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空想未来研究所2.0

人間と同じエネルギーで働く新世代ロボットも! 燃料とAIから見る空想ロボット分類学

空想世界のロボットの分類について考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「ロボットの分類」。古くは鉄腕アトムや鉄人28号、金字塔を打ち立てたガンダムやエヴァンゲリオンなど、ロボットが中心となる空想作品は枚挙にいとまがない。そんなロボットたちをエネルギー源とAI・操縦の観点から考察してみました。

電気とAIが支えるロボットの社会進出

人間社会に、ロボットが静かに進出してきている。

ロボットの定義の一つに「人間の仕事を自動的に代行する機械」がある。

家庭内を見ても、掃除ロボットは言うまでもなく、洗濯機も食洗器も炊飯器も録画予約も、上の定義に照らせば立派なロボットと言えるだろう。

街でも、自動販売機を先駆けとして、自動改札や無人運転列車など、ロボットたちが活躍している。近い将来、届け先を設定するだけで荷物を運ぶドローンが現れれば、それは飛行という人間にない能力を備えた次世代のロボットと言えるだろう。さらに自動車の自動運転システムが完成すれば、街自体が究極のロボットになったと見ることもできるかもしれない。

他にも医療、飲食、情報、軍事など、ロボットの進出は日進月歩。こういう文章さえ、ロボットが書く時代がいつか来るだろう。

こうした現実世界のロボットたちには、2つの大きな共通点がある。電気をエネルギー源にすることと、AI(人工知能)を備えていることだ。

電気はON・OFFや強弱の切り替えが容易で、電線さえあればどんな狭いところにも届き、配線が曲がっていても作動に支障がない。例えばロボットに二足歩行をさせるには、全身各部の関節を協調させて動かさねばならないが、これは電気以外では難しい。

また、状況に応じて動くには、大量の情報を処理する必要がある。これも二足歩行を例にとれば、周囲に何があるか、床の状態はどうか、自分の体勢はどうなっているか、これらの情報を複合的に処理して、各関節の動きを決定せねばならない。AIなくしては不可能だ。

エネルギー源は電気、制御はAI。そのAIも電気で動く。これが現実世界のロボットの基本構成だ。

ところが、空想の世界で活躍するロボットたちは、必ずしもそうとは言えない。さまざまなエネルギー源で動くし、AIの備わり具合もさまざまだ。空想世界のロボットたちを、この両面から考えてみよう。

ロボットのタイプで違うAIの完成度

空想世界のロボットは、大きく「自律型」と「操縦型」に分けられる。そして操縦型は、「搭乗型」と「遠隔操作型」に細分される。

自律型ロボットには、鉄腕アトム、『宇宙戦艦ヤマト』のアナライザー、『Dr.スランプ』のアラレちゃん、『機動戦士ガンダム』のハロなどがいる。

搭乗型ロボットは、マジンガーZ、ゲッターロボ、ガンダム(正確にはロボットではなくモビルスーツ)、エヴァンゲリオン(正確にはロボットではなく汎用人型決戦兵器)など。戦うロボットやモビルスーツや汎用人型決戦兵器には、圧倒的にこのタイプが多い。

遠隔操作型に分類されるのは、鉄人28号(リモコンで操作)や、ジャイアントロボ(音声で命令)など。昔懐かしのロボットに多いイメージがありますなあ。

自律型のロボットたちは、言うまでもなくAIが完備されているだろう。人間の介在なしに動くのだから。

中でもすごいのはアラレちゃんで、道に落ちているウンチを木の枝でつついたり、パンチで地球を割ったりする。しかも、誰に命令されたわけでもなく、自律を超えて自発的に遊びでやるのだ。行動の動機付けが「遊ぶ」「楽しむ」とは、あまりに優れたAIである。

アナライザーにも驚く。なんと、ヒロインの森雪に恋をした! 昔、あるロボット研究者と話をしたとき、その研究者は「恋ができるロボットを作りたい」と言っていた。確かにそれは、人間の行動再現の極致。それを70年代にやっていたとは、すごいぞアナライザー!

操縦型のロボットたちは、人間の介在を必要とする点で、AIが完全とは言いがたい。それでも遠隔操作型は、操縦者に見えていない現場の状況を自分で把握せねばならないわけで、自律度は高いと言える。

搭乗型のロボットは、状況の把握を操縦者が担当、あるいは一部負担しているわけで、自律度は低いと言わねばならないだろう。ということは、なんと遠隔操縦型の鉄人28号やジャイアントロボは、AIの点ではガンダムやエヴァより進んでいた!?

アラレちゃんの体内発電機は超パワフル

続いて、エネルギー源を見てみよう。

空想世界にも電気で動くロボットは存在する。エヴァは腰のアンビリカルケーブルから電力を供給され、それが断たれると内部電源で動いていた。ただし、稼働時間は1~5分。

興味深いのは、その内部電源がバッテリーなのか発電機なのかということだ。バッテリーであれば、エヴァは純粋に電気で動くことになり、他の燃料で発電機を回しているなら、緊急時には他のエネルギー源で動くことになる。

他のロボットたちは、実に多彩なエネルギー源で動く。

マジンガーZは光子力、ゲッターロボは宇宙から降り注ぐゲッター線、ガンダムは核融合炉。だが、これらもそうした多彩なエネルギー源で発電し、全身各部の関節を電気で動かしている可能性が高いと思う。

前述したように、多数の可動部を動かすには電気が極めて有用だからだ。実際に『機動戦士ガンダム大百科』(勁文社)の内部図解では、ガンダムRX-78- 2には「サムソニ・シム電動モーター」が搭載されている。

その点が明確だったのは、再び登場のアラレちゃんだ。彼女のエネルギー源は「ロボビタンA」という哺乳瓶に入った液体だが、マンガの第1話にある制作シーンを見ると、体内には多くの配線がある。おそらく、ロボビタンAをエネルギー源として発電しているのだろう。

すると恐るべきは、その発電機のパワーである。アラレちゃんは地球をパンチで割ったことがあるが、これに必要なエネルギーは2.8×1030J。これは7.78×1023kW時であり、日本最大級の発電力を誇る富津火力発電所(最大出力516万kW)が…

(7.78×1023[kW時])÷(5.16×106[kW])=15京1000兆[時間]=17兆2000億[年]

かけて生み出す電力量。こんな大エネルギーを生み出す発電機が、少女型ロボットの体に入っているとは、スゴすぎる!

則巻千兵衛博士には、ぜひその発電機をもう1個作ってもらい、世界の電力供給に貢献していただきたい。

原形質で制御する新時代の“自動者”

近年の作品でも、マンガ『オートマン』(2018年~)に驚くべきシステムで動くロボットが登場する。

そのロボットの名は「自動者(じどうしゃ)」。頭部がないことを除いて人間とほぼ同じ体形で、人間社会や工事現場や戦場で活動している。

人間社会で働く自動者は、頭部がない分だけ人間よりやや背が低く、開発中の次世代型は重量75kg、肺気量(はいきりょう)2.1L。糖分を主成分とする燃料液(カロリー)をエネルギー源にして、人工筋肉で動く。

注目は制御で、それを担うのは人間の血液から精製した原形質!

原形質とは、現在の科学では、核やミトコンドリアやゴルジ体など、細胞の中で生体活動を行っている部分のこと。かつて細胞の構造が分かっていなかった時代は、細胞の中に命の源となる物質があると考えられ、それが原形質と呼ばれていた。

マンガでは、原形質は次のように説明されていた。

・有機物のかたまりである人間が目的の行為ができるのは、体内に原形質があるため
・人間から取り出した原形質を有機物でできた自動者に入れると、同じように動くようになる

まさに原形質がAIの役割を果たしている!

また、血液は有償の献血で集められるのだが、「原形質には元の人間の性格や個性が残る。そのため、一度まとめて血液を混ぜ、平均化・均質化してから工業製品に」している。

現在の科学でいう「原形質」にそうした側面はないけれど、作品の設定なのだから素直に受け入れたい。とはいえ血液は、血液型別に分けてから混ぜてほしい! 当然、そうしているだろうけど。

ただ、マンガでは「人間の体から原形質を取り出すと、少しずつ生気が失われるため、自動者も定期的に交換する必要がある」という設定があり、まさにかつての原形質に近いイメージだ。

この自動者に対して、作品中の人たちは、感情移入したり、ただの機械だと受け止めたり、人間の血液で動かすことに抵抗を覚えたりして、物語は深まっていく。「生体物質がAIの働きをする」という発想が、筆者にはモーレツに斬新だった。

新時代のロボットのエネルギー源は糖分

これに対して、深々と納得するのが、燃料液の主成分が「糖分」であることだ。

人間も糖質、脂質、タンパク質をエネルギー源にしていて、中でも糖質は速やかにエネルギーに変わるため、スポーツ選手は意識的に摂取する。肉体労働をする自動者にももってこいだろう。

そもそも消化とは、糖分に関しては、体内に吸収されないデンプンや砂糖を、吸収されやすいブドウ糖や果糖などの糖分に分解することを指す。初めから糖分を与えるなら、自動者には消化器官さえ必要ないことになる。

それに、自動者には「偽循環器」がある。おそらく血管系や血液の役割を果たす仕組みもあるのだろう。「肺気量」があるなら、肺の機能を果たす「偽呼吸器」もありそうだ。これで取り入れた酸素と燃料液を循環させ、全身各部でエネルギーに変えて、人工筋肉を動かす。極めて理にかなったシステムだ。

体重75kgのよく運動する20代男性は、1日に3600kcalを必要とし、ブドウ糖1gは4kcalのエネルギーに変わる。3600kcalを得るのに必要なブドウ糖は900gだ。これを溶かす水は1kgだから、同様のエネルギーで動くなら、重量75kgの自動者は1.9kgの燃料液で1日働くことができる。

価格も安い。とある業務用のブドウ糖は20kgで4795円なので、900gでは216円! メンテナンス代を除けば、日給216円で働いてくれる。マンガでは、人間が自動者に仕事を奪われると心配されていたが、無理もないかも~。

人間に似た姿で、人間の仕事を代行する。そうした素朴な発想が、空想の世界では多数のヒーローを生み、人間には不可能な行為をやってのけ、新たな物語を紡ぎ出してきた。そして現実世界でも、ロボットたちの能力は人間を超えつつある。この驚くべき進歩の原動力が空想であったことは間違いないだろう。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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