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空想未来研究所2.0

最高視力は18万!五感を研ぎ澄ませ過ぎたヒーロー&怪獣たちの超能力

特撮で描かれた視力と聴力について考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「視力・聴力」。SFチックな超能力とは別に、ウルトラマンや怪獣たちが、どれほど見え過ぎ、聞こえ過ぎな力を持っていたのかを考えてみました。

ヒーローや怪獣は五感もすごい

子供のころ、愛読したのが「怪獣図鑑」である。

「ゴジラ」や「ガメラ」などの怪獣映画や、「ウルトラマン」などの特撮番組に出てきたヒーローや怪獣について、身長や体重から、出身地、武器、弱点までが記されていた。体内がどうなっているか、解剖図のようなイラストも載っていた。

特に「ウルトラマン」のようなテレビ番組は1回が30分で、怪獣の登場場面も限られていたから、「レッドキングのパンチは、ダイナマイト1万t分の破壊力」といったスペックは、怪獣図鑑だけに書かれている魅惑の情報であった。

そんな怪獣図鑑で、筆者が特に好きだったのは、次のような記述だ。

・バルタン星人は1万m離れた米粒が見える
・帰ってきたウルトラマンには、200km遠くで落ちた針の音が聞こえる

バルタン星人が分身したり、ウルトラマンがマッハ5で飛んだりするのは、すごい能力だけれど、すごいが故にナットクできた。彼らは遠い宇宙からやって来た異星人なのだから、そんなこともできるのだろうと素直に受け入れていた。

しかし、視力や聴力まですごいとは……!「見る」とか「聞く」は、人間も持っている能力である。なのに、ヒーローや怪獣はそれらの能力までズバ抜けているというのだ。これ、すごく面白くないですか。

今回は、彼らの突出した視力と聴力について考えてみたい。実はこれらは、EMIRAがテーマとするエネルギーとも深い関係があって、たいへん興味深い問題でもある。

怪獣たちのスーパー視力とは?

まず、バルタン星人の「1万m離れた米粒が見える」とは、どれほど目がいいということだろうか。

視力を定義すると「目を中心にして、どれだけ狭い角度が認識できるか」である。

目を頂点にして上下や左右に60分の1度だけ離れたものが区別できれば、視力は1.0。その角度を測るのは難しいので、実際の視力検査では、5mの距離からランドルト環(Cの字のような記号)の幅1.5mmの隙間がどこを向いているか識別できれば、視力「1.0」と認定される。

これと同じ検査にバルタン星人が臨んだ場合、どれほどの視力と診断されるのか?

米粒の長径を5mmとすれば、1万m=10km離れたバルタン星人の目を頂点にすると、その両端は3万5000分の1度だけ離れている。3万5000÷60=583だから、バルタン星人の視力は驚きの「583」だ!

だが、これほどすごいバルタン星人も宇宙No.1ではない。

筆者が知る限り、最もすごい視力を誇るのが、「ウルトラマンタロウ」(1973~1974年)に登場した「うす怪獣 モチロン」だ。怪獣図鑑によれば、この怪獣には「5万km離れた餅が見える」という。

これはものすごいことで、餅の直径を8cmとすると、この怪獣の視力はなんと「18万」!しかも、怪獣図鑑のこの記述は、科学的に考えると、ますます面白い。

この空前絶後の視力王、身長は55mで、目は臼の形をした胴体についている。地上から目までの高さは30mほどだろう。

地球は丸いから、この高さの目からは、20km以上離れた地点は地平線の向こうに隠れて見えないことになる。つまり、5万kmの視力も宝の持ち腐れ!

また、モチロンは普段は月に住んでいるが、月から地球まで38万kmもあるから、月面から地球の餅は見えない!

すごい能力なのに、地球でも月でもそれが発揮される場面がないとは、あまりに無念な怪獣モチロンである。

目を見張る目のよさ!

と、このように「目がいい」というと、まず視力が注目されるが、光のエネルギーと関係が深いのは、「どれほど暗い光まで感知できるのか」だ。

光の明るさを表す量に「照度」がある。単位は「ルクス(lx)」で、光源そのものの明るさではなく、光源に照らされた面の明るさを指す。

晴れた昼間の地面の明るさが10万ルクス、曇りの日が3万ルクス。野球のナイターの内野が2000~2500ルクス。勉強や読書には500ルクス、食事には150ルクスが適し、新聞を読むには最低でも5ルクスが必要。満月の夜の地面が0.25ルクス、晴れた日の夜の明るさ、つまり星明かりが0.02ルクス。この星明かりぐらいが、人間が活動できる限界だろう。

その点、これまた「ウルトラマンタロウ」に登場する「大ダコ怪獣 タガール」には驚く。

その能力は「2万mの深海でも1万m先が見える」。これを科学的に考えると、本当にモノスゴイ!

海中では、光は水に吸収されて、100m進むごとに100分の1の暗さになる。晴れた昼間、海面に10万ルクスの光が降り注いでいても、100mの深さでは1000ルクス。200mの深さでは10ルクス。どんどん暗くなっていくのだ。

では、タガールの視力が発揮される「深海2万m」だと、どうなるのだろうか。

海面の10万ルクスに比べると、明るさは400桁ダウンである。その上、「1万m先が見える」のだから、400桁ダウンの光がタガールから1万m先のものに当たって反射し、タガールのもとに届くまでにまた200桁下がる。つまり海面の10万ルクスからは600桁ダウン!

これがどういうことかというと、怪獣タガールには、

0.0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000001ルクスの光が見えるのだ!(※小数点以下の0が594個)

もう、何が何だか分かりません。

ウルトラマンの聴力は役に立つか?

続いて聴力を考えてみよう。「200km遠くで落ちた針の音が聞こえる」という、帰ってきたウルトラマンはどれほどすごいのか。

これについては、実際に床に針を落とす実験をしてみた。筆者の耳では、距離80cmだと聞き取れて、1mでは落ちる角度によって、聞こえたり聞こえなかったりした。

ここから、針が落ちる音が人間に聞こえる限界は1mだと考えていいだろう。すると、距離200km=20万mで聞こえるウルトラマンは、筆者より20万倍も遠くの音が聞こえるということになる。

しかも「耳のよさ」は20万倍どころではない。

音はドーム状に広がっていくので、距離が遠くなると、そのエネルギーは距離の2乗に反比例して小さくなる。20万の2乗は400億だから、エネルギーは400億分の1に。それでも聞こえるウルトラマンは、筆者の400億倍も耳が鋭敏ということだ!ものすごい!

ただし、ウルトラマンの場合は、別の問題が浮上してくる。

空気中を音が伝わるには、時間がかかる。気温にもよるが、1kmあたりおよそ3秒。200kmも離れたところからだと600秒=10分もかかる。

しかし、皆さんご存知のように、ウルトラマンの活動時間は、わすかに3分間!

200km遠くの音が届いたときには、とっくに3分たって、正義のチーム・MATの郷隊員に戻ってしまっている!せっかくのウルトラ聴力も、結局は役に立たない……。

人間も持つ能力を、はるかな極みにまで高めたヒーローや怪獣たち。高め過ぎて、もはや役に立たないレベルになっている。だが、その過剰な能力が大きな魅力になっていたことは間違いない。人間の想像力はまことに素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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