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聖闘士星矢の小宇宙ランキング!星矢は5位、一輝が4位、1位は……?

『聖闘士星矢』の小宇宙について考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「小宇宙」。といっても宇宙の話ではなく、今なお世界中で人気の高い名作『聖闘士星矢』(1985~1990年)の小宇宙(コスモ)の方。星矢や紫龍ら5人の青銅聖闘士(ブロンズセイント)たちがさく裂させた必殺技のエネルギーをランキングにしてみました。

昭和の名作『聖闘士星矢』、令和に

「週刊少年ジャンプ」で『聖闘士星矢』の連載が始まったのは1986年(85年末発売号)。ハレー彗星が接近し、マラドーナを擁するアルゼンチンが、サッカーW杯メキシコ大会を制した年である。

この世に邪悪がはびこるとき、正義のために戦う希望の闘士「聖闘士」たちが現れる。神話の時代から「女神(アテナ)」に仕えてきた彼らは、星座の名を冠した「聖衣(クロス)」をまとい、己の体内に宿る「小宇宙」を爆発させて驚異的な力を見せる。戦いの場は、海底や冥界にまで及んだ。

この壮大な物語は、多くの読者の心をつかみ、当然ながらアニメ化もされ、今に至るまで多くの続編が作られている。そして2019年夏に続き、2020年1月23日から3DCGアニメ『聖闘士星矢:Knights of the Zodiac』のパート2がNetflixから世界に配信された!

これは油断できない。今年は日本に世界中から人が押し寄せる。『聖闘士星矢』の熱烈なファンもいるだろう。もしかしたら、街を歩いているときに「ペガサス流星拳のエネルギーはどれほどですか?」と尋ねられるかもしれない。『聖闘士星矢』発祥の地の民として、ぜひ明確に答えてあげたいものである。

その日に備えて、計算しておこう。聖闘士たちが、小宇宙を解き放ってさく裂させる必殺技のエネルギーを!

流星拳はマッハ1のパンチを毎秒100発!

聖闘士たちには3つのランクがある。上位から順に黄金聖闘士(ゴールドセイント)、白銀聖闘士(シルバーセイント)、そして主人公・星矢が名を連ねる青銅聖闘士(ブロンズセイント)だ。

青銅聖闘士の中心メンバーは5人で、マンガに登場した順に次の通り。

天馬星座(ペガサス)の星矢。得意技はペガサス流星拳!
白鳥星座(キグナス)の氷河。代表技はダイヤモンドダスト!
龍星座(ドラゴン)の紫龍。代名詞とも言える技は廬山昇龍覇(ろざんしょうりゅうは)!
アンドロメダ星座の瞬。その鉄壁の技は星雲鎖(ネビュラチェーン)!
鳳凰星座(フェニックス)の一輝。必殺技は鳳翼天翔(ほうよくてんしょう)!

まずは、星矢のペガサス流星拳から。

流星拳は、マッハ1のパンチを1秒間に100発放つ!

これは恐ろしい。気温15℃(地球全体の平均気温)のとき、音速すなわちマッハ1は秒速340m=時速1224km。現実のボクサーのストレートは時速40kmと言われるから、その31倍である。体重やテクニックが同じなら、パンチの破壊力=エネルギーは速度の2乗に比例するから961倍! それを1秒間に100発!

つまり、ペガサス流星拳を1秒食らった相手は、通常のボクサーに9万6100発殴られたのと同じダメージを受けることになる。命があるかな~。

そのエネルギーは、どれほどだろう。

『聖闘士博物館』によれば(以下同じ)、星矢の体重は53kg。また、『改訂スポーツ・バイオメカニクス入門』(金子公宥/杏林書院)によると、男性の片腕は体重の5.05%を占める。星矢の場合は、2.68kgだ。

しかし、ストレートを放つとき、肘から先の前腕と手はほぼ一直線に動くが、肩から肘までの上腕は肩を中心に回転する。こうした回転運動のエネルギーは、直線的に動く場合の3分の1になる。このため、パンチの全エネルギーは、「手+前腕+上腕の3分の1」の質量を持ったものが、直線的に動いた場合と同じになる。これを「有効質量」と名付けるならば、星矢のそれは1.74kgとなる。

すると、ペガサス流星拳1発のエネルギーは「運動エネルギー=1/2×質量×速度の2乗」から、こうなる。

1/2×1.74[kg]×(340[m/秒])2=10万1000[J]

[J(ジュール)]はエネルギーの単位で、100gの物体を地球上で1m持ち上げるエネルギーが1Jだ。イメージしやすいものと比べると、質量5g、秒速1000mのライフル弾のエネルギーが2500J。つまり、ペガサス流星拳は、たった1発でライフル弾40.4発分のエネルギーを持つ。100発で1010万J、ライフル弾4040発分!

だが、ご存じの方も多いだろう。『聖闘士星矢』には、ペガサス流星拳と同じパターンで威力が表現される超絶技がある。

そう、黄金聖闘士・獅子座(レオ)のアイオリアが放つライトニングプラズマ。ペガサス流星拳が「マッハ1で1秒間に100発」なのに対し、こちらは「光速で1秒間に1億発」! これも計算しておこう。

この宇宙では、質量のあるものは決して光速には達しない(光速に達するには無限大のエネルギーが必要)ので、ここではライトニングプラズマの速度が光速の99%だとしよう。また、光速に近づくと、運動エネルギーは上のような簡単な式では求められないので、結果だけを示そう。

アイオリアの体重は85kgで、腕の有効質量は2.79kg。これを光速の99%で打ち込むエネルギーとは、153京J! 京は兆の1万倍だ。

途轍(とてつ)もないが、忘れてはならない。これは、たった1発のエネルギーなのだ。それを1秒に1億発となると、もはや「指数表記」を用いるしかなく、1秒間に1.53×1026J。これは、6550万年前に衝突し、恐竜をはじめ生物種の7割を絶滅させたとされる小惑星(1兆6000億t)のエネルギーの216倍である!

さすが黄金聖闘士、オソロシイですなあ。

青銅聖闘士ランキング一輝が4位、星矢は5位!

では、他の青銅聖闘士たちはどうだろう。ここからは、皆さんにお楽しみいただくために、エネルギーの値が小さい順に登場してもらおう。

鳳凰星座の一輝は……えっ、一輝が小さいの? 驚かれるかもしれないが、マンガのシーンから計算すると、そうなる。他の聖闘士たちが、いかにすごいかということだ。

で、一輝は「鳳凰幻魔拳」という技を持っている。敵に幻を見せて、精神をズタズタに引き裂くという、まさに魔拳。でも、エネルギーを割り出すのは困難なので、ここでは冒頭でも紹介した鳳翼天翔を考えよう。

右手を開いて突き出すと、大勢の敵が空中高く飛ばされる!という鳳翼天翔。だが、最もすごいのは、女神の前で1人の敵を飛ばしたときだった。直後、一輝は恐るべきことを言う。

「あの分ではギリシアまでとんでいったかもしれんな」。それ、本当なの!? 

一輝は女性の前でカッコつけたりする男ではないので、本当だと考えるべきだろう。鳳翼天翔を決めたのは東京で、聖闘士の総本山があるアテネまで9520km。地球一周は4万kmだから、ほぼ4分の1周だ。実際には、敵が飛んでいる間にも、地球の自転によってアテネの位置は変わってしまうが、そこまで考えると複雑を極めるので、地球の自転は無視しよう。

相手は地面から45度ほどの角度で飛ばされた。これで9520kmの彼方に達する速度とは、秒速7.75km=マッハ22.8!

ここで問題になるのは「運動量」だ。スポーツなどでは別の意味で使われるが、科学では「質量×速度」のこと。「衝突の前後で運動量の合計は変わらない」という「運動量保存の法則」があるので、非常にユーティリティーが高い。

相手の体重を80kgとすると、与えた運動量は、

80[kg]×7750[m/秒]=62万[kg・m/秒]

一輝の体重は62kgで、腕の有効質量は2.04kg。すると、運動量保存の法則から次の式が成り立つ。

2.04[kg]×右手を突き出す速度=62万[kg・m/秒]

答えは秒速30万4000m。すなわちマッハ896! エネルギーは690億J!

ペガサス流星拳は100発で1010万Jだったから、その6830倍である。そうなのだ。星矢は5人の中で一番小さなエネルギーしか出していない! 筆者も無念だけど、科学的に考えると、そんな結論が出てしまう。

廬山昇龍覇、まさかの3位!

続いて、紫龍の廬山昇龍覇。えっ、昇龍覇が3位!? と驚いたのは筆者も同じです。

廬山昇龍覇は、大きなフォームで相手を天高く殴り飛ばすアッパーカット。この技を習得するために、紫龍は5年の訓練の果てに、廬山の滝を逆流させた!

廬山の滝は中国に実在し、落差は155m(諸説あり)。マンガの描写では、1秒間に流れる水量は100t前後と見られる。これを逆流させるにも、やはり注目は運動量だ。

実は、この研究で筆者はスバラシイ発見をした。流れ落ちる水の運動量は「毎秒の水量×落差」に等しい! 他のケースでは全く役に立たない法則だが、これを使ってみよう。

廬山の滝の運動量は、

10万[kg/秒]×155[m]=1550万[kg・m/秒]

下向きにこの運動量を持っていた滝を逆流させるには、上向きにその2倍の運動量を与えねばならない。

紫龍の体重は星矢と同じ53kgで、腕の有効質量は1.74kg。拳を突き上げる速度は秒速1780万m=マッハ5万2300! エネルギーは275兆J。一輝の3990倍!

そして、第2位は白鳥星座の氷河。

彼のダイヤモンドダストは、凍気をぶつける技。超低温ゆえに、辺りには雪の結晶が舞う。宝瓶宮(ほうべいきゅう)で水瓶座(アクエリアス)のカミュと戦ったとき、氷河は凍気の極限に到達した。放った凍気が、なんと絶対零度に達したのだ!

絶対零度とは、それ以下には決して下がらない限界温度のこと。物質の温度は原子の運動が激しいほど高くなり、完全に静止する温度が絶対零度。マイナス273.15℃に等しく、そこをゼロとする温度を絶対温度という。単位はK(ケルビン)だ。

冷蔵庫が電力を消費するように、温度を下げるにもエネルギーが必要だ。そして、光速に達するには無限大のエネルギーが必要なように、絶対零度=0(ゼロ)Kを作り出すのにも無限大のエネルギーを要する。

よってここでは、宝瓶宮内の10m四方、高さ5mの空間の気温を、マイナス273℃=0.15Kにしたと考えよう。氷河の体温が36.5℃で、初めの気温が20℃のとき、これに必要なエネルギーは677兆J。紫龍の2.46倍で、初めての僅差に!

瞬のネビュラチェーン、余裕で地球を木っ端みじんに

すると1位は……アンドロメダ星座の瞬ということになる。

彼が持つ星雲鎖(ネビュラチェーン)は、右手が攻撃用の角鎖(スクエアチェーン)、左手が防御用の丸鎖(サークルチェーン)になっている。本能を持ち、自動的に攻撃し、瞬を守ってくれる。自己修復能力も持つ。

驚くべき鎖だが、なぜこれを持つ瞬が1位なのか。その角鎖について、瞬はオドロキの事実を明かしている。

「この角鎖は 敵が何光年の彼方にかくれていようとも 必ず見つけ出して倒すのだ!!」。それ、鎖が何光年も伸びるってこと!?

この驚くべき現象を、エネルギーの観点から理解しようとするなら、こう考えるしない。

アインシュタインは、特殊相対性理論によって、質量とエネルギーは同等であることを明らかにした。つまり、物質はエネルギーに変わり得るし、エネルギーは物質に変わり得る。前者は既に原子力発電などで実用化されているし、宇宙の全ての物質はビッグバンのエネルギーから生まれた。

その関係は「エネルギー=質量×光速2」。星雲鎖は、エネルギーから鎖の材料を作り出して、自己組織化するのではないか!?

星雲鎖の各部のサイズを測ると、鋼鉄だとすれば1m当たり441g。仮に5光年先まで伸びるとしよう。

5光年=4.73×1016mだから、質量は2.09×1016kg。エネルギーはこれに光速(秒速2億9979万2458m)の2乗をかけて、1.87×1033J。うひょ~っ、ライトニングプラズマの1230万倍! というか、地球を木っ端みじんに破壊するエネルギーの8.4倍!

マッハ1で打ち込まれる毎秒100発のパンチが最下位。その異常な世界において、内なる小宇宙から莫大なエネルギーを放出し、平和と女神のために戦う若者たち。その強さは、あるときは言葉で、あるときは劇中で起こす現象によって語られる。それを科学で真剣に考えるとき、そのエネルギーはまさに小宇宙と呼ぶにふさわしいことが明らかになる。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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