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再エネ経済学

5大“再エネ”の現在を総ざらい!

億単位の収益を生んだ太陽光発電に代わる金脈はあるか?

数年前から再注目を集めている再生可能エネルギー。その現状と今後の動向は誰もが気になるところ。特集第1回では、「太陽光」「風力」「水力」「バイオマス」「地熱」という主要5種について、再生可能エネルギー普及のための情報収集と戦略研究、および情報の発信を行う「日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)」の代表・北村和也氏に話を聞きながら、それぞれの現状を見ていく。

FIT制度から一気に過熱した太陽光発電

「太陽光発電において、日本はもともと先進的に発達を遂げ、かつては導入量世界1位の座を保持していたんです」

そう北村氏が話すように、再生可能エネルギーと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり太陽光発電だろう。その発展の後押しとなったのは、1974年に通商産業省(現経済産業省)が主導した「サンシャイン計画」だ。1973年に起こった第一次石油危機を背景に、再生可能エネルギーの積極的な導入の模索が開始され、「サンシャイン計画」の下、再生可能エネルギー(通産省が主導していたころは、「新エネルギー」とも呼ばれていた)に多くの補助金が投下されることとなった。

しかし、その後、国内のエネルギー政策は原子力発電にシフト。再生可能エネルギーを促進する政策は徐々に影を潜めていく。原子力発電所1基の発電量が約100万kWであるのに対し、太陽光発電は「メガソーラー」と呼ばれる発電施設でも1万kW(10MW)レベルで、およそ100分の1程度に過ぎないことも、原子力発電が推進される要因として大きかったのだろう。

「その間、ドイツなどのエネルギー先進国は太陽光発電の開発を進め、導入量で日本を上回っていきます。しかし2012年、『再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下、FIT制度)』がスタートし、日本でも再び再生可能エネルギーへの注目が高まり始めました。現在、日本の太陽光発電の導入量は、世界でも五指に入るほどになっている。太陽光発電が圧倒的に多いのは、日本の特徴です」

北村氏は、長年テレビ局でエネルギー関連の報道に携わり、またドイツでの留学経験を生かして日本でも再生可能エネルギーに関する知見を広げようと活動している

太陽光の設備は、他の発電施設と違い、タービンやモーターを駆動させる技術が必要ないのも利点の一つ。「技術的にも施工的にも簡単で、電気の買い取り価格も高価だったため、かつてはメガソーラー関連で億単位はもうけられた」と北村氏は言う。

となれば、やはり今後も日本では太陽光発電が主流となるのだろうか。

「大きな土地を使った『メガソーラー』は頭打ちになると思います。ただ、住宅やビルの屋根の上に載せるソーラーパネルや、それと蓄電池を合わせた発電・給電システムは、今後まだまだ伸びる余地があるでしょう」

大手調査会社ブルームバーグ ニュー エナジー ファイナンス(BNEF)は「ブルームバーグ・ エネルギーアウトルック2016」の中で、2030年の日本のエネルギーミックス(電源構成量)のうち、太陽光発電の割合を11.6%と試算している。その比率からも、太陽光発電の重要度はうかがい知れるだろう。

2030年の日本のエネルギーミックス予測。左はブルームバーグ ニュー エナジー ファイナンス発表、右は経済産業省発表※小数点以下四捨五入

ブルームバーグ ニュー エナジー ファイナンス『ブルームバーグ・ エネルギーアウトルック2016』(2015年6月2日発表)、経済産業省『長期エネルギー需給見通し』(2015年7月16日発表)より抜粋

世界のトレンドは風力発電

一方、太陽光発電と共に“枯渇しないエネルギー”と言われる風力発電については、「日本は風力発電で想定している発電量の割合が低い」と北村氏は嘆く。

「世界的なトレンドは、圧倒的にコスト効率の良い風力発電です。デンマークなどでは発電量の50%を風力発電が占めているといいます。翻って、日本政府の出した2030年のエネルギーミックスに目を向けると、風力発電はわずか1.7%の試算です」

日本の風力発電に対しては、「島国の割に風況が良くない」「平地が少ない」「遠浅沿岸が少ないため、洋上風力発電所を建てにくい」といった問題点ばかりが指摘される。

「また、太陽光発電やバイオマス発電でも同様なのですが、日本は風力発電の建設コストがドイツの2倍ほど。これは高価な施工費や人件費、高い安全基準が背景にあります」

今後、経産省は建設コストを欧米レベルにまで下げる考えだと北村氏は言うが、日本での風力発電の普及拡大は、いばらの道が続きそうだ。

日本では東北地方を中心に、風力発電に取り組む事業者も出てきている(※写真はイメージ)

©M Murakami/Flickr

試行錯誤が繰り返される水力、バイオマス発電

そしてもう一つ、日本で昔からなじみの深い再生可能エネルギーといえば、ダムを筆頭とする水力発電だ。2030年の日本のエネルギーミックスを見ると、水力発電は9%前後。2014年時点ですでに同等の発電電力量を保持しているため、現状から大きく変わることはないと試算されている。

というのも、水源が豊富な日本だが、環境破壊といった側面などから、現実的にもはや大型ダムの建設は厳しい。よって、今後は中小水力発電にシフトしていくこととなる。

水力発電には、ダム式、水車など、いくつかの方法があるが、発電量の大きさでは、ダム式が圧倒的 (※写真はイメージ)

©ポトフ/Flickr

「水力発電が安定的に発電できる使いやすい良い電力なのは間違いないのですが、中小水力発電は初期投資が大きく、また、農業や漁業といった水利権の調整が難しいのです。そのため、中小水力発電所は着実にできるところに造っていくことになり、爆発的に増えるということはないでしょう」

地道な中小水力発電に対し、近年、注目を集めているのが、生物由来の有機性資源をエネルギー源とするバイオマス発電。中でも、チップなどの木質バイオマスを燃焼したり、またはそれらから出るガスを燃焼したりしてタービンを回す木質バイオマス発電だ。

近年、木質バイオマス発電所の建設ラッシュが起きるなど多くの企業が参入しており、資源の有効活用として期待されている木質バイオマスだが、北村氏は「木質バイオマスについては、一定の割合ならともかく、日本が大型の木質バイオマス発電にばかり注力していくというのは注意が必要」と分析する。

「木というのは建築や家具などの材料であり、それ自体が有用な資源。また、いくら日本に森林が多く、間伐材中心の利用とはいえ、原料としてのコストはかかります。需要が増えれば増えるほど、木質チップの値段も上がっていくわけで、大型の発電専用の木質バイオマス発電はいずれ厳しくなると思います」

さらに、木質バイオマスを使った発電は、発生する熱の2割程度しか電気に変えることができず、特に大型の発電施設では残りの大半の熱を捨てているという現実もある。

「これでは資源の無駄遣い。このため、ドイツでは『熱と電気の両方を使う施設(コージェネレーションシステム、熱電併給)でなければ、木質バイオマスの電力をFIT制度の価格で買取らない』と法律が変わった。その結果、ドイツにあった大型木質バイオマスプラントの多くはつぶれてしまったんです」

この流れは必ず日本にも来るとのことで、注目を集めている大型の木質バイオマス発電だが、エネルギー問題を解決する“銀の弾丸”と呼ぶには程遠いというのが現状のようだ。

ポテンシャルの高さに期待される地熱発電

こうした中、北村氏が「日本にポテンシャルがあり、今後は増えると思う」と予測するのが、地熱発電だ。

その名の通り、地下深部のマグマといった地熱を利用した発電システムで、火山大国・日本はアメリカ、インドネシアに続く世界第3位の地熱資源国とされる。ところが現在、発電設備容量は世界第9位。今後、本格的な開発が始まることで、さらなる発展が見込まれている。

「地熱発電の開発は、調査費を含めた費用が百億円単位で、加えて何年もの年月が必要となります。また、その1基の発電キャパシティは100万kWレベル。ポテンシャルと反して、これまで地熱発電が発展してこなかったのは、国の政策によるところが大きいと思います」

国策のエネルギー産業として原発が選ばれ、推進されることとなり、地熱発電は長く日向の道を歩むことはなかった。しかし、「日本は、地熱関連の技術は非常に高い」と、北村氏は太鼓判を押す。研究調査、施工に時間がかかるものの、九州地方を中心に、国内に稼働している地熱発電所が複数あり、今後そのポテンシャルに期待する声は大きい。

火山大国・日本では、もっとも安定した再生可能エネルギーとも言える地熱発電(※写真はイメージ)

©Daniel Jolivet/Flickr

また、地熱を使った発電においては、比較的小規模のいわゆる「バイナリー方式」の導入によって、新たな可能性が見いだされつつある。

バイナリー方式とは、地熱による蒸気や熱水によって、有機物質やアンモニア、水混合液といった水より沸点の低い液体を加熱・蒸発させ、その蒸気でタービンを回す方式を指す。熱サイクルを利用して発電することから効率的で、最近では大分・別府温泉などの温泉地で「湯けむり発電」と称して取り組むなど、温泉熱の再利用でも注目されている。

「ただし、温泉によるバイナリー発電には一定以上の高温な温泉水が必要で、どこの温泉地でもできるわけではありません。そのような中、この方式を使ったユニークな発電方法として注目されているのが、船内での発電システムなんですよ。こちらは、船の推進力である大型エンジンの排熱を再利用しようという試みで、バイナリー発電の新たな可能性として話題になっています」

ここまで、再生可能エネルギー発電技術のそれぞれの現状について、駆け足で見てきた。第2回では、北村氏の話を通じて、日本の再生可能エネルギー戦略が抱える問題点や今後の再生可能エネルギービジネスに目を向けていく。

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