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2025.3.24
「EMIRAビジコン2025」最優秀賞は? 全国の学生205チームの頂点が決定
テーマは「エンタメ×エネルギー」!ビジネスアイデアコンテスト最終審査開催
2020年からスタートした、EMIRAと「早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(以下、PEP)」とのタッグで開催される学生ビジネスアイデアコンテスト「EMIRAビジコン エネルギー・インカレ」(後援:文部科学省他)。今年で6回目となる本コンテストの最終審査、学生5チームによるプレゼンテーションが行われた。果たして最優秀賞に輝いたアイデアは?
「エンタメ×エネルギー」をテーマに歴代最多応募数を記録
さまざまなイノベーションをエネルギー視点で読み解き未来を考えるメディア「EMIRA」、電力・エネルギー業界の人材育成を進める「PEP」。両者共同で開催された「EMIRAビジコン2025 エネルギー・インカレ」の最終審査が、2025年2月22日、東京都新宿区の早稲田大学リサーチイノベーションセンターで行われた。
>第1回「SDGs×エネルギー」リポートはこちら
>第2回「食×エネルギー」リポートはこちら
>第3回「住まい方×エネルギー」リポートはこちら
>第4回「カーボンニュートラル×エネルギー」リポートはこちら
>第5回「モビリティ×エネルギー」リポートはこちら
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最終審査会場の早稲田大学リサーチイノベーションセンターには、エネルギー、電力関連メディアも多数取材に訪れた
第6回となる今回のテーマは「エンタメ×エネルギー」。
21世紀の現在、ショービジネスは驚くほどの進化を遂げ、3DCGのキャラクターによるパフォーマンスに、世界中のファンがリアルタイムで熱狂するなど、今の学生たちが生まれた時代には想像がつかなかったスタイルのエンタメライブが人気を博している。その反響はSNSで交わされる膨大な情報の「つながり」として可視化され、経済を活性化する。まさに、エンタメはさまざまな形で世の中を動かすエネルギーでもある。
今回のビジネスアイデアは、そんな現在にコミットする「エンタメをつくるエネルギー」でも、「エンタメが生むエネルギー」でも良し。デジタルネイティブ世代として生きる学生ならではの自由な発想をプレゼンしてほしいという主催者の思いが込められている。今回、全国の大学生・大学院生から集まったビジネスアイデアは、前年の142件を上回る過去最多の205件。厳正な事前審査を経て残った以下の5チームが最終審査に臨んだ。
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【アイデア名/チーム名】
1.パズナジー/BL4S(早稲田大学)
2.J-クレジット制度による農泊の新規財源/すぎおファーム(国士舘大学)
3.TCGで伝える下水道とエネルギーの循環/Gゼミ~下水の道をひろげる者たち~(中央大学/新潟法律大学校)
4.聖地巡礼により地方の活性化を助けるアプリ/LJA(学習院大学)
5. 家庭用ゴミ処理器の中でミールワーム飼育/Uja-Uja-Mealworm(東京農工大学/早稲田大学)
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当日はまず、5人の審査員を代表して「EMIRA」の亀谷潮太編集長が開会のあいさつを担当。「エンタメというエネルギーとなかなか結び付き難いテーマに応募が集まるのか不安でした。しかし、最終的には過去最多の205チームからの応募をいただきました。皆さんからどのような発想を聞かせていただけるのか、非常に楽しみです」とコメントした。
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「EMIRA」の亀谷潮太編集長
続いて、東京電力ホールディングス株式会社エリアエネルギーイノベーション事業室の飯尾 真室長、早稲田大学理工学術院教授・同大スマート社会技術融合研究機構 機構長・同大卓越大学院PEPプログラム プログラムコーディネーターの林 泰弘教授、株式会社アノマリーのカリスマカンタロー代表取締役、O ltd. CEOでMakaira Art&Designおよびザ・ソーシャルグッドアカデミアの大畑慎治代表の4人の審査員を紹介。そのまま学生たちによるプレゼンテーションが始まった。
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東京電力ホールディングスの飯尾 真エリアエネルギーイノベーション事業室長
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早稲田大学の林 泰弘教授
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株式会社アノマリーのカリスマカンタロー代表取締役
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O ltd. CEOなどを務める大畑慎治代表
エンタメに身近に親しむ学生の“好き”が詰まったアイデアが続々
最初に登壇した早稲田大学の「BL4S」は、“エネルギーをより楽しく、より学びやすく”をテーマにしたパズル×エネルギーの新しいエンタメ「パズナジー」をプレゼン。
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BL4Sの松尾典晟さん。スマートフォンでのアプリゲームの代わりにパズルというアナログなエンタメを日常に取り入れ、消費エネルギーを節約しようというアイデアが光った
「パズナジー」は、従来のパズルの要素に加えて、エネルギーを自分で生み出して謎を解く新感覚の面白さと学びが得られるのが特徴。そのバリエーションは多彩で、スライドパズルで絵柄をそろえると太陽光パネルでためた電気で電球が光るパズルや、「開けゴマ!」としゃべりかけたら箱が開いたり、パーツを組み合わせて風車になったりとさまざま。
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「パズナジー」実際の試作品の写真(表と裏)
現代人の多くが暇つぶしとしてスマートフォンを利用しているが、その利用時間をパズナジーに置き換えることでエネルギーの節約だけでなく、エネルギー教育の現場にも導入できると語った。
続く、国士舘大学の「すぎおファーム」は、エンタメ視点で農泊に着目。「J-クレジット制度による農泊の新規財源」と題したプレゼンを展開した。
J-クレジット制度を活用するアイデアを軸に、森林や農山村で休暇を過ごすエンタメ要素が高い農泊で運営団体の新たな収益向上、資金調達方法を提案。再生可能エネルギーのバイオマス固形燃料(木質バイオマス)による化石燃料代替の認定量と、森林経営活動よる認定量のクレジット売却から収益を得るビジネスアイデアが、詳細なデータとともに発表された。
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すぎおファームを代表し、橋本頼輝さんが発表。詳細なデータが掲載された資料から、徹底したリサーチが行われたことが伝わってきた
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農泊運営団体・自治体が所有する未活用の自然資源の有効活用、二酸化炭素(CO2)排出量削減への間接的な貢献のメリットも提示された
3番手に登壇した中央大学、新潟法律大学校の「Gゼミ~下水の道をひろげる者たち~」は、まるでアニメやゲームのタイトルのようなチーム名の3人組。
「TCGで伝える下水道とエネルギーの循環」と題したプレゼンは、冒頭で下水道をテーマにしたプロモーション動画を披露。廃棄物である下水汚泥や処理水からエネルギーを生み出す現在の下水道の可能性を社会に広めることを目的にトレーディングカードゲーム「Circular economy 水 deck」を制作。リソースカードを手札に、場にある課題カードを3枚先取した人が勝利する、対戦型ゲームが楽しめる。
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(画像左から)中央大学および新潟法律大学校在籍の横山和輝さん、安田愛花さん、松村淑花さん。Gゼミはネガティブなイメージの強い下水道の地位向上のための活動を続けている
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地元・新潟の水道事業者のリクルート活動を支援する目的で企画。カードゲームという娯楽性の強いエンタメから下水道やエネルギー事業の可能性に触れられるアイデアが秀逸
4番手の学習院大学「LJA」は、アニメの聖地巡礼による地域活性を支援するアプリ「アニナビ」を提案。アニメの舞台を訪れ、作品世界に没入する気分を楽しむ聖地巡礼。「アニナビ」を通し、国内外のアニメファンに向け鉄道を移動手段に促し、地域活性化とCO2排出量削減につなげる。
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(画像左から)学習院大学1年生の塩谷莉彩さんと森咲子さん。最も身近なエンターテインメントでもあるアニメーションを軸にアイデアを膨らませていったとのこと
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マップ上に充電スポットを表示しエコカー利用を促進。世界的に注目を集める日本のアニメがもたらす経済効果は高く「地方の財政力上昇にも貢献できると考えられる」とも発表
最後は、東京農工大学と早稲田大学の合同チーム「Uja-Uja-Mealworm」が登壇。家庭用ゴミ処理器の中で「ミールワーム」(飼育動物の生餌として飼育・増殖される甲虫の幼虫)を飼育し、家庭でのゴミ排出量削減と持続可能な虫の生産を両立させるアイデアをプレゼンした。
「虫が大好き」と胸を張る東京農工大学の村田光陽さんは、ミールワームが食品廃棄物や一部のプラスチックを分解できることが科学的に示されていることを紹介。その上で、既存の家庭用生ごみ処理機にAIカメラとセンサーを搭載したミールワーム養殖プラットフォームを組み込み、環境負荷の小さい廃棄物処理と持続可能な虫生産を両立する仕組みを提案。
虫が苦手…という人もミールワームを直視したり触れたりすることなく、実際のミールワームの成育状況をファンシーなビジュアルの育成ゲームとリンクさせ、エンタメ性を向上させるアイデアを披露した。
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終始、虫への愛情がこもった東京農工大学の村田光陽さん(左)のユニークなプレゼンに、会場からはときどき笑い声も上がり楽しい雰囲気に。右はチームメンバーの原田彪吾さん。また、このアイデアを村田さんとともにメインで考案した早稲田大学の藍原朋弘さんは現在ドイツ留学中のため残念ながら参加できなかった
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利用者はミールワームに触ることなく、ペットフードや飼料などの販路に活用される仕組みを確立。水分の多い生ゴミをゴミ処理場で焼却する際のエネルギー削減も可能に
最終審査を終え、最優秀賞に輝いたアイデアは?
全5組によるプレゼン後、審査員はEMIRA最優秀賞を選出。今回、全国の学生から集まった205のアイデアの頂点に立ったのは、「Gゼミ~下水の道をひろげる者たち~」による「TCGで伝える下水道とエネルギーの循環」だった。
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EMIRA最優秀賞の賞状を林教授から受け取り、笑顔を見せる「Gゼミ~下水の道をひろげる者たち~」の横山さん、松村さん、安田さん
審査員を務めた林教授は「(審査員)満場一致で最優秀賞に決まりました」と切り出し講評。「地面の下にあって、世のため人のために非常に大切な設備である下水道の大切さをZ世代に向けてアピールするため、トレーディングカードゲームというエンターテインメントとして作られたというのがいいですし、実際、子どもたちや下水道局の職員の方々に遊び方を教えているとのことで、これからも期待しています」とコメントした。
受賞した「Gゼミ~下水の道をひろげる者たち~」の横山さんは、「先輩たちからゼミで引き継いできているんですが、コンテストに出すのもプレゼンも初めてで、正直なところ本当に緊張しました。ただ、プレゼンしている中で、だんだんと楽しくなってきて。今、実際にプレゼンした瞬間を振り返ってみると、『いい経験になったな』『来て良かったな』と思っています。『下水の道をひろげる者たち』という名前に恥じないよう、これからも頑張っていきたいと思います」と205組の頂点に立った喜びと抱負を述べた。
ほかKADOKAWA賞には「LJA」、TEPCO賞には「Uja-Uja-Mealworm」、優秀賞には「BL4S」「すぎおファーム」がそれぞれ選ばれた。
各チームの表彰後、林教授は「エネルギーの話は、真面目で堅い話が多いんですけど、やっぱりワクワクやドキドキ、高揚感がないと続かないと思います。若い皆さんがワクワク、ドキドキ感を出しながらエネルギッシュにアイデアを出してもらうこと自体が非常に価値のあることだと思っています」と全ての参加者をねぎらった。
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総評を行う林教授
林教授は最後に「経済産業省による、第7次エネルギー基本計画が2月18日に発表されましたが、最後の方に『若い世代や子どもさんにつなげていくような教育をしていくべきだ』とありました。若い皆さんが次の世代にエネルギーとエンタメのタスキをつないで、日本や世界をより良い社会にしていただければと思います」と、未来を担う若者たちにエールを送り、今回のコンテストは閉幕した。
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プレゼンを終えて、審査委員が別室で最終審査を行っている間、参加チームの面々はお互いのプレゼンやビジネスアイデアについて質問し合い、若者同士の絆を育んでいた
「エンタメ×エネルギー」という自由度の高いテーマだからこそ生まれた、さまざまなアイデア。
「EMIRAビジコン2025」に参加した学生たちが、自ら楽しみながら、その実現に向けてまい進することで、より魅力的なエネルギー活用の可能性が広がるはず。
そんな希望に満ちたイベントとなった。
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text & photo :EMIRA編集部
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