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ガソリンスタンドから自宅に配達!? 自走ロボットによるデリバリー最前線

佃・月島エリアで行われたロボットによる宅配サービスの実証実験

コロナ禍による外出自粛や人との接触機会の低減を図る中で、Uber Eats(ウーバーイーツ)をはじめとした「フードデリバリー」サービスが全盛を迎えている。さらなる進化を遂げるかのように、感染拡大防止に効果的な人同士の非接触を実現する「ロボット宅配サービス」が誕生する兆しがある。このプロジェクトに取り組むENEOSホールディングス株式会社ほか2社は、2月8日から26日まで共同で自動宅配ロボットによるデリバリー実証実験を行った。

ガソリンスタンドが新たな物流拠点に!

厚生労働省が2020年8月に発表した「労働経済動向調査」では、医療・福祉、建設業と並び運輸・郵便業の人手不足が特筆されている。その一方、2020年から続くコロナ禍による外出自粛や人同士の接触が避けられる傾向から、物流件数が増加。結果、物流業界では健全な労働環境や円滑な物流システムの維持に暗雲が垂れ込めている。

そうした中で手を組んだのが、ENEOSホールディングス株式会社(以下、ENEOS)と、自走ロボットを開発する株式会社ZMP(以下、ZMP)、デリバリーシステムやサービスにノウハウを持つ株式会社エニキャリ(以下、エニキャリ)の3社。共同で、コロナ禍対策としても有効となる自動宅配ロボットを使ったデリバリーサービスの実証実験を開始した。

今回、実証実験が行われたのは東京都中央区佃・月島エリア。同地区にあるENEOSのガソリンスタンドから配達場所までZMP製の無人宅配ロボット「DeliRo®(以下、デリロ)」が自走し配達するというもの。受注、集荷、決済といった情報の伝達と共有は、エニキャリとENEOSで共同構築した専用プラットフォームで管理された。

デリロは幅66.4cm、長さ96.2cm、高さ108.9cm。重量は約120kg。公道走行の実績や実験成果などが認められ、道路交通法では電動車椅子のような歩行補助車として特別に認可された

以前からENEOSは、環境問題や脱炭素社会実現の時勢を踏まえ、全国約1万3000カ所に展開するガソリンスタンドのネットワークを活用し、新たなモビリティサービスやライフサポートの拠点として利用することを検討している。さらに、近年の自動運転技術やロボット技術の目覚ましい進展を受け、物流業界での自動走行ロボットによる輸送が発達すると予測。そうしたロボットの拠点としても活用できると想定し、今回の実験に乗り出した。

2022年にはロボット配送が現実のものに!?

今回の実験では、佃・月島エリアにあるマンション3棟の約1000戸が対象となった。

専用の注文サイトを通して対象世帯から注文が入ると、エニキャリの配達員(キャリースタッフ)が注文された商品を対象店舗まで取りに行き、デリロが待機するガソリンスタンド「ENEOS Dr.Drive月島SS」に届ける。配達員が商品をデリロの積載ボックスに収納すると、そこからデリロが注文者に運んで配達が完了するという流れだ。

ロボットとクラウドシステムを連動させ、専用サイト(ECモール)に入った注文情報がデリロ、店舗、配達員に瞬時に共有される仕組みになっている

3棟のマンションは、待機場所となるガソリンスタンドから約800mの距離にあり、歩行者と同等の時速4km(最大時速6km)で走行するデリロなら、およそ15分で到着する。特別に歩行者道路の走行が認可されたものの、当実験では付き添い人による近接監視を行いながらマンションの入り口まで移動し、そこで商品を受け渡しする形となった。

配達員や注文者に送付されるQRコードをデリロに搭載されたカメラで読み込むと、収納ボックスのロックを解除することが可能。商品の出し入れに使用する

注文を受け付けた商品は、10社10店舗のもの。居酒屋チェーン「磯丸水産」や牛丼チェーン「松屋」などのテイクアウトメニュー、「ローソン」の食料品や生活雑貨、日用品などがラインアップされた。現段階では常温配送しかできないが、今後、長距離配送などのニーズがあれば、電力消費量の増加が課題としてありつつも、積載ボックスに冷蔵や冷凍機能を付加させることを検討するという。

最大積載量は50kg。実証実験で用いられたデリロは一度に最大4つの商品を運べる。配送料は注文数量問わず一律297円(税込)

2月8日から開始された実証実験は同月26日に無事終了。1日平均2~3件を配達した“ロボット宅配員”に、利用者からは「かわいい」「防犯面と衛生面で安心感があった」、商品の協力店舗からは「宅配員の確保に苦慮しているが、ロボットによる実証実験は、今後の課題解決の一手として大いに期待している」といった好感を持つ声が集まったという。

一方で、ビジネスとして成立させるためには、課題も少なくない。例えば、今回の実証実験では1台につき1人が同行する近接監視下で配達したが、管理者1人で複数台のロボットを遠隔監視できるような仕組みを構築する必要があるという。

実証実験の終了を受けて、デリロを開発したZMP ロボライフ事業部の龍 健太郎事業部長は、「複数店舗の商品を取り扱い、複数のマンションに配送することができ、実用化に向けた一歩を踏み出すことができた。今後は遠隔監視での運用など、さらにチャレンジしていきたい」と意気込む。

ENEOSは今後、配送エリアの拡大やロボットによる商品ピックアップなどを行う、第2の実証実験を2021年度内に実施する予定。2022年をめどに、まずは今回実験を行った佃・月島エリアで実際にビジネス展開し、その後は他地域へも広げていく計画だ。

全国に1万を超えるステーションが、既にある。これまで燃料の拠点として物流や人の移動を支え続けてきたガソリンスタンドが、新しい宅配サービスの拠点として生まれ変わるかもしれない。

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