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「核融合」を3分解説!

原子核同士の合体から発生する膨大なエネルギーを活用する技術開発

エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 第23回のテーマは「核融合」。太陽や星を輝かせるほどのエネルギーを放つ核融合とはどのようなものなのか。最低限知っておきたいポイントを解説します。

核融合とは、原子核同士がくっつく反応

核融合とは、原子核同士が合体する反応を指し、太陽の輝きを生み出すほど、その反応の過程で膨大なエネルギーを発生させます。

核融合反応の例として、水素の一種である重水素(D)と三重水素(T)の反応が挙げられますが、燃料(D、T)1gから生じる核融合エネルギーは、石油8tを燃やしたエネルギーに相当します。

この大きなエネルギーを持続的に取り出せるようにし、さらには発電などでの利用を目指して、日本や世界で核融合研究が進められてきました。

核融合反応を起こすには、原子核を高速(毎秒1000km以上)でぶつける必要があり、その速度を得るため原子核を1億℃以上に加熱しなければなりません。

このような高温下では、DやTはプラズマ(原子がプラスの電荷を持つ原子核とマイナスの電荷を持つ電子に分かれ、高速かつ不規則に運動している状態)になるため、反応の持続には、プラズマを超高温で高密度に、長時間閉じ込める技術が必要となります。

核融合の研究開発と国際協力

世界の核融合研究は、1950年代から始まりました。

一般的に研究開発は、(1)科学的実現性の確立、(2)科学的・技術的実現性の確立、(3)技術的実証・経済的実現性の確立、という3段階に分かれています。

まず、原子核を高温かつ高密度に長時間閉じ込める方式に関する研究が進められ、トカマク方式、ヘリカル方式、レーザー方式などに代表される複数の方式が研究されてきました。

その中で最も研究が進んでいるのがトカマク方式です。

科学的実現性の研究が完了し、茨城県那珂市で2022年度内に運転開始予定の「JT-60SA」(核融合エネルギー早期実現のため日欧共同実施するプロジェクト)やフランス南部で稼働準備が進む「ITER」(イーター。国際熱核融合実験炉。後述)がこの方式で建設されています。

現在は、科学的・技術的実現性の確立を目指す段階で、外部からの加熱を止めても核融合反応による熱でプラズマの温度を維持できる条件(自己点火条件)の達成を目指しています。

ITERのプロジェクトは、トカマク型核融合実験炉の建設・運用に関する国際協力事業であり、現在は7極(日本、EU、米国、韓国、中国、ロシア、インドの35カ国)が参加しています。

1988年からITERの設計が開始され、2007年からフランスで建設がスタート、参加極の企業が各国で部品を製作し、現地で統合しながら建設が進められています。

その中で日本は、超電導磁石やプラズマ加熱装置などの開発を担当しています。

技術開発の波及効果と実用化に向けた課題

核融合は、燃料となる資源が海水から採取できることや、反応によって温室効果ガスを発生させないことから、脱炭素化に向けた研究開発の一つとして注目を集めています。

そのため日本や米国、英国、フランスなどで、核融合に関連した技術開発ベンチャー企業の動きも活発です。

日本では、京都大学発のスタートアップとして、京都フュージョニアリング株式会社が2019年に設立されました。

核融合に関連する材料や機器には、超低温や超高温高圧などこれまでに経験したことのない厳しい条件が課されています。

ここで培われた技術は、電機や機械、化学、窯業(ようぎょう)など他分野でも活用されており、幅広く技術を発展させると期待されています。

ただし、核融合エネルギーを用いた発電の実用化には、まだ時間がかかります。

ITERは実験炉であり、2025年に運転開始、2035年に核融合反応を開始予定ですが、目標である自己点火条件の達成時期は未定であり、またITERでは発電の実証実験は行われません。

ここでの成果を踏まえながら、核融合炉の材料劣化といった工学的な課題を解決し、発電の実証炉を設計・建設そして運用した先に、実用化が待っています。

参考:
・量子科学技術研究開発機構「核融合入門 誰でも分かる核融合のしくみ
・量子科学技術研究開発機構「ITER計画
・文部科学省「核融合エネルギーとは

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