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エネルギーの革新者

「EMIRAビジコン2022」最優秀賞が決まる。全国の学生145チームの頂点に立ったのは?

「住まい方×エネルギー」をテーマにしたビジネスアイデアコンテストの最終審査が開催される

2020年から始まった、EMIRAと早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(以下、PEP)が共同で開催する学生ビジネスアイデアコンテスト「EMIRAビジコン エネルギー・インカレ」。2022年で3回目となるこのコンテストの最終審査が2月12日に東京都内で開かれ、最終審査に残った5チームによるプレゼンテーションが行われた。最も優れたアイデアに授与されるEMIRA最優秀賞に輝いたのは、どのアイデアか?

2022年のテーマは「住まい方×エネルギー」

イノベーションを「エネルギー」という視点から読み解いて未来を考えるメディア「EMIRA」と、電力・エネルギー業界の人材育成を進める「PEP」がタッグを組んで開催した「EMIRAビジコン2022 エネルギー・インカレ」。その最終審査が、2022年2月12日に東京都内で行われた。

>第1回「SDGs×エネルギー」リポートはこちら
>第2回「食×エネルギー」リポートはこちら

2021年に続いて今回もオンラインでの実施となった最終審査会

今回テーマとなったのは「住まい方×エネルギー」。

新型コロナウイルス感染症の拡大によって自宅で過ごす時間が増えたことを機に、電力をはじめとするエネルギーの使い方を見つめ直し、サステナブルな社会の実現を目指すビジネスアイデアが全国の学生145チームから集まった。

2021年10月1日から12月13日の2カ月半にわたり、理系・文系を問わず全国の大学生・大学院生からビジネスアイデアを募った。

厳正な審査が行われ、最終審査に残ったのは以下の5チーム。

———————————————–
【アイデア名/チーム名】
1.廃棄物発電を活性化させる生ゴミの水切り促進アプリ「LivLoop(リブループ)」/LivLoop(早稲田大学・早稲田大学 大学院)
2.スモールハウスによるコンパクトシティ実現/椙山女学園大学 現代マネジメント学部
3.「農耕×テレワーク」省エネルギーな住まい方の創出/赤松・大池(北海道大学 大学院)
4.省エネテクノロジーレンタルサービス/Y-Labo(東京工業大学 物質理工学院)
5.個人向け排出権取引サービス「i-ETS(アイ・エツ)」/NO2(大阪大学 大学院)
———————————————–

昨年に続き、感染対策から審査員5名が東京都内の審査会場に集まり、オンラインによる学生たちのプレゼンテーション後、質疑応答をする形で実施することとなった。

開会に当たり、まずは審査員を務めるEMIRAの亀谷潮太編集長があいさつ。「『住まい方』は、まさに今の時代を象徴するようなテーマ。ぜひ面白いアイデアを聞かせていただいて、日頃の学問の成果を発揮してください」と、最終審査に残った5チームに呼びかけた。

審査員の亀谷編集長

続いて、同じく審査員を務めるPEPプログラムコーディネータ―の林 泰弘教授(早稲田大学 理工学術院)、東京電力エナジーパートナー株式会社 お客さま営業部 副部長の高橋 徹氏、特別審査員を務める早稲田大学 理工学術院の田辺新一教授とO ltd.代表でマカイラ株式会社 事業&ブランド開発プロデューサーの大畑慎治氏(早稲田大学 ビジネススクール ソーシャルイノベーション講師)が紹介され、学生によるプレゼンテーションが始まった。

審査員を務める林教授(左)と高橋氏(右)

特別審査員の田辺教授(左)と大畑氏(右)

スマホアプリにサブスク。学生らしい斬新なアイデアに審査員も感嘆

1組目に登場したのは「LivLoop」。早稲田大学と同大大学院の学生8名によって構成されたチームだ。この日は市川一茶(いっさ)さんが代表して発表した。

披露したアイデアは、家庭で生ごみの水切りを頑張るだけでお金がもらえるスマホアプリ「LivLoop」。コロナ禍により家庭で過ごす時間が増えたことで、家庭ごみ、特に生ごみの量が増えていることに着目した。

最終審査ではプレゼンテーション能力の高さを買われた「LivLoop」。市川さんが代表して発表した

廃棄物を燃料にする「廃棄物発電」の課題に、水分の多い生ごみを燃やすために多くのエネルギーが必要となる反面、発電量が少ないことが挙げられる。

今回のアイデアでは、家庭で水切りをしてもらい、水分の少ない生ごみを発電所に提供して利益を生み、その一部をアプリ利用者に報酬として還元する点が根幹となっている。

さらにアプリで水切りの頻度を管理することにより、長期間頑張るほど報酬が高確率で当たる仕組みを導入する。楽しみながら水切りを行ってもらおうというゲーム性も取り入れられた。

スマホアプリ「LivLoop」のビジネスモデル。アプリ名には、循環型社会を実現させたいという思いが込められている

2組目は、チーム「椙山女学園大学 現代マネジメント学部」。磯谷咲季さん、市川晴菜さん、高橋美央さんがビジネスアイデアを発表した。

変化の兆しはあるものの、日本では依然として「持ち家志向」が強い。とはいえ、「人生100年時代」とも言われるように平均寿命が延び、年齢と共にライフスタイルが大きく変わる現代では、子どもがいることを想定した大きな家に老後も住み続けることはエネルギーロスが大きいことに目を付けた。

磯谷さん、市川さん、高橋さんが順番にビジネスアイデアを披露。プレゼン後に特別審査員の田辺教授から質問を受ける

ライフステージの変化に合わせてエネルギー効率の良い「スマート設計」によるスモールハウスに移り住めるようサポートするWEBサービスを提供し、利益を得ていくというビジネスアイデアだ。

エネルギーや二酸化炭素(以下、CO2)排出量の問題だけでなく、超高齢社会や空き家の問題といった社会課題の解決にも寄与できるとして、発表を締めくくった。

「スマート設計」の事業イメージ。持ち家の売却金でスマートハウスを建てる想定だが、WEB集客する点について、発表後に田辺教授から「販売には対面での説明も求められる部分もあるが面白いアイデア」という評価を受けた

3組目に登場したのは、「赤松・大池」。北海道大学 大学院の赤松大成さんと大池里志さんの2名によるチームだ。

コロナ禍のテレワーク増加による弊害で、仕事と生活(オンとオフ)の切り替えが難しくなっていることが挙げられる。この住まい方の新しい課題に対し、減少しつつある都市部の“みどり率”を増加させることで行動を変化させようと、農園付き集合住宅を提供するビジネスアイデアを思いついたという。

「農耕×テレワーク」のアイデアについて、赤松さんと大池さんが交互にプレゼンテーションを行った

事業例として挙げたのは、東京都練馬区に約1200m2の用地を取得し一部を宅地化して、残りを農園化するというもの。「農耕×テレワーク」が実現できる住宅環境を提供し、賃料や農園使用料で収益を得る。

住宅規模を縮小して無駄なエネルギー消費を減少させられる上、農園による緑化で地区の緑視率(都市の緑量を表す指標の一つ)が上がる。居住者の行動がより最適化・効率化されていくと、CO2排出量の削減にもつなっていく。さらに、居住地区でテレワークをし、仕事の合間に農作業を行えば、健康的な暮らしも実現していけると結んだ。

「農耕×テレワーク」のビジネスモデル。既に都市型農園事業やオフィス緑化事業が存在することから、農園サービス付き集合住宅のニーズを訴えた

続いて登場したのは、東京工業大学 物質理工学院のChung Yingさんと滝沢亮人さんによるチーム「Y-Labo」。

コロナ禍による「住まい方」の変化に、運動不足で太り気味という悩みが増えていることを指摘。運動データや月ごとの電力使用量を管理できる無料アプリと、発電ができるエアロバイクなどの健康グッズをレンタルするサブスクリプションサービスを行う2段構えの事業アイデアを発表した。

主にプレゼンテーションをChungさんが担当し、滝沢さんは審査員からの質疑に答えた

メイン事業として、アプリで収集したデータを企業に有償提供することに加え、サブスクリプションサービスなどで利益を得る。さらに、発電可能な健康グッズによるCO2排出量の削減実績を、環境省が推進するエコ・アクション・ポイント(※)に変えて利用していく。一方のユーザーは、ダイエットをしながらCO2排出量の削減にも寄与できるというアイデアだ。

発想の根幹には、「これからは自分で使うエネルギーは自分で作る時代」という明確なメッセージがあった。「ダイエットが地球を救う」という夢のあるフレーズを添え、発表を終えた。

※エコ・アクション・ポイント:環境省が推進するポイントプログラム。さまざまなエコ活動に対してポイントが付与される。

「Y-Labo」が発表したビジネスモデル。発電できるエアロバイクは、1回1時間で週に5回トレーニングを行えば年間52kWhの発電につながり、年間30kgのCO2排出量を削減できるという

そして最後に登場したのが「NO2」。大阪大学 大学院の川村俊介さん、長田裕生さん、大島海里さんの3人によるチームだ。

ビジネスアイデアは、個人向け排出権取引サービス「i-ETS」。国が目指す「2050年カーボンニュートラル」と、排出したCO2を売買できる「排出量取引」からアイデアを発展させた。

この日は川村さん、長田さんの2名がオンラインで発表

スマホアプリを介して一般家庭の節電量を管理し、その節電量に値するCO2排出量を権利として、企業に売却。その仲介手数料で利益を生む。さらに、各家庭の消費電力情報を送配電事業者にも有償で提供していこうというビジネスモデルだ。

テレビの電源や照明をこまめに切るなど一般家庭が日常にできる節電量を基に、通常比10%を目標値として掲げた。国内全世帯の44%が参加すれば、年間で約487tものCO2排出量が削減される効果の大きさを伝え、プレゼンを終えた。

「i-ETS」では、参加家庭の節電量は世帯人数から決める想定。世帯人数は年1回の住民票提出でチェックするとしたが、審査員からは「もっと参加ハードルを下げられる方法があれば」との意見も

全国145チームの頂点、EMIRA最優秀賞に輝いたのは?

プレゼンテーションが終わると、審査員5名は別室に移動。約1時間にわたる議論が行われたのち、ついにEMIRA最優秀賞が決定した。受賞したのは、「廃棄物発電を活性化させる生ゴミの水切り促進アプリ『LivLoop』」だ。

コロナ禍に伴い在宅時間が増えたことによって生ごみの量も増えること、それを廃棄物発電に結び付けた着眼点、そして普及を促進するゲーム性などが評価され、プレゼンテーションの巧みさも相まって、満場一致での選出だった。

審査員の満場一致でEMIRA最優秀賞が決定した「LivLoop」のメンバー

プレゼンテーションを担当した「LivLoop」の市川さんは、「非常にうれしく思います。発表する前から最優秀賞を獲得できる自信はありました。それだけ仕上げてきたつもりです」と、喜びと自信をにじませた。

ほかKADOKAWA賞には「赤松・大池」、TEPCO賞には「NO2」、優秀賞には「椙山女学園大学 現代マネジメント学部」と「Y-Labo」がそれぞれ選ばれた。

表彰式後、PEP林教授が「『住まい方』と『エネルギー』ということで難しいテーマだったと思いますが、生ごみの水切りや排出権取引、スモールハウスなど、さまざまな分野から皆さんにアイデアを出していただいた。いろいろと調べて練ってきているのだと感じました。毎年レベルが上がってきていることを、高く評価しています」と総評。

林教授は総評の中で、「収益は大事ですが、サービスを選ぶのは人。人の本質に訴えるようなプランを考えてもらいたかったとも感じました」と、次回以降の宿題を提示した

「エネルギーの未来を皆さんが切り開いていくことを切に願ってやみません」(林教授)と締めくくり、学生の今後に期待を寄せた。

◆アーカイブページはこちら
https://emira-t.jp/bizcon2022/archives/

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