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車いすも自動運転化!高齢者の自由な外出をサポートする画期的システムが登場

待機場所への自動走行&返却機能で、運用コストも大幅削減

人生100年時代ともいわれる超高齢化社会を迎える日本において、高齢者へのサポート体制の構築は今後の重要な課題といえる。その解決策の一つとして、主に自動車のシェアリングサービスで注目を集めているMaaS(Mobility as a Service<モビリティサービス>)のテクノロジーで車いすをアップデートする試みが発表された。独自の自動運転システムを搭載し、利用者はもちろん運用者の効率化をも実現する車いす新事情をお届けする。

未来の車いすは自動走行システム完備がスタンダードになる?

総務省統計局が2018年9月16日に発表したデータ(統計からみた我が国の高齢者─「敬老の日」にちなんで─)によると、現在、日本の総人口1億2642万人のうち、65歳以上の高齢者は3557万人(同年9月15日現在の推計)。実に全体の28.1%を高齢者が占めており、これは過去最高の数値だという。

総務省統計局が発表した人口および割合の図。2017年と比べ、若年層が減少し、高齢層が増加傾向にあることが分かる

出典:総務省統計局

その中で、75歳以上のいわゆる後期高齢者数は1796万人で、前期高齢者(65~74歳)1761万人を上回っている。こうした傾向は日本に限られたことではなく、今後世界的に増加していくと推測される。

そこで課題となってくるのが、高齢者の社会参加だ。

2015年に国土交通省都市局が発表した調査結果(「都市における人の動き─平成22 年全国都市交通特性調査集計結果から─」)では、多くの高齢者が500mを超える歩行を困難に感じていることが明らかとなった。加えて、労働人口が減少する中、そうした高齢者の介助に関する人手不足も深刻化している。

例えば、空港や駅、商業施設など多くの人が利用する巨大施設。こうした場所に車いすが備わっているのを目にする機会も多いが、車いす利用に伴う介助・サポートや使用後の回収には実は多くの人手が必要だ。そのため、空港利用に必要な支援の無償提供が法律で定められているEU圏の航空業界をはじめ、サービスにかかる経済コストや人的コストが年々増加。今後も上昇の一途をたどると想定されており、要介護者への対応策は世界共通の課題となっている。

こうした現状を踏まえ、パーソナルモビリティの開発・販売を手がけるWHILL株式会社(ウィル/神奈川県横浜市鶴見区)は、自動車のMaaSのように施設内での車いすシェアリングを想定した独自の「WHILL自動運転システム」を開発。ことし1月8~11日に米国・ラスベガスで開催された世界最大級の家電・エレクトロニクス技術展示会「CES(Consumer Electronics Show) 2019」で発表した。

CES2019で発表された「WHILL自動運転システム」。Accessibilityカテゴリで最優秀賞を受賞している

「WHILL自動運転システム」は、自動走行や自動停止機能などの自動運転技術と、複数の機体を管理・運用するプログラムを備えたシステムの総称。

長距離の歩行が困難と感じる高齢者や障害者の移動シーンのスマート化を目指すとともに施設側の運用コスト削減にもつながる、歩道領域の自動運転システムだ。

前方と側方を監視するステレオカメラを左右のアーム部分に1台ずつ搭載し、広い視野角度を実現。機体後方にもセンサーなどを搭載し、後退の際の衝突対策も万全だ

CES2019には世耕弘成経済産業大臣が来場し、「WHILL自動運転システム」を実際に体験した

空港や商業施設、観光地、スマートシティなどでのシェアリングを想定して開発された本システムは、誰でも簡単・安全に利用できるのが特徴。

まず呼び出しはスマートフォンにインストールした専用アプリで行う。すると、自分が今いる場所まで無人のまま自動走行でやってくる。センサー群を用いて周囲の状況を検知し、あらかじめ収集した地図情報を照らし合わせることで、衝突を回避して安全な自動走行を実現するという。

いざ乗り込んだら、右側のジョイスティックで自動と手動の運転切り替えをはじめ、行きたい方向への操作などを行う。空港のように人の多い場所で使っても事故などが起きないよう、手動運転の際は車体の周囲に人やモノが近づくと、それを認識して自動で止まる仕組みも内蔵されている。

さらに、乗り捨てた車いすが自動で待機場所に戻るなどの運用も可能。これまで人の手で行っていた車いすの運搬や回収、管理といった作業の自動化を実現し、エネルギーや人的コストの大幅削減が期待できるという。

現在は、スキポール空港(オランダ)、ヒースロー空港(英国)、ラガーディア空港(米国)などでの実用化に向けた協議を進めている段階。今後はスポーツ施設や商業施設、観光地などへ範囲を広げるとともに、2020年をめどに公道での実用化も目指す計画だ。

杉江 理代表取締役兼CEOは「人生100年時代において、全ての人が社会参加、労働、ボランティアなどで活躍し続けるためには、スムーズに移動できることが前提となります。今後、本システムをインフラのように誰もが当たり前に使えるサービスとして構築していきたいです」と展望を語っている。

“気軽に外出をしたい”という考えは老若男女問わず共通した思いといえる。そうした願いをかなえてくれる心強い味方の登場はもう目の前だ。

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