空想未来研究所2.0

山じいは太陽そのもの!平成の30年間に誕生したアニメ・マンガの衝撃設定

空想世界の平成30年史をエネルギー視点で振り返ってみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「平成」。もうすぐ平成が終わるので、この30年の間に生み出されたアニメ、マンガ、特撮番組の中から、筆者の柳田理科雄主任研究員が特に驚いた設定を紹介します!

平成30年を彩った空想作品たち

明けましておめでとうございます。平成最後のお正月となりました。

どっぷり濃厚な昭和のアニメや特撮番組を見ながら育った筆者は、平成のコンテンツは少々淡白で小粒ではないかなあ……などと思うこともあった。ところが今、静かに振り返ってみれば、決してそうではない。

「驚愕(きょうがく)の平成」というべきか、昭和の時代には考えられなかった世界観やキャラクターたちが続々と現れて、驚いたことが何度もあった。

そこで今回は、過ぎゆく平成を惜しみつつ、筆者が大きな衝撃を受けた作品設定や登場人物の能力について、エネルギーの視点から振り返ってみたい。

エヴァが戦うと日本は電力不足になる

まずは『新世紀エヴァンゲリオン』(平成7~8年※テレビシリーズ)だ。

次々と襲来する謎の生物「使徒」に、汎用人型決戦兵器で立ち向かうこの物語のインパクトは大きかった。その最たる部分は動力。エヴァンゲリオンにはケーブルが付いていて、そこから供給される“電力”で稼働するシステムなのだ!

主人公の碇シンジが登場する紫色のエヴァンゲリオン初号機。そのサイズは作品中では示されていなかったが、『スーパーロボット画報』(竹書房)によれば、「全高40~700m、重量700t~9.6万t」と伝えている。

後ろの方のとてつもない数値は、物語の終盤で巨大化したときのものと思われるので、ここでは初号機の普段のサイズを「全高40m、重量700t」と考えよう。

この初号機をはじめとする3体のエヴァンゲリオンは、通常はアンビリカルケーブルと呼ばれるケーブルから供給される電力で稼働する。何らかの理由で接続が切れると、内部電源に切り替えられ、フルパワーなら1分、最長でも5分しか活動できない。“umbilical”とは「へその緒」「命綱」という意味だが、まさにエヴァンゲリオンの命綱なのだ。

では、このアンビリカルケーブルから供給される電力はどれほどか。それは、エヴァンゲリオンの戦いぶりから推測できる。

初号機が最大のパワー(1秒間に消費するエネルギー)で活動したと見られるのは、第3使徒サキエルとの戦いである。ビルに背をもたれてしゃがんだ姿勢から、ほぼ水平にジャンプして、空中で1回転。全高の10倍ほど離れたサキエルの顔面に飛び蹴りを見舞った。

宙を舞っていた時間を実際に計ると2.32秒。この間に全高の10倍=400m跳んだとすれば、そのスピードは時速630kmだ。重量700tの初号機が、しゃがんだ姿勢から足を伸ばすまでのわずかな時間で、新幹線の2倍もの速度に加速したわけである。

これに必要な電力は4600万kW。現実世界の日本の総発電力は1億kWだからおよそ半分。劇中の総発電力は1億8000万kWとされ、この電力は第5使徒ラミエルの討伐に使われていたが、それと比べても4分の1を超える莫大なパワーだ。

エヴァンゲリオンが全力で稼働すると、日本は電力不足に陥らないか……など、エネルギー問題がいろいろ気になるアニメであった。

ついに宇宙まで!びっくり仰天の平成仮面ライダー

平成12年から始まった“平成仮面ライダーシリーズ”にもオドロキが満載だった。

ライダーが警察と協力したり(クウガ・アギト)、ライダーが13人もいたり(龍騎)、ライダーがバイクより速く走れたり(555・カブト)、ライダーがバイクに乗らなかったり(ドライブ)……!

中でも驚いたのは『仮面ライダーフォーゼ』(平成23~24年)。ついに仮面ライダーが宇宙に進出した!

物語の舞台は歴代仮面ライダーが実在した世界で、天ノ川学園高校には、“仮面ライダー部”が存在する。その部室「ラビットハッチ」があるのは、なんと月面! 学校のロッカーに入ると、そのラビットハッチに瞬時に行けるのだ。

これが可能なのは、宇宙に満ち満ちる「コズミックエナジー」を物質化するなどさまざまなことができる「アストロスイッチ」の存在。このアストロスイッチの一つである「ゲートスイッチ」によって空間が歪曲(わいきょく)され、ロッカーとラビットハッチはつながっているのだ。

非常に便利だが、フォーゼはこれを使わずに、現実世界と同じ方法で宇宙に行くこともある。なぜなら、敵の怪人・ゾディアーツの中には、体内に莫大なエネルギーを秘めた個体がいて、地上で爆発させると周囲に被害が及ぶため、宇宙空間で倒す必要があるのだ。

最初に戦った怪人、オリオン・ゾディアーツもその一人。その宇宙への運び方は驚異的だった。

フォーゼの支援マシン「パワーダイザー」が小型ミサイルでゾディアーツを空中に打ち上げると、発射台に変形。それにフォーゼが乗ったバイクがセットされる。発射されたバイクは空中でゾディアーツのどてっぱらに衝突し、そのままぐんぐん上昇して、宇宙空間に出た!

なんと、バイクで宇宙に行く。さすが仮面ライダーだが、これにはどれほどのエネルギーが必要なのだろうか。

フォーゼのバイク「マシンマッシグラー」の動力源は、次世代型水素燃料エンジン。水素を燃料として宇宙空間に行くには、現実世界のロケットと同じように、酸素と反応させて、高温高圧の水蒸気を噴き出す必要があるだろう。

この場合に必要な燃料は、「運ぶ荷物の重さ」と「高度」によって決まる。マシンマッシグラーの車重は132kg、フォーゼの体重は98kg、オリオン・ゾディアーツの体重は225kg。合計455kgである。また、宇宙からの地球の見え方から推測すると、上昇した高度は、おそらく地球の半径に等しい6400km。455kgの物体をこの高度まで打ち上げるには、水素を燃料とする限り、荷物の4.8倍=2.2tの燃料が必要だ。わずか132㎏のバイクに、これほどの燃料が積まれていたとは……オドロキである。

マッハで自走する平成仮面ライダーにも驚愕

もう一つ、エネルギーの面でビックリしたのが、仮面ライダー555(ファイズ、平成15~16年)。

アクセルフォームにチェンジすると、10秒間だけ通常形態の1000倍の速度で動ける。通常形態の100mのタイムは5.8秒だから、100mを0.0058秒で走れるということだ。そのスピードは時速6万2000km=マッハ51!

彼のバイク・オートバジンは、最高時速380kmだから、バイクに乗るより走った方が160倍も速いということになる。もはや“ライダー”を看板に掲げる必要もない!?

これほどのスピードとなると、エネルギー消費がハンパではない。

高速で走るには、速度の3乗に比例するパワーが必要だ。陸上選手は短距離走で2.2kWを消費するといわれる。これが555と同じ体格(186cm・91kg)で100mを10秒で走る選手の値だとすると、100mを5.8秒で走る555のスピードは、その1.724倍。すると2.2kW×5.124(1.724の3乗)=11.3kWを消費するわけだ。

これがアクセルモードになると、さらに1000の3乗=10億倍で、113億kW! エヴァンゲリオンを250倍も上回ってしまう。わずか10秒とはいえ、強過ぎる。

エネルギー量が異次元!1500万℃の炎を放つ死神の長

エネルギーという点で、さらに驚愕するのは、『BLEACH』(平成13~28年※マンガ版)の山本元柳斎重國。年齢は2000歳を超え、若い死神たちから「山じい」と慕われている。

『BLEACH』に登場する死神たちは「斬魄刀(ざんぱくとう)」という刀を持っていて、その能力を全て引き出すことを「卍解(ばんかい)」という。山じいの斬魄刀「流刃若火(りゅうじんじゃっか)」は卍解時の名前を「残火の太刀」といい、東西南北の4つの形態になる。その一つである“西”が「残日獄衣(ざんじつごくい)」。これが発動すると、山じいの体は1500万℃の炎に包まれ、相手を焼き焦がす!

山じいは「卍解した儂(わし)は その身と刃に太陽を纏っておるものと思え」と言っていたが、太陽の表面でさえ6000℃であり、1500万℃とは太陽の中心部の温度である! 科学的には「太陽にのみ込まれたものと思え」と言っていただきたかった。

そんな高温の炎を浴びたら、どうなるのか。

高温の物体が1秒間に放つエネルギーは、「表面積」と「温度の4乗」に比例する。炎の表面積は、マンガの描写からは分からないので、最低限の値を求める意味で、人体の表面積=1.6mで計算しよう。炎の表面積は、少なくともそれより広いはずだ。

ここで注意が必要なのは、「温度の4乗に比例」。数式もいろいろあるが、「4乗に比例」は珍しい。その温度が1500万℃もあったら、大変なことになる。

計算結果は460京kW(京=10の16乗)。

そのエネルギーをアラビア数字で表して、今回振り返ったキャラたちと比較すると、こうなる。

エヴァンゲリオン=46,000,000kW
日本の総発電力 =100,000,000kW
仮面ライダー555=11,300,000,000kW
山本元柳斎重國=4,600,000,000,000,000,000kW

マンガの描写から、山じいは3分ほど残日獄衣を放っていた模様。こんな熱を3分も放ち続けると、山じいを中心に半径25kmの地面が、まあるくお椀のように溶ける!

バイクで宇宙に行ったり、途轍もないエネルギーを平然と放ったり、アニメやマンガの平成は、素晴らしい30年だった。現実世界でも、来たるべき次の時代は、明るくエネルギッシュであってほしい。空想の世界が、いつもそうであるように。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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