特集
地球上にあふれる「ゴミ」について考える

微生物が24時間で分解! 生ゴミは“運ばず、燃やさず、その場で処理”が最先端に

各施設で生じる生ゴミ廃棄量の削減を実現させる最新生ゴミ処理機とは

各自治体が収集・処理するゴミの量は年々増加傾向にある。中でも生ゴミは水分量が大きく、輸送や燃焼にかかるコストなどの面からも憂慮すべき課題となっている。そのような状況を背景に注目されているのが生ゴミ処理機だ。今回の「ゴミ」特集ラストは、学校や病院、有名ホテルの厨房などに生ゴミ処理機が採用されたシンクピア・ジャパン株式会社(神奈川県横浜市)を訪ね、その実力を探った。

生ゴミ処理機には3つの方式がある

一言で生ゴミ処理機といっても、その方式には3つある。

まずは、焼却し灰の状態まで容積を減らす「焼却方式」。そして乾燥させるだけで量を減らす「乾燥方式」。この2つは灰や乾いた生ゴミをさらに廃棄しなければならないというデメリットがある。これらと異なるのが3つ目の「バクテリア方式」だ。

「バクテリア方式」とは微生物のエネルギーによって生ゴミを生分解し、最終的には二酸化炭素と水分にまで分解。これによって生ゴミの減量化を図るものだ。この「バクテリア方式」は、さらに「堆肥型」と「消滅型」の2種類に分かれる。

「堆肥型」とは微生物によって有機物を熟成させ、堆肥にしやすい成分にしようというもの。ただし、そのまま使えるわけではない。堆肥として使用するためには原則的に2次処理が必要であり、さらに処理機の中に残渣(ざんさ)が残るため、定期的にそれを取り出すメンテナンス作業が必要となる。

一方の「消滅型」は、微生物によって生分解するまでは「堆肥型」と同じ。しかし基本的には残渣が出ず、生分解された水分と炭酸ガスが排出され、発酵臭も少なく、室内に設置することも可能だ。

シンクピアの生ゴミ処理機の内部。これは、とある企業から依頼されてカボスをテスト処理しているところ。小さな筒状のものの中に微生物がすみ着いている

屋内、屋外どちらにも設置が可能な生ゴミ処理機

シンクピア・ジャパン株式会社が展開するのは、この「消滅型」生ゴミ処理機となる。業務用調理器具のような筐体(きょうたい)の中で、微生物たちはどんな働きを見せているのだろうか。

生ゴミの構成成分は、大別すると以下のようになる。

■タンパク質:アミノ酸が鎖状に連結して構成される。大豆タンパク、乳タンパクなど
■脂肪:脂肪酸とトリグリセライド(中性脂肪の一つ)で構成される。植物油、動物油など
■炭水化物:糖により構成。砂糖、デンプンなどの糖質、寒天などの植物繊維がある。植物繊維は微生物による生分解が難しいとされる
■灰分:無機物(カルシウム、鉄、ナトリウムなど)。微生物による生分解が難しいとされる
■水分:水

例えば、微生物がタンパク質を生分解すると、成分のうちのアミノ酸やペプチドはエサとなり、そのほかは炭酸ガスと水分になって排出される。

同様に脂肪は脂肪酸とグリセリン、炭水化物は糖がそれぞれ微生物のエサとなる。

58歳で起業し、70歳を超えた今も日本中を飛び回る松岡清次代表取締役

シンクピア・ジャパン株式会社(以下、シンクピア)代表取締役の松岡清次さんは、「当社では自然界から採取・培養した微生物を使用しています。さらに異なる特性を持った微生物をブレンドすることで、素早く生分解処理をすることができるのです」と語る。

そしてそれを実現した背景には、多くの人の協力と創意工夫があったのだという。

数億もの微生物が生ゴミを素早く生分解する

松岡社長がシンクピアを起業したのは58歳のとき。それまでは東京・秋葉原で家電製品などを販売する敏腕営業マンだった。

「ECサイトが普及するにつれ、ビジネスのスタイルが変わっていきました。その頃に偶然出合ったのがバクテリア方式消滅型の生ゴミ処理機。最初はその実力が分からなかったのですが、試験的に十数台を各地の家庭で試してみたところ『臭くない』『残渣が少ない』『消費電力が少ない』といった声が多く聞かれました。その反応を見て、『電化製品を売るのではなく、これをより多くの人に使ってもらうようにしたい』と思い、起業することにしたのです」

右がシンクピアの生ゴミ処理機「SINKPIA GJ-20」。これでおよそ20kgの生ゴミを約24時間で分解・処理する能力を持ち、残るのは分解液のみ。洗面台と比べるとその小ささが分かる。サイズは幅655×奥行き505×高さ827(mm)、重量は約72kg

電化製品の営業マンとしては30年以上のキャリアを持つ松岡社長だが、生ゴミ処理機については素人同然。会社のことを知ってもらおうと展示会に出展しても、逆に来場者から生ゴミ処理業界について教えてもらうことの方が多いくらいだったという。

2009年、そんな松岡社長に最初のチャンスが巡ってくる。三重県内のとある給食調理場で228日間にわたる実証試験を行うと、実に約9.3トンもの生ゴミ削減に成功するのだ。そうやって現在では同社のキャッチフレーズにもなっている“(生ゴミを)運ばず・燃やさず・その場で処理”を実証してみせた。

「われわれは生ゴミ処理機をプロデュースする会社です。生ゴミ処理機そのものは日本国内の当社指定の2工場で製造しています」

シンクピアに協力している企業はほかにもある。消滅型の最重要ポイントである微生物・その微生物の棲息場所となる微生物ハウスの供給については、プリマハム、クラレや前澤化成工業など大手企業が名を連ねる。松岡社長はそれら全ての門戸を自らたたき、その熱意で供給を取り付けてきたのだという。専門メーカーをコーディネートすることで、それぞれの特徴を生かした生ゴミ処理機を作り上げる、稀有(けう)なスタイルだ。

その結果、現在は数種類の微生物をブレンドすることで生分解時に発生する発酵臭の抑制に優れる微生物「シンクザイム」と、それを生息させるための4種類の微生物ハウスを持つ。

「例えば、クラレが世界で初めて開発・事業化した機能性樹脂『ポバール樹脂』から作られている直径約4mmの『クラゲール』という微生物ハウスは、1粒に約0.02mmの穴を複数開けた極めて微細な網目状構造を持ち、その1粒の中に数億個の微生物をすみ着かせることができます。そのほかには生ゴミの分解に最適化した多孔質構造の『バイオスター』、親水化材を含むことで水濡れ性がよく、導入時の立ち上がりが早い『BCN+』、水処理技術に使用する多孔質溶融プラスチックを改良した『バイオキャリアプラスティック』があります」

微生物「シンクザイム」。生ゴミ処理に適した種類をブレンドしている

左上から時計回りに、微生物ハウス「クラゲール」、「バイオスター」、「BCN+」、「バイオキャリアプラスティック」

では、実際に生ゴミ処理機ではどのような工程を踏むのか。

主なステップは次のようになる。

1:微生物を活発に活動させるために「水分」「酸素」「温度」を管理した後、生ゴミと微生物ハウスを混ぜ合わせる

2:定期的に攪拌(かくはん)する。微生物は捕食することで熱を発するため、定期的にシャワーをかけて内部の温度を20~30度に抑える。これを放置して高温になると、臭いを発する原因ともなる

3:生ゴミの種類にもよるが、おおむね24時間で処理は完了となる。投入された生ゴミは随時生分解されるので、原則的に残渣を取り出す必要はない

4:分解された水分は排水する

シンクピアの生分解の様子を映した動画がこちら

「従来の消滅型生ゴミ処理機はもみ殻を使っていました。ですが、そこに生息する微生物は少ないのです。例えれば、もみ殻は一戸建てで、われわれの微生物ハウスは集合住宅。微生物の数が多いから、生ゴミを食べるスピードも速いのです。

さらに、もみ殻は水分を含むので重たくなります。すると攪拌するための動力エネルギーも余計必要になってきます。実際、攪拌機を動かすためのモーターもわれわれのものは小さく、小型機から日量100kg処理タイプの製品まで消費電力も少ないのです」

生ゴミ処理の新たな可能性を求めて

人々が生活する上で必ず出てくるゴミ。人口が増え、暮らしが多様化する中で、ゴミをいかにして処理するかということは、日本のみならず、地球全体の課題となっている。

松岡社長も「生ゴミの全体量を減らさなければいけないという意味で、社会的な意義があるものだという認識でこの仕事をやっています」と胸を張る。

「例えば、プラスチックゴミ。これは海洋汚染や処理場の問題があると聞いています。一方、植物由来のバイオマスプラスチックがありますよね? これでわれわれが使っている微生物ハウスを作るとどうなるか──。

現在は石油由来のもので作っているため、フルメンテナンスの微生物ハウスの入れ替え作業がどうしても必要なのですが、植物由来のもので製造すれば生ゴミと一緒に時間をかけて生分解できるようになります。これによって微生物ハウスの取り替えが必要なく、追加するだけで済むので、ますますわれわれの生ゴミ処理機は使いやすく、そして地球環境に配慮したものになっていくと思います」

トウモロコシ(植物)由来のプラスチックで試作した微生物ハウス

さらに松岡社長は、バイオマスプラスチックによるメリットを得られるのは微生物ハウスだけではないという。

「例えば、カトラリー。飛行機の機内食やホテルなどで用いられるフォークやナイフをバイオマスプラスチック製のものにすれば、生ゴミと一緒に処理機で処分することができます。それがフェリーなど船舶で使用されるものであれば、われわれの生ゴミ処理機を船内に設置することで外に持ち出すゴミを減らすことにもつながるわけですよね。運送しないで済むということで省エネにもなります。数年後の実用化に向けて、関係各社と連携した研究を始めています」

農業への活用にも積極的だ。

前述のように、バクテリア方式には「堆肥型」と「消滅型」がある。しかし、「消滅型」であるシンクピアの生ゴミ処理機から排出される水も有機分解された後のものであり、栄養価の残るものだという。

「それを例えばポリタンクにためて発酵させるとします。すると2週間程度で2次発酵まで終わるので、それを希釈して再利用すれば、花壇や家庭菜園などの堆肥として活用できます。これは実際、沖縄の保育園などで事例があり、シンクピアの生ゴミ処理機の分解液を利用した本格的な栽培テストが大学・企業との連携でスタートしたところでもあります。この循環ができれば、社会にとって有益なものになると思うのです。

さらに近年、大型台風など大規模な自然災害が発生していますよね。そんなときに生ゴミをその場で処理できれば、衛生面の心配を多少なりとも軽減することができるはずです。そんなふうに社会貢献できる製品を作っていきたいですね」

シンクピアで経営企画を担当する松岡亮介専務取締役。今後は音楽フェスやスポーツ会場、イベントといった人が多く集まるフードコートなどでデモンストレーションを行ってみたいという

これまでは生ゴミが出ると、それを運び出し、焼却して処理をしてきた。

そのいずれにも多大なるエネルギーが必要となり、地球温暖化などにも影響を及ぼす。

この生ゴミ処理機には、それをほぼゼロにする可能性が秘められている。

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