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CO2を海中に取り込むブルーカーボンの可能性

排出されたCO2をクレジットで相殺! ブルーカーボン事業の先駆者・横浜市の海洋資源活用

環境保護を目的に、国よりも早く先進的かつ独自の取り組みを展開してきた横浜市

2011年に「環境未来都市」に選定されて以降、「誰もが暮らしたいまち」「誰もが活力あるまち」の創造に尽力し続け、2018年には「SDGs未来都市」に選定された神奈川県横浜市。環境問題の解決に向けて積極的に取り組む横浜市では、ブルーカーボンにもいち早く着目し、カーボン・オフセット制度を制定するなど、先進的な取り組みを行ってきた。今回は横浜市 温暖化対策統括本部 プロジェクト推進課 担当係長 村井佑貴氏に、横浜市のこれまでの取り組みから今後のビジョンについて聞いた。

10年前に既にカーボン・オフセット制度を施行

海草・海藻類の働きによって、海に吸収される二酸化炭素(CO2)は「ブルーカーボン」と呼ばれており、CO2の吸収源の新しい選択肢として注目を集めている。

地球温暖化の緩和を加速する機運が高まる中、ブルーカーボンに関する技術研究組合であるジャパンブルーエコノミー技術研究組合(以下、JBE)と国土交通省が連携して運営するブルーカーボン・オフセット制度が2020年度に試行された。

この制度は、海草・海藻類から成る藻場の保全活動によって生まれたCO2枠をJブルークレジットとし、CO2削減を希望する企業に販売するというもの。Jブルークレジットを取引することで、藻場の保全活動を行うNPO法人や市民団体は活動資金が得られ、Jブルークレジットを購入した企業は自社の商業活動により排出されたCO2の埋め合わせができる。これにより、藻場の保全活動に持続可能性が生まれたり、CO2排出量の埋め合わせを行った企業は企業価値を向上させられるなど、早くも副次的な効果も生まれている。

そんなJブルークレジットが誕生する以前に、ブルーカーボンに着目し、独自のカーボン・オフセット制度を展開していたのが横浜市だ。

横浜市は、2014年より独自の「横浜ブルーカーボン・オフセット制度」を展開し、オフセットの促進に取り組んできた。ちなみに全国的に早い段階で、ブルーカーボンを用いたカーボン・オフセット制度を導入した自治体としては、横浜市の他に博多湾の藻場によるCO2の吸収・貯留量をクレジットとして扱う「福岡市博多湾ブル—カーボン・オフセット制度」を創設した福岡県福岡市が挙げられる。

それでも両市を比べると6年ものタイムラグがあり、このことからも横浜市の先見性がうかがえるが、独自のカーボン・オフセット制度とはどのようなものなのか。横浜市の村井佑貴氏は次のように解説する。

「横浜市のカーボン・オフセット制度は、ブルーカーボンとブルーリソースの2つを軸にしたもので、これらをクレジットとして一般企業などに活用してもらっています。市で認証しているブルーカーボンは、一般的なブルーカーボンと同じで、コンブやワカメといった海草・海藻類によって吸収されたCO2を指します。また、市におけるブルーカーボンの対象は、基本的には、横浜の海で養殖されているコンブやワカメによって吸収・固定されたCO2です」

「横浜市では豊かな海を未来に残すためにブルーカーボン事業に取り組んでいます」と語る村井氏

もう一方のブルーリソースとは、臨海部を中心に排出されるCO2に焦点を当てたもの。これは省エネなどの取り組みによって臨海部で削減されたCO2の枠をブルーリソース・クレジットとして活用しているという。

「港や海では重油を燃料とするタグボートが運航しており、運航の際に大量のCO2を排出しています。しかし、重油ではなくLNG(液化天然ガス)を燃料とするタグボートを導入したり、従来のタグボートに電動モーターを導入し重油の使用量を減らしたりすることで、CO2の排出量が削減されます。また、臨海部の施設で海水のエネルギーを活用する海水ヒートポンプを導入したり、ワカメを市内で生産・消費し、市外から運輸される機会を減らしたりすることでもCO2を削減できます。横浜市では、こうした取り組みの下で削減されたCO2をブルーリソースとして認証しています」

横浜市が運営するカーボン・オフセット制度は徐々に認知度も高まり、ブルーカーボン・クレジットやブルーリソース・クレジットを利用する企業数は増加傾向にあるそうだ。

例えば、2020年度においては、株式会社横浜八景島をはじめとする5者がブルーカーボン・クレジットやブルーリソース・クレジットを創出したのに対し、世界トライアスロンシリーズ横浜大会組織委員会など17者がクレジットを活用している。

なお、同年度に5者が創出したブルーカーボンやブルーリソースの総量は約260トン。それに対して、17者がオフセットしたCO2量は約340トンに上る。一見、数値のつじつまが合わないように感じるが、ブルーカーボン・クレジットやブルーリソース・クレジットは前年に認証されたものも利用可能なのだという。

そのため、クレジットを利用する企業や団体が特に多かった同年度においては、創出されたクレジットを活用されたクレジットが上回る結果になったのだ。

環境保全に向けて横浜市が進めるプロジェクト

横浜市では、温室効果ガスの削減と経済活性化を長らく推進してきた。

2011年度にはその一環として、海洋資源を活用した温暖化対策プロジェクト・横浜ブルーカーボンに取り組み始めた。

「横浜ブルーカーボン」は、ブルーカーボンやブルーリソースの創出と活用、親しみやすい海づくりという3つの要素で構成されるプロジェクトだ

村井氏は、その中の一つである“親しみやすい海づくり”も、ブルーカーボンやブルーリソースの創出・活用と同様に重要な取り組みだと言う。

「ブルーカーボンやブルーリソースの創出・活用は、目前にある問題を解決するためのプロジェクトであるのに対し、親しみやすい海づくりは、次世代に豊かな環境を残す上で必要なプロジェクトです。未来を担う子どもたちの内面に環境保護の意識を養うことを目的に、市内の企業や団体、大学などの協力を得ながら、子どもたちや市民の方々を対象として環境啓発活動を行ってきました。具体的な活動例としては、横浜・八景島シーパラダイスで開催されるワカメの植え付けと収穫イベント、東京湾の生きもの観察ツアー、横浜で開催されるトライアスロン大会でのブース出展などがあります」

その中でも、特にユニークで好評を博しているのが、ワカメの植え付けと収穫イベントだ。

「このイベントでは、横浜・八景島シーパラダイスの飼育員の方から直接、海の環境やワカメの生態について話を聞ける上、自らの手でワカメの植え付けができます。また、およそ3カ月後には、植え付けたワカメの収穫も体験できます。参加された方々からは『3カ月でワカメがこんなにも育つとは知らなかった』『貴重な体験をさせてもらった』といった感想が聞かれることが多いですね」

2021年12月に横浜市でワカメ植え付けイベントが開催された際、植え付けて海中に下ろす様子

収穫体験時の様子。植え付けたときは10cm程度だったワカメが1m以上に成長する

親しみやすい海づくりを行う主な目的は、CO2を吸収するというワカメの性質や海の環境などに興味を持ってもらい、さらには脱温暖化の意識を育んでもらうこと。加えて、収穫したワカメを持ち帰り、自宅で食べることで地産地消の魅力を知る機会にもなるだろう。

港の実質CO2排出ゼロに向けて推し進める新たな取り組み

記事の冒頭で記載したとおり、近年、JBEと国土交通省が運営するカーボン・オフセット制度が試行された。これを区切りに、横浜市のブルーカーボン・オフセット制度は2023年3月をもって終了するという。

「国がブルーカーボンに対する検討を始めたこともあり、横浜市で行ってきた独自の取り組みは終了します。しかし、環境啓発活動である親しみやすい海づくりは、今後も続けていきたいと思います」

2018年に「SDGs未来都市」に選定され、同年には2050年までの脱炭素化「Zero Carbon Yokohama」を宣言している横浜市。

これまでも環境への意識を高く持ち、先進的な施策も積極的に取り入れてきた。

今後も、各自治体や環境保護に取り組む組織にとっての手本となる新たな取り組みの創出に期待したい。

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