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再エネ経済学

再エネビジネス展望!世界の動向と日本の目指すべき未来は?

エネルギーだけでなく電力システム全体を“ビジネス化”せよ!

再生可能エネルギーの現状と未来を見つめる本特集。本稿では、第1 回に続き日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)の代表・北村和也氏に話を聞きながら、現在の世界的な考え方やこれから目指すべき再エネビジネスの未来について見ていく。

再エネの“輸出産業化”を目指せ!

「日本の再生可能エネルギーの今後を知るためには、ドイツのエネルギー政策がお手本となるかもしれません」

北村氏が例に挙げるドイツは、再生可能エネルギーを電力基盤の主軸に据える構造にシフトした国の一つ。同国は再生可能エネルギー法(EEG)の中で、総電力消費量に対する自然エネルギーの割合を2025年までに40~45%、2035年までに55~60%、2050年までに80%にすると目標を掲げている。

実際に、2000年の6.5%から、2008年に16%、2015年には31.6%まで拡大。太陽光や風力の合計値とはなるが、これまで基軸を担ってきた褐炭、原子力、石炭などを抑えて国内最大の電力源に急成長している。

「この政策を推進する大きな理由の一つは、再生可能エネルギーを自国の基幹産業として考えていることが挙げられるでしょう。新しいビジネスとしての再エネのポテンシャルを高く評価して、自らが再エネ技術の先進国になると決めたのです。すでに再エネビジネスをパッケージ化するなどで、外国への売り込みを進めています」

国内企業のシーメンス社は、電力プロジェクトとして自国製の風車を海外に建てて現地のエネルギー生産を担ったり、エネルギーのコンサルティング業に乗り出したりしている。再生可能エネルギー産業を“輸出産業”と位置付けて、ビジネスを拡大しているという。

日本の再生可能エネルギーの発達は、「産業としての発達あってこそ」と北村氏は語る

将来的には単に風車や太陽光パネルを売ったり、発電施設を建設したりするといったビジネスの時代は終わりを迎える。代わりに送配電システムやVPP(ヴァーチャル・パワー・プラント:各地に分散する小規模な再エネ発電や蓄電池等の設備と電力の需要側を制御することで1つの発電所のように機能させるシステム)といった、トータルにエネルギーをコントロールする方が大きなビジネスになっていくと、北村氏は言う。

「日本も輸出化という観点からエネルギー産業について議論していく必要があります。個々の発電や制御技術でのポテンシャルはあるので、それらを結びつけてビジネスに変えていければ、新たな産業の創出につながると思います」

エネルギー産業をグローバルな視点から見ると、再生可能エネルギーをはじめとした個別の発電方法云々というよりも、全体を通して安全で安価なエネルギーを安定に供給できるシステムの実現が主眼となっている。こういう情勢を認識したうえで、それらのシステムをビジネス的に“儲かる”産業として作り上げることが、今、求められているのだ。

上空から見たドイツの風力発電所。田園風景に風力発電機がずらっと並んでいる

©paul_houle/Flickr

「再エネは不安定」は本当か?

こうした一方で、やはり使う側の立場から気になるのは安定性だ。太陽光発電や風力発電など、自然条件に左右されることが多い再生可能エネルギーで、安定した電力供給ができるのだろうか。

「安定性の話でいうと、これまで、特に太陽光発電と風力発電は、天候に左右される不安定な発電システムとされてきました。しかし、最近ではこの2つの発電はVRE(Variable Renewable Energy:変動的再生可能エネルギー)と呼ばれ、今後はむしろこの2つが最も先に利用すべきベースとなる電源(電力需要の基盤として供給する電力)として考えられてきています」

また、北村氏によれば、太陽光発電や風力発電はその規模が大きくなっていくにつれて、単純に不安定性も減っていくという。たとえある県で風が吹かなくとも、別の県では風が吹くことは珍しくなく、ある場所で曇っていても、広く日本を見れば晴れているところがあることもよくあり、結果として発電量がゼロになることはないそう。

2014年、国際エネルギー機関(IEA)は『ほとんどの国が、ほぼ今のままの送電システムで全電力の30%までをVREによって賄える』というレポート(『The Power of Transformation (電力の変革)』※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構日本語訳版、2015年)を公開している。国際的にはVREで足りない部分を火力発電などでどう埋めていくかという発想になってきているという。

原料費無料の再エネを有効に使う!

安定性の次に頭に浮かぶのが価格。火力や原子力に比べ、再生可能エネルギーは総合的に発電コストが高いとも言われる。そういった面で、再生可能エネルギーは経済的、あるいは実用的といえるのだろうか。

「太陽光発電や風力発電の大きな特徴として、経済用語でいうところの“限界費用”、つまり原料費がゼロ(無料)ということがあります。発電施設の建設費などの初期投資を償却し終えれば、新たに生まれてくるエネルギーは無料で生産されたものになる。電力を“送る側(発電、供給)”の立場からすれば、火力発電などコストのかかる電力よりも、コストのかからないVREを先に供給していき、足りない部分を他の発電方法で補填した方が安上がりなわけです」

実際に先を行くドイツの電力市場では、限界費用がゼロ、つまりコストの安い再エネの電力から売れている。

「先日、IEAが、『VREが不安定で、エネルギーのコストを上げるという話はウソだ』と解説した『風と太陽をグリッドに』というレポートを出しました。レポートは、“グリッド・インテグレイションの神話と真実”と銘打って、現状認識されている再エネの常識を次々と論破しています」

日本で語られる一般的な認識とは裏腹に、太陽光発電や風力発電といったVREは電力の基盤としての可能性を見出されつつある。安全で安定した電力を求めるのは当然だが、北村氏は「今、エネルギーは経済学的な考え方が大事になってきたし、再エネが産業としても優位に立ちつつある」と言う。

日本の再エネの主力であった太陽光発電の売電価格が下がり、事業者が安易にエネルギービジネスに参画してきた段階は終わった。しかしながら、発想を別の方向にシフトすることで日本を、日本のエネルギーを支える一翼を担う可能性を秘めている。今後は、エネルギーシステム全体を見据えたノウハウをいかに外に向けたビジネスへと昇華できるか。日本企業の真価が問われることだろう。

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