空想未来研究所2.0

アトム、ガンダム、エヴァ…金メダルは誰の手に?ロボット五輪、開幕

『ロボット』のエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「ロボットの出力」。残念ながら2021年に延期となったスポーツの祭典に代わり、空想世界で夢の競技会を開催する。出場するのは1960~90年代に活躍したロボットたち。跳び、走り、拳を振るうロボットたちのエネルギーについて考えてみました。

ロボット五輪2020、開幕

前回の東京五輪が開かれたのは、筆者が3歳のとき。白黒テレビで見た聖火台への点火と、ハトの群れが平和を謳歌(おうか)するように飛ぶシーンを鮮明に覚えている。当時、家にはテレビがなかったから、他所(よそ)の家で見せてもらったものと思われる。

だから、2020年の東京五輪も楽しみにしていた。2つの東京五輪を記憶する最も若い世代になれるではないか!

ところが、1年の延期に。モノスゴク残念だ!

そこで勝手に、この場を借りて代替競技会を開催したい。選手は、体格や出力が明確で、勝負の行方を科学的に推測できる「ロボット」たちだ。

厳正な予選を経て、出場選手を以下の5体に絞った。

※各データは、『スーパーロボット画報』(竹書房)、『機動戦士ガンダムMS大図鑑』(バンダイ)、『電磁戦隊メガレンジャー超全集』(小学館)などより

ここでいう「ガンダム」とは型式番号RX-78-2のファーストガンダム、「エヴァンゲリオン」とは紫色の初号機。「メガボイジャー」は電磁戦隊メガレンジャーの巨大ロボだ。

正確には、ガンダムはモビルスーツ、エヴァンゲリオンは汎用人型決戦兵器なのだが、ファンに叱られるのを覚悟で、ここでは「ロボット」と総称させていただきたい。

さて、体格も出力も大きく違うロボットたち。運動能力が、最も高いのは誰なのか。「垂直跳び」「短距離走」「ボクシング」の3種目で競ってもらおう。さあ、ロボット五輪2020の始まりだ!

スペックがケタ違い!まずは単位を統一する

競技に入る前に、「出力」の不確定要素を解消しておこう。まず、単位の統一。

出力とは、1秒間に発揮されるエネルギーのことで、単位は「W」や「kW」、古くは「馬力」も使われた。馬力には「英馬力」と「仏馬力」があり、日本ではメートル法で定義される仏馬力が公式となっていた。1仏馬力=735.5[W]だ。

続いて、そもそも出力不明のエヴァンゲリオン。これは、アニメから求めるしかない。

第3使徒サキエルとの戦いで、エヴァはビルにもたれた状態から、ほぼ水平に身長の10倍ほどジャンプして、サキエルの顔面に膝蹴りを見舞った。宙を舞っていた時間は2.32秒。詳細は省くが、ここから計算すると、エヴァの出力は4620万kWとなる。国内で最強となる富津火力発電所(516万kW)の9倍で、これが1体の汎用人型決戦兵器に注ぎ込まれるのだから、メチャすごい!

全選手の出力を、ガンダムに倣って上3桁の[kW]で表示すると、次のようになる。

わあっ、メガボイジャーはエヴァンゲリオンを上回った! そしてガンダムは、アトムにも負けている! などということが、単位の統一によって一目瞭然となった。

数字を比べるとガンダムが気の毒になるが、リアルな世界を描く『機動戦士ガンダム』に、笑ってしまうほどハイスペックなモビルスーツは必要ない。というより、出てきてはならない。ガンダムは、自分のリアルさに胸を張ってもらいたい。

ロボット五輪第1種目「垂直跳び」

早速、競技に入ろう。

第1種目に「垂直跳び」を選んだのは、最も基本的な運動だからだ。

①膝を曲げて腰を沈める。
②膝や腰を伸ばして離陸する。
③離陸時の運動エネルギーに応じた高さまで跳び上がる。

①から②にかけて脚が出したエネルギーが、離陸まで体を持ち上げるエネルギーと、運動エネルギーに変わるわけである。ただし、高々とジャンプする場合、「離陸まで体を持ち上げるエネルギー」は、「運動エネルギー」に比べて非常に小さい。こういう数値は無視した方が、現象の本質が見えてくることが多い。

ここでも無視して、「腰を沈める深さ」=「身長の6分1」とすれば、各選手の跳躍高度は、次の式で表される。

つまり、出力が大きく、身長が高く、体重が軽いほど、記録は伸びる。

これで計算した各選手の記録を、下位から順に発表しよう。

【5位】ガンダム 跳躍高度2m68cm

身長180cmの人が、26.8cmしか跳べないのと同じ……いや、胸を張れ、ガンダム! リアリティーの証しだ。

実戦でも困らない。推力55.5tのスラスターを噴射すれば、体重43.4tを上回るからどこまでも上昇できるし、全備重量60tでも、高度29mまで跳び上がれる。

おお~っと、ここでドラミちゃんが乱入! 身長1m、体重91kgの彼女は、出力なんと1万馬力=7355kW。しかし、マンガで測ると足の長さが16cmしかない。その3分の1まで腰を沈めるとすれば、足のこの短さにもかかわらず、跳躍高度は34m! フル装備のガンダムは、スラスターを使ってもドラミちゃんに負ける! なんてリアルなんだ。

【4位】メガボイジャー 跳躍高度81m

体重の重さが効いて記録は伸びないが、70mの身長より11mも高く跳べるとは、その大重量にしては見事。4780万kWの凄さがヒシヒシと伝わってくる。

【銅メダル】マジンガーZ 跳躍高度286m

体重20tという軽さが効いている。69万9000kWも大きく貢献している。

【銀メダル】エヴァンゲリオン 跳躍高度743m

東京一高い塔(634m)を跳び越えた! さすが、4620万kW。

【金メダル】鉄腕アトム 跳躍高度864m

身長は低いけど、選手の中で1人だけ体重が[㎏]単位というのがモーレツに功を奏した。おめでとう、アトム!

ロボット五輪第2種目「短距離走」

続いては「短距離走」。

マジンガーZとエヴァンゲリオンは、作品中で見事な走りを見せ、それがストーリーを大きく動かした。そのスピードは、アニメの描写から計算できる。また、いくつかのデータを照らし合わせると、走る速さは、垂直跳びで離陸する速度の2倍になるようだ。他の選手たちには、これを適用しよう。

さて、各選手の走行速度と100m走のタイムは次の通り。巨大なロボットたちが100m走に挑むのに違和感を覚えるかもしれないが、実感しやすいように、あえて加えてみた。

【5位】ガンダム タイム6秒89(時速52km)

えっ、速くない!? と驚くが、垂直跳びで2m68cmを記録する人がいたら、このスピードで走れるということだ。

【4位】メガボイジャー タイム1秒25(時速288km)

巨体なのに速い! しかし、体重4万tもあるロボットがこんなスピードで走ったら、大変なことになるだろうなあ。

【銅メダル】マジンガーZ タイム0秒72(時速500km)

マジンガーZの走る速度は時速360kmとよく言われているが、それは初期の設定で、三つ首機械獣・ケルベロスJ3との戦いでパワーアップされた。ストップウォッチで計ってみると、改造前は10歩を走るのに2.62秒かかっていたが、改造後は1.86秒。これは、走る速度が1.4倍に向上したということだ。ここから走行速度は時速500kmとなる。

【銀メダル】鉄腕アトム タイム0秒38(時速937km)

864mジャンプするための離陸速度は秒速130m。走る速度は2倍の秒速260m=時速937m。ジェット旅客機の巡航速度は速いものでも時速900kmだから、アトムは飛行機に乗るより走った方が速い!

【金メダル】エヴァンゲリオン タイム0秒24(時速1512km)

第10使徒サハクィエルとの戦いで、エヴァは激走を見せた。アニメのコマを数えたら、右膝を上げてから次に右膝を上げるまで、わずか8コマ。すると1歩を4コマで走ったことになり、アニメは1秒に30コマだから、1秒に30÷4=7.5歩。

ウサイン・ボルトは世界記録を出したとき、身長の1.4倍の歩幅で走った。ここから身長40mのエヴァが56mの歩幅で走るとすれば、1秒に進む距離は56m×7.5=420m。すなわち秒速420m=時速1512km。マッハ1.24である! 走って超音速とはオソロシイ。

ロボット五輪最終種目「ボクシング」

最終種目は「ボクシング」。

とはいっても、攻防のテクニックなどは科学では導き出せないので、ここでは体格と出力から、パンチ1発に全出力を込めた場合のエネルギーと、砕ける球形の岩の直径を求めよう。これはジャンプと違って、体重の重い方が有利になる。

【5位】鉄腕アトム パンチ1発26万6000J/直径1.23m
おお、自分の身長135cmに近い岩が砕けるとはすごい。最下位は残念だけど、1人だけズバ抜けて小さいから、仕方がないかな~。

【4位】ガンダム パンチ1発1億5300万J/直径10.3m
2種目でリアリティーを証明したが、ついに最下位脱出。おめでとう!

【銅メダル】マジンガーZ パンチ1発44億7000万J/直径31.6m
とうとう自分の身長(18m)を超える岩をブチ砕く強者が登場した。すごいぞ、僕らのマジンガーZ!

【銀メダル】エヴァンゲリオン パンチ1発4兆3600億J/直径314m
なんと、東京タワー(333m)に迫る岩を木っ端みじん。さすが汎用人型決戦兵器!

【金メダル】メガボイジャー パンチ1発405兆J/直径1420m
あんぐり……。6500万馬力というのが、いかに常軌を逸しているか、実感できますなあ。もう、「馬力の暴君」と呼ばせてください。

結果を集計すると、次の通り。

銀、金、銀と全種目でメダルを取ったエヴァンゲリオンはすごい。全て銅とはいえ、マジンガーZも全種目でメダルを獲得。アトムも身のこなし系の種目で金銀をゲット。メガボイジャーは金1個だけど、その内容が途轍もない。ガンダムはメダルこそ取れなかったが、それでこそガンダムだ。

ロボットたちに与えられた数値には、作品を生み出した人たちの夢が込められている。大きく、強く、そしてリアルに。それは作品を見る人たちにも確かに伝わっている。だから、ロボットアニメは繚乱の花を咲かせ、戦隊ロボは40年もの歴史を有するのだ。

アトムに憧れてロボット研究の道に進んだ人は多いと聞くが、他のロボットたちも技術の道を目指す若者たちに勇気と熱意を与えているに違いない。人間の想像力は本当に素晴らしい!

※原稿では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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