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空想未来研究所2.0

全世界の消費エネルギー3600億年分!「かめはめ波」のエネルギーがすごすぎる/ドラゴンボール

『ドラゴンボール』で描かれたエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「かめはめ波」。アニメ新シリーズが今年の秋にスタートする予定の『ドラゴンボール』で、孫悟空をはじめ多くのキャラクターたちが使った必殺技「かめはめ波」について、エネルギーの観点から考察しました。

ドラゴンボールへの思いを込めて

鳥山明先生が亡くなって、初めて執筆する『空想未来研究所2.0』である。先生の偉大さや、早過ぎるご逝去を悼む気持ちについては、既に多くの方々が心を込めた発信をされている。この場を借りて、筆者が書くべきことが残っているとしたら、これしかないだろう。「かめはめ波」のエネルギーだ!

亀仙人が放つのを見て、見よう見まねで撃って以来、悟空はこの技を磨き、パワーアップさせてきた。最終的にはクリリンが「あんな位置関係から撃ったら この地球がぶっ壊れちまうぞ…!!」と脂汗を流すほどに。

筆者の世代で、スペシウム光線や、ライダーキックを知らない人はいない。かめはめ波はそれ以上に、世界中の広い世代に知られている。その点で、史上最強の必殺技と言えるだろう。

鳥山先生と『ドラゴンボール』への思いを込めて、この偉大な技がどれほどのエネルギーを放っていたのかを考えよう。

潜在エネルギーとは?

両手を右手前に引き寄せて、「か~め~は~め~」とタメを作り、「波~ッ!」と叫んで両手を突き出す。多くの人がやったことのあるポーズだろう。もちろん現実世界では何も起きないが、マンガやアニメの中では、手からビームのようなものが放たれて、前方の物体を破壊する。どうすれば、そんなことが可能なのか。

それについては、亀仙人が初めてかめはめ波の体勢に入ったシーンで、ヤムチャがこう言っている。「体内の潜在エネルギーを凝縮して…一気に放出させるといわれる武天老師の大技だ…!!」。

物語が進むと、「体内のエネルギー」は「気」と呼ばれるようになり、かめはめ波も「気を放つ技」となっていくが、残念ながら「気」というものは、科学では確認されていない。

科学で「体内の潜在エネルギー」といえば、体脂肪などが蓄えるエネルギーだ。『ドラゴンボール』の世界に、科学で可能な限り近づく意味で、ここでは、かめはめ波のエネルギー源もこれだと考えよう。

すると、問題の焦点は、人間の体内に物体を破壊するほどのエネルギーが貯蔵されているのかどうかだ。

第23回天下一武道会で、悟空は上空からピッコロに向かってかめはめ波を放ち、直径10m、深さ3mほどのクレーターを作った。これに必要なエネルギーを求めてみよう。

クレーターの形状が「球の一部」だとすると、破壊した岩石の体積は130m3になる。ビルの解体では、コンクリート1m3当たり200gの爆薬が使われるから、このとき放たれたかめはめ波は、0.2[kg/m3]×130[m3]=26[kg]の爆薬と同じエネルギーを持っていたと考えていいだろう。爆薬1kgは950kcalのエネルギーを放つから、2万4700kcalだ。

一方、体脂肪1kgには9000kcalのエネルギーが蓄えられる。26kgの爆薬と同じエネルギーを放つ体脂肪とは2.74kgだ。体重70kg、体脂肪率20%の人には14kgの体脂肪があるから、あなたも私も、直径10mのクレーターを作るぐらいのエネルギーは、楽勝で体内に持っているということだ!

ここで、不思議に思われる人もいるだろう。爆薬に含まれるエネルギー(950kcal/kg)が、同じ重さの体脂肪(9000kcal/kg)の10分の1程度とは、どういうことか?

爆薬として使われるTNТ(トリニトロトルエン)は、重さにして炭素38%、水素2%、酸素38%、窒素22%でできている。エネルギーは炭素と水素の燃焼から生み出され、窒素は反応に関与しない。「燃えるもの」が全体の40%でしかないうえに、酸素もそれらの燃焼には不十分なのだ。

これに対して、典型的な脂肪は炭素78%、水素14%、酸素8%。「燃えるもの」が92%を占める上に、脂肪の燃焼はゆっくり進むので、酸素は周囲の空気からも供給される。

つまり、爆薬は瞬間的にエネルギーを出すから破壊力はあるが、放出するエネルギーは脂肪の方が10倍近くも大きいのだ。

これは朗報である。我々も、体脂肪のエネルギーを一気に放出するエネルギーを身に付けさえすれば、かめはめ波が撃てる!

えっ、具体的にどうするか、ですと? すみません、ちょっとすぐには……。

タコ焼きを作るかめはめ波がスゴイ!

かめはめ波が起こす現象は、「破壊」だけにとどまらない。

レッドリボン軍との戦いの最中、悟空は大ダコに遭遇する。マンガなどでは「頭」のように描かれる「胴」だけで上下5mほどもあり、全長は20mに及ぼうかという超大ダコだ。悟空はこれにかめはめ波を放ち、丸焼きにして「これがホントのタコ焼きだな」と喜んで、足をちぎって食べていた。かめはめ波には「熱源」としての使い方もあるのだ。

現実世界のタコに「胴の長さ25cm、体重3.5kg」という記録がある。これを基に推定すると、大ダコの体重は28t。タコは体の80%が水分で、比熱(1kgの温度を1℃上げるのに必要なエネルギー)は1[kcal/kg・℃]。残りのほとんどを占めるタンパク質の比熱もほぼ同じだ。

すると、タコの体温が水温と同じ20℃で、これを100℃に上昇させたとすれば、放ったエネルギーは1[kcal/kg・℃]×2万8000[kg]×80[℃]=224万[kcal]。脂肪250kgに相当し、ちょっと体脂肪からは出せないかも……。

他の使い方として「推進力」がある。第22回天下一武道会でクリリンと対戦した悟空は、猛スピードでジャンプするや、空に向かってかめはめ波を放ち、その反作用を利用して空中で折り返し、クリリンにパンチを見舞った。

かめはめ波の実体が、その名の通り「波」であるとしたら、これはスゴイ。「エネルギーを運ぶ波」の代表は光で、光も「光子ロケット」が検討されているように、推進力を持つ。これを使って、自分の軌道を変化させるためのエネルギーは、次の式で求められる。

エネルギー[J]=体重[kg]×速度の変化[m/秒]×光速[m/秒]

これがかめはめ波にも適用できるとしたら、大変なことになる。光速は秒速3億mという大きな値を持つからだ。

当時、悟空もクリリンも高度50mほどのジャンプを軽々とやっていた。これには秒速31mの離陸速度が必要で、同じ速度で折り返すと、「速度の変化」は秒速62m/秒となる。

悟空の体重を30kgとして、上の式に代入すると、エネルギー=30×62×3億=5580億J。1kcal=4184Jなので、1億3300万kcal、脂肪14.8t分となり、やはり体から出すのは無理か……。

だが、これは、かめはめ波が光と同じ性質を持つと仮定した場合の話。光が推進力を出すのに多大なエネルギーを必要とするのは、光に質量がないからだ。もし、かめはめ波に質量があるとしたら、エネルギーを求める式は、こうなる。

エネルギー[J]=1/2×体重[kg]2×速度の変化[m/秒]2÷かめはめ波の質量[kg]

ここから計算すると、かめはめ波に1gの質量があるとすれば、必要なエネルギーは41万3000kcal、脂肪45.9kg分。かめはめ波が10gなら、エネルギーは4万1300kcal、脂肪4.59kg分。おお、激ヤセするけど、何とかなるのでは?

地球を破壊するエネルギーを求める式がある

すると、冒頭で紹介した「地球の破壊」はどうなるのか。

これは、セル戦で放たれた。そのとき悟空は「超(スーパー)サイヤ人を超えた超サイヤ人」=「超サイヤ人2」になっていて、地上にいるセルに向かって、上空でかめはめ波の構えに入る。

クリリンが「地球がぶっ壊れちまう」と漏らしたのは、このときだ。もちろん、悟空が地球を破壊するはずはなく、瞬間移動して下からセルに向かって放ち、その上半身を吹き飛ばした。もし、このときのかめはめ波が、本当に地球を破壊できるとしたら、そのエネルギーはどれほどなのか!?

地球を“ドッカーン”と爆散させるのは大変なことだ。生じた破片は、互いに重力で引き合うため、すべての破片に重力を振り切るエネルギーを与えなければならないからだ。

エネルギー[J]=3/5×地球質量[kg]×重力加速度[m/秒2]×地球半径[m]

重力加速度とは重力の強さを表す数値で、地球の場合は9.8[m/秒2]の値を持つ。このレベルになると指数表記するほかはなく、地球質量=5.97×1024[kg]、地球半径=6.38×106[m]。

上の式に代入すると、このときのかめはめ波のエネルギーは2.24×1032J。全世界で消費するエネルギー(年間6.3×1020J)の3600億年分である!

吉例に倣って、kcalと脂肪に直せば、5.35×1028kcal、脂肪5.95×1024kg分。ぐわわっ、地球(5.97×1024kg)とほぼ同じ重さの脂肪が必要だっ!

元気玉のエネルギー

これほどのエネルギーを、悟空がどこから手に入れていたのかは分からない。だが、悟空の技には、エネルギーの供給源が明らかになっていたものもある。そう、「オラに元気を分けてくれ―!」が心に残る「元気玉」だ。

魔人ブウは、常軌を超えた再生能力を持っていた。槍で刺されても、バズーカで撃たれても、たちまち傷が回復する。猛毒を盛られてもケロリとしていたし、体がバラバラになっても、その破片の一つ一つを焼かれても、平然と復活していた。

このブウを倒すため、元気玉の発動を提案したのはベジータである。ブウに滅ぼされ、ドラゴンボールでよみがえらせた地球人に、界王様を通じて彼は訴える。

「手を空にむけてあげろ!! おまえたちの力を集めてブウを倒すんだ!! かなり疲れるが心配するな!! おもいきり走った後とおなじようなもんだ!!」

地球人はもちろん、ナメック星人、未来から来た人造人間、人造人間8号、閻魔大王をはじめとするあの世の人たちなど、あらゆる人たちの元気が集まった特大の元気玉は、ついにブウを押しつぶし、消滅させた。ナレーションが戦いの終わりを告げる。「ついに魔人ブウは消え去った……それは文字通り細胞ひとつ残さず完全に消え去ったのである……」。

これはいったい、どれほどのエネルギーだったのか。

細胞を消し去るのは、通常の生物なら簡単である。数百℃にでも加熱すれば、燃え上がったり分解したりして跡形も残らない。その前の戦いで、ベジータが命と引き換えに起こした爆発では、直径数kmはあろうかという光球が発生した。この規模になると、温度は数百万℃に達したはずだ。さすがのブウも、いったんはバラバラになったが、破片がそれぞれ小さなブウとなり、合体して元の姿に戻ったのである。

こうなるともう、細胞のもう一段階下のレベルで破壊するしかないだろう。さすがのブウも、その体は原子でできているはずだ。その構成比が人体と同じとすると、酸素65%、炭素18%、水素10%、窒素3%、その他の原子が微量。

原子を破壊するには、原子核をバラバラにするしかなく、これには莫大なエネルギーが必要だ。詳細は省くが、魔人ブウの体重を100kgとすると、2兆6500億kcal。脂肪に換算すると、なんと25万t分だ!

これほどのエネルギーを提供して、人々は大丈夫だったのか。地球の人口は80億人。それ以外の人々は数が少なかったが、体力が比較にならなかったから、地球人換算で100億人から元気をもらったと仮定しよう。

すると、1人が負担したエネルギーは265kcal。人間が1km走ると体重1kgあたり1kcalを消費する。265kcalとは、体重70kgの人が3.8km走ったときに消費するエネルギーだ。確かに思い切り走った後くらい! ベジータの言葉は、科学的にも正しかった!

クレーターを作り、大ダコを焼き、空中で方向転換し、地球を破壊する。たった一つの技が、これほどバラエティー豊かに使われた例は多くはないだろう。自分が生み出したものから、次々に新しいものを生み出してこられたのでは……と推察する。我々は、それらをシャワーのように浴びてきた。同じ経験をした人たちが世界中にいることを、まことに心強く思う。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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