかり。しかし、雑草を人力で刈ろうとすると人件費がかさむだけでなく、電力線の切断事故なども頻発してしまったのです。さらに、近隣や下流域の農地に悪影響をもたらす可能性がある除草剤も当然使いにくく、悩ましい状況が続いていました」(代表取締役の山口直信氏)

こうした問題を目の当たりにする中で、「雑草の成長を一定の高さにコントロールして、太陽光発電設備と環境が共存する仕組み」の必要性を痛感。自社開発のロボットで雑草に戦いを挑むことを決意する。

そして、環境に悪いものは使用しないという理念をクリアするアイデアを模索した結果、踏まれると成長が抑制されるという雑草の特性に着目した。

「例えば公園の人通りの多い場所では、芝生が高く生えていないことがヒントになり『継続的圧迫』という観点から文献や論文などを調べました、すると、『エチレンが植物の成長抑制や促進に関係している』という植物学の知見に出合ったのです。重量が加えられて毎日4回踏まれた植物は、エチレンの作用で最大75%の成長抑制が発生するそうです。これを活用すれば、環境に負荷を与える除草剤などを使用しないロボットが作れると思いました」(同氏)

開発初期の「グラプレス」。雑草を踏む最適な回数や重量を導き出すために、何度も試作機を作り直したという

価格は70万円(税抜き)で、2019年の春に発売予定。月5万円からリースも用意しているとのこと。余計な装飾を省いたデザインにしているのは、販売価格を抑えることにもこだわっているからだ。

環境に配慮するだけでなく、再生可能エネルギーの買い取り価格が引き下げられてきている昨今、顧客が買えるレベルの価格設定にすることも必須だったのだ。極めて優しい信念をベースにして生まれたロボットなのである。

無給電でも1週間走行し続けるエネルギー効率を持つ実力派

「グラプレス」の先端には、雑草を地上10cmの位置で刈りそろえるためのナイロン製の草刈り刃が装備されている。「草を踏む機能」と「草を切断する機能」の合わせ技で効率化を図っているのだ。

「雑草を一定の長さに刈りそろえると、当たり前ですが整備後の見た目がきれいになります。切断用にナイロン刃を使用しているのは、万が一ヒトに接触しても重大な障害に至らないようにする予防策です。さらに、本体の先端と後尾に超音波センサーを搭載して安全を確保しました。進行方向80cm以内の障害物を検知して動作を停止することができます」(同氏)

先端の金属センサーで敷地内に張った鉄製ケーブルを認識して移動する

「グラプレス」の走行跡

「今後は、現在の機能をさらに発展させることが課題です。その上で、『人間が直接入っていけない・長時間いられない』場所で、除草をはじめ物資の運搬や管理・監視機能をも担う自動ロボットに成長させていきたいですね」(同氏)

“人に役立つ”ことをエネルギーにして、独自のアイデアを実用化してみせたフィールド開発(公式HP:http://www.frd.co.jp/)。今後も未来の子どもたちに指標となるロボットを生み出してくれるはずだ。

動力は135Wの小型太陽電池で、あらかじめ金属ワイヤーなどで指定したラインを自動で走行する。石やぬかるみなどで方向がずれた場合は、超音波センサーで判断して自動復帰し指定のラインに戻ることも可能だ。

そして、毎時28アンぺアの蓄電池を並列に2つ積んでおり、太陽電池の給電なしでも1日1時間の走行で約1週間は動く。1日250mを走行し、その範囲の雑草を高さ10cm未満に制御することが可能となる。さらに、速度は分速5mまで調整でき、タイマー機能で任意の時間に動かせる機能も備えているのだ。

ナイロン製の草刈り刃はオプションで最大4つまで追加できる。ロボットの進路になるケーブルは1mあたり300円で同社が敷設する

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