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テクノロジーで「働き方」を「働きがい」へ

【働き方改革×テクノロジー】タレンタ株式会社 田中義紀社長

2018年6月に成立した働き方改革法案により、ことし4月から改正法の適用が始まった。これは一般的には、就労時間の上限規制や年間5日間の有給休暇の取得など、働く者の側に立つ改革といわれている。しかし一方で、「時短とタスクを両立するための施策は?」など、それが実作業に及ぼす影響については、これから体感していくことになるだろう。その意味では組織における人の動きを適正化することが、働く側にも、雇う側にも必要になってくる。そこで今回は、HR(ヒューマンリソース)と呼ばれる「人」と「組織」のあり方へのテクノロジーの関わりに注目する。
TOP画像:(C)Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

認識すべきは「働き方」か、それとも「働きがい」か?

今回訪れたのは、「Work Happy!な世の中を創る」をミッションとして掲げ、人材マネジメント領域へのテクノロジー活用を提唱しているタレンタ株式会社だ。大手IT企業からベンチャーに転じた田中義紀社長に、まずは今回の働き方改革について聞いてみた。

「弊社は人材マネジメント領域…人材の採用・育成・評価・異動・登用・組織開発などにおけるテクノロジーの活用を推進しています。今回の働き方改革は、生産性を『成果÷時間』で捉えたときに、分母である“『時間』を減らしましょう”という話であり、分子の『成果』については考慮していません。単純な『時間』のみの削減ではなく、『成果÷時間』をトータルで改善していくことがわれわれのフォーカスポイントとなります」

「もともと、自分自身の成長や周囲の成長に強い関心があったのですが、10年前にHRテクノロジー事業と出合い、これは天職だと思ったんです」と語る、株式会社タレンタの田中義紀社長

では、タレンタが提供するソリューションのポイントはどこか?

それは“働き方”ではなく、“働きがい”だ。

「“働き方”は、給与・待遇・労働時間・福利厚生などといった外発的な動機づけに関わるものです。一方の“働きがい”は、仕事に対してチャレンジしたい気持ちや、貢献・成長しているという実感を持ちたいといった内発的な動機づけに関わります。われわれが手掛けているのは、まさに“働きがい”をかき立てるようなソリューションなのです」

限られた時間の中で成果を上げることを考えたとき、創意工夫を施し、価値を創造していくことのできる環境をどう作るかということが、これからの人材マネジメントに必要なポイントだといわれている。そこでキーワードの一つに挙げられるのが“働きがい”だ。

「内的動機づけは、人間の持つ“自律性”“有能性”“関係性”といった3つの基本的欲求が影響しているといわれています。“自律性”とは『自ら行動を選び、主体的に動きたいという欲求』、“有能性”は『何かを成し遂げて、周囲に影響を与えたいという欲求』、そして“関係性”は『他者と深く結び付き、互いに尊重し合いたいという欲求』。こういった欲求をいかに社員に満たしてもらうか?また、そういう環境づくりができるか?ということですね」

“働きがい”を感じることができる環境づくりのために

田中社長が最初に関わったのは、「3Rings」という、スキルマネジメントシステムだ。

「これは企業独自のスキル・技能やコンピテンシー(高い成果につながる行動特性)などをスキルマップとしてシステムに実装し、定期的にチェックすることで、社員の視点では成長のモノサシとして、組織(チーム)の視点では育成のモノサシとして、会社の視点では人材戦力把握のモノサシとして活用していただくことを狙い開発したものです。

“社員”“組織(チーム)”“会社”の『3つの輪』(3Rings)という意味ですね」

この「3Rings」を実際に導入し、成果を得た企業の一つがリコーグループだ。グループ会社の統合をきっかけに、「3Rings」を人材育成ポータルと位置付け、エンジニアが自律的にキャリアアップを行う仕組みの構築を行った。

また、人材の見える化が実現したことで、肩書きと実際の役割とのギャップが明らかになり、その実情の分析結果を人材戦略に生かすことができるようになったという。

「3Rings」は、当時管理者視点が主流だった人事アプリケーション業界において、ユーザー視点をコンセプトとした、直感的で活用がしやすいリッチなユーザーインターフェースアーキテクチャーを用いて開発された

また「3Rings」は、個人個人で日々どんな本を読んでいるのか?といった書籍購読履歴をはじめ、研修受講履歴や業務遂行履歴、特許取得履歴や講演履歴などの活動履歴を登録することができ、スキルチェックした内容と併せて全社員に公開することができる。これにより、自身が他部署の社員から検索される対象となったり、逆に自身のお手本となり得るロールモデル候補の社員を検索することもできるわけだ。自身が検索対象になることもあるわけで、ここに“自律性”“有能性”“関係性”といった“働きがい”とのシンパシーがある。

「ここ3年ほどアメリカのHRテクノロジー動向を見ていても“エンゲージメント”という言葉が頻繁に使われるようになっています。これはいわゆる『ミレニアルズ』がアメリカの労働人口に占める割合が増えてきたことに関係しています」

2000年以降に成人になった世代を指すミレニアルズ。彼らの思考として「所有より共有」を求めるところがあるという。分かりやすくいえば「買うよりシェアする」「深く狭いつながりより、広く緩いつながりを求める」傾向にあるということだ。

「ミレニアルズは、物質的な豊かさよりも、精神的な豊かさを求める世代であり、“働きがい”をより重要視すると解釈しています。一方、アメリカも好景気が続いており、人材獲得競争も激化の一途をたどり、一度獲得した社員を離職させない、つまり“リテンションする”ということが人材マネジメントの課題を超え経営課題として捉えられるようになっています。“リテンション”の手段として“エンゲージメント”という言葉が注目され、社員の“働きがい”を支援するテクノロジーが多数出てきているわけです」

そもそもエンゲージメントとは社員の会社に対する愛着を示すことと解釈されていた。加えて、アメリカのミレニアルズは、エンゲージメントを強く実感するものとして、「そこにいることで自分がどれだけ成長できるか」を企業に求めるようになっているという。

「その思いに対するソリューションを作ろうという発想で生まれたのが、『Fuel50』というキャリア開発支援システムです。仕組みとしては、まず社員はゲーム感覚で自身の価値観、スキル、コンピテンシー、またキャリアドライブという、現在のポジションでさらにアクセルを踏み込みたいのか?別のポジションにチャレンジしたいのか?といったことを可視化し、社内で共有します。

加えて社内のポジションそのものや、今後社内で必要とされるであろう人材モデルを可視化し、社員が新たなポジションでチャレンジするために、自分に必要なものは何かを知ることができるようにします」

この仕組みをリーダーの目線で見ると、社員に対してよりコーチングがしやすくなり、コミュニケーションを取るきっかけとしても活用できるという。

「Fuel50」は女性2人がニュージーランドで創業した企業のシステム。「男性以上にライフイベントの多い女性が、自律的なキャリア構築ができるソリューションを実現するという観点で生まれたものです」と田中社長は言う

企業の中で成長したいと考える社員に対して、自分自身のキャリア形成のステップアップ過程を可視化する。そして組織は、社員の成長に対してできることを提案する。そういったコミュニケーションを取ることが求められているわけだ。

ここにも“自律性”“有能性”“関係性”といった“働きがい”とのシンパシーがある。

多様性に富んだ社会に対応していくために

日本においてもグローバル化がより求められる企業は多い。加えて外国人労働者の受け入れが進み、より多様性に富んだ社会になっていくことが考えられる。

「人材マネジメントにおけるグローバル化の進展も“働き方”の多様性の一つだと思います。日本人の中だけでも、副業や子育て中の女性の働き方、シニア層の生かし方など多様性を持った“働き方”を実現していく必要がありますよね。そういった社員を今まで以上に早期にかつ継続して戦力化していくためにも、“働きがい”がより重要になりますし、これからの組織づくりで大事なポイントになってくるのではないでしょうか」

「人材マネジメント領域は、人材の獲得・定着化・育成・評価・配置・登用・保持など細分化されています。今後はソリューションラインアップを増やしながら、日本企業で働く個々人の『Work Happy!』の実現と、企業の長期的な価値の向上に貢献してきたいですね」と田中社長は語る

そこにテクノロジーが果たす役割があるはずだと田中社長は言う。しかしそれは、経理業務などの他のバックオフィス業務でテクノロジーが果たす役割とは異なる。

「人材マネジメントにおける課題は、テクノロジーを入れれば解決するというものではなく、現場でのマネジメントスタイルやコミュニケーションスタイルなど、今までのやり方や価値観も併せて変革していく必要があります。私たちはテクノロジーに加え、そういったコミュニケーションスタイルを変革するサービスやきっかけも併せて提供することで、日本企業における人材マネジメントの変革をサポートしていきたいと考えているのです」

「働き方」の改善はもちろん、社員たちの「働きがい」を見いだすためには、組織内のコミュニケーションの活性化が必要だ。

デジタルソリューションを使うことで、それをよりスムーズに進めることができるようになるかもしれない。

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