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空想未来研究所2.0

ヨルさんの放つ驚異のマッハ超えエネルギー!/SPY×FAMILY(スパイファミリー)

『SPY×FAMILY』で描かれたエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「驚異のアクション」。年末に映画『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の公開も予定され、マンガもアニメも乗りに乗っている『SPY×FAMILY』から、主人公の一人、ヨルさんのアクションをエネルギーの観点から考察しました。

『SPY×FAMILY』がオモシロイ!

物語の舞台は、冷戦中の東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)。西国のスパイ〈黄昏(たそがれ)〉に、オペレーションが命じられる。東国の国家統一党総裁の息子が通う名門校に、自分の子どもを入学させて、懇親会に潜入せよ、と。だが、入学試験は1週間後で、黄昏は独身だ。

急遽6歳の子どもと妻が必要となった黄昏は、「精神科医ロイド・フォージャー」と名乗って、孤児院にいたアーニャと養子縁組する。さらに、市役所勤務のヨル・ブライアと結婚して、親子3人の家庭を築くことに成功した。

だが、彼は知らなかった。アーニャは人の心が読める超能力者(エスパー)! 美人だけど、地味で不器用そうに思われた妻ヨルの正体は、「いばら姫」のコードネームを持つ殺し屋! アーニャは居場所を得るために、ヨルは世間に怪しまれずに仕事を続けるために、家族が必要だったのだ。

ヨルは黄昏の正体に気付いていないが、黄昏もヨルの素顔を知らない。真実を知っているのは、アーニャだけ! こうして、スパイ、殺し屋、超能力者の偽装家族が成立した。それでも3人は、生来の優しさ、生真面目さ、ひたむきさで互いに支え合い、しっかり家族になっていく。

この心温まる物語の中で、エネルギーの視点から注目したいのは、ヨルさんだ。

表向きの姿は、バーリント市役所に勤務する27歳。丁寧な言葉遣いは、殺し屋のときも変わらない。「大変恐縮なのですが…」と切り出し「息の根 止めさせていただいてもよろしいでしょうか」と同意を求めた後、容赦なく仕事をやり遂げる! ひそかに暗殺するのではなく、正面から平然と乗り込んでいって、鎧袖一触(がいしゅういっしょく)に仕事を済ませるのだ。

そんなことができるのは、ヨルさんが猛烈に強いから。暴れ牛の秘孔を突いて黙らせたり、カボチャを貫手(指を伸ばして突く空手の技)で木っ端みじんにしたり。そんなヨルさんが発揮しているエネルギーを考えてみたい。

ヨルさん、テニスボールをガットで切断!

ヨルさんのプレーの中で、よく質問を受けるのが、コミックス6巻のシーンだ。それだけ多くの人の印象に残っているのだろう。

ヨルさんはテニスの試合をすることになった。相手は「全力でかかってきなさい」と威丈高。ヨルさんは「手を抜いて打っては相手に失礼」と考え、ラケットを振る。すると、シャオンと空気を切る音がして、ボールは地面に落下した。

一見、空振りしたかに見えたが、そうではなかった。直後、ボールはガットの形そのままに、パカッと無数の破片に分かれたのだ。「シャオン」は空気を切る音ではなく、ボールを切る音だった! それは人間にできることなのか?

硬式テニスボールは、直径6cm、厚さ3.5mmのコアボール(ゴム製)をフェルトが包む構造になっている。全体の直径は6.7cm(規格の中間値)だ。マンガでは、ボールに縦横5本ずつの切れ目が走っている。

注目は、この切断が、刃物ではなく、ガットで行われたことだ。刃物による切断では、最初に切り込むことができれば、後は同じ力で切り進められる。このため必要な力は、材質が同じなら「刃物が当たる長さ」で決まる。

ところがガットのように鋭くないもので切る場合は、圧力が限界を超えた瞬間にブツッと切れるため、切断した断面積が問題になる。

そこで実験した。体重計の上に平らな金属片を載せ、その上に1.1mm角の輪ゴムを置いて、ドライバーの先端を押し付けたところ、体重計が16kgを表示した瞬間、輪ゴムはブツッと切れた。その断面積は、1.21mm2である。

では、テニスボールの場合はどうか。フェルトも含めて考えると、ハードルが急に上がるので、最低の力を求める意味で、コアボールを切るための力を考えよう。直径6cm、厚さ3mmの中空の球体に、1cm間隔で縦横5本ずつの切れ目を入れると、断面積の合計は62.1cm2になる。これは、1.21mm2の5130倍だ。

また、ガットの直径は1.5mmで、ドライバーの先端の厚さは1mm。ここから必要な力は、5130×1.5=7700倍になると考えられる。すると、ヨルさんが発揮した力は123t!

しかも驚くべきは、これだけの力を「空中のボール」に与えたことだ。空中の物体に力をかけると動いてしまい、大きな力はかけられない。それでも切れたということは、ボールがほとんど動くヒマもないほどのスピードでラケットを振り抜いたのだろう。

空振りしたように見えたのだから、ボールは1mmしか動かなかったと仮定しよう。57.6gのテニスボールに123tもの力がかかると、わずか0.0000098秒で1mm動いてしまう。ヨルさんのラケットはボールをコマ切れにしたのだから、この短い時間にボールの直径分+1mmを動いたはずなのだ。そのスピードは、時速2万5100km=マッハ20.5!

ヨルさんのラケットが、質量300g、長さ68.6cm(27インチ)だったとすると、そのスイートスポットをマッハ20.5で動かすためのエネルギーとは1090万J(ジュール)=2600kcal。

人間が外部に仕事をするとき、体内ではその4.67倍のエネルギーが消費される。このケースでは1万2000kcalだ。27歳女性が日常生活で必要とするエネルギーは2000kcal。なんとヨルさんは、この1振りで日常生活6日分のエネルギーを消費したことになる。

ヨルさん、バレーボールを宇宙まで飛ばす!

第10巻、ヨルさんがデパートに出かけると、前も見えないほどたくさんの箱を抱えた女性が、階段で転びそうになった。ヨルさんは左手で箱6つ、左足で箱8つを受け止め、右手で女性の手首を握って転倒を防ぐ。この俊敏な動きにほれ込んだ女性は、ヨルさんにバレーボールの助っ人を頼む。

バレーボール未経験のヨルさんは、いろいろルール違反を犯すが、やがて実力を発揮し始める。指1本でレシーブしたり、サーブをネットに当てて相手の後衛にまで引き伸ばしたり、スパイクで床をクレーターのようにへこませたり、打ったボールが体育館の屋根を突き破ったり、そのボールが宇宙にまで飛んでいったり……最後のヤツ、すご過ぎないですか!?

マンガのコマで測定すると、ボールは地球の直径(1万2800km)の82%の高さまで上昇している。高度1万500kmまで上がったということだ。国際宇宙ステーションの周回高度(400km)の26倍だ。物体をこの高さまで打ち上げるための速度とはマッハ25.9である。

このとき発揮したエネルギーは、手を振った速度で決まる。バレーボールが床でバウンドすると、ぶつかった速度の74%で跳ね返る。これを科学では、「反発係数0.74」と表現する。ヨルさんの手とボールの反発係数も0.74だとすると、体重が50kgだとすれば、ヨルさんが手を振った速度は時速2万3200km=マッハ20.3! この人、ラケットを振っても手を振っても、マッハ20を超えるのだ!

このとき発揮したエネルギーは1770万J=4230kcalなのだが、この数値には違和感を覚える人もいるだろう。

バレーボールでは、手の速度マッハ20.3、エネルギー4230kcal。
テニスでは、ラケットの速度マッハ20.5、エネルギー2600kcal。

重いラケットを、わずかとはいえ速く振ったのに、なぜエネルギーが小さいのか。

その秘密は、「棒を振ると、先端に近いほど速く動く」ことにある。本稿では、ヨルさんの「肩から手のひらの中心までの長さ」を55cmと仮定している。これに対してラケットのスイートスポットは肩から1m3cm。そこがマッハ20.3で動くとき、手のひらの中心はマッハ10.9でしか動いていない。だからこうした「逆転現象」が起きるのだ。

というわけで、宇宙までのスパイクで、ヨルさんの体内で消費されたエネルギーは、4230×4.67=1万9800kcal。日常生活10日分である。

ヨルさん、人間をバウンドさせる!

さらに驚くのは、第4巻のシーンだ。

路地裏で悪人がアーニャを襲う。そこへ現れたヨルさんが黙っているはずもなく、強烈な回し蹴り! 蹴られた男は、路地の左の壁にぶつかって跳ね返り、道路にぶつかって跳ね返り、右の壁にぶつかって跳ね返り、ついに左壁の下部に落下した。ボールのように何度もバウンドしたのだ、人間が!

バウンドしたとなると、考えざるを得ない。壁や道路と、人体の反発係数って、幾つなの!?

反発係数は、衝突する物体の組み合わせによって決まる。カーリングのストーンのようにほとんど変形しないもの同士の場合、反発係数は「1」に近い。粘土のように変形して元に戻らないものや、卵のように壊れるものは「0」だ。人間が猛スピードで壁にぶつかった場合も、骨折するなど大ケガをして、まず跳ね返らないから、反発係数はほぼ0だろう。

ところが、ヨルさんに蹴られた相手は、左の壁⇒道路⇒右の壁と、3回もバウンドした。極めて珍しいことだが、この悪人は、壁などとの反発係数が0.1だった……と考えることにしよう。

マンガのコマから計算すると、悪人が最後に跳ね返ったスピードは時速8.8kmだ。ここで、彼と壁や道路との反発係数が0.1だったらどうなるか?

最後の速度が時速8.8kmなら「右の壁にぶつかる前」は、10倍の時速88kmだったことになる! そして「道路で跳ね返る前」は、時速880kmだったことに! さらに「左の壁で跳ね返る前」は、時速8800kmだった! これはマッハ7.19。つまりヨルさんは、人間を蹴って、マッハ7.19で飛ばしたのだ!

格闘技で回し蹴りが決まったシーンを思い出していただきたい。相手はぐらついたり、ダウンしたりはするが、何mもぶっ飛んだりしない。キックボクサーの回し蹴りは時速60kmにもなるが、相手の体はほとんど動かない。回し蹴りとは、相手を運動させるのではなく、肉体的なダメージを与えるための攻撃なのだ。

その回し蹴りで、ヨルさんは相手をマッハ7.19で飛ばした! 路地裏ではなく広いところで、もっとも飛距離の出る仰角45度で蹴っていたら609km飛んでいた。東京から西に蹴ったら、落下点は広島県尾道市!

詳細は省くが、ヨルさんの足が動いた速度はマッハ259! 発揮したエネルギーは77億4000万J=185万kcalで、体内では864万kcalを消費。日常生活11年10カ月分!

それぞれの事情と思惑から生まれた偽装家族。それでも一緒に暮らすうちに、お互いの心を思いやり、喜怒哀楽を分かち合い、危機に際しては全力で立ち向かうようになる。その気持ちの強さは、偽装ではない普通の家族にも決して劣らないのだろう。人間の想像力は本当に素晴らしい!

※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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