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長寿時代の筋肉100%活用術

90歳からでも筋肉量は増やせる!これだけはやるべき筋トレ法

心疾患も筋力低下が原因に?日本人唯一のDACBSP保持ドクターが教える正しいトレーニングとは

健康寿命を延ばすために、注目すべき筋肉が「大腿部(太もも)」であることは、第2回で早稲田大学の川上教授が指摘してくれた通り。そこで特集第3回では、日本人で唯一、スポーツ・カイロプラクティックの最高学位であるDACBSPを取得しているドクター・榊原直樹氏に、自宅で実践できる効率のよい筋トレ方法を聞いた。

ターゲットとなる筋肉を見失うな!

「トレーニングはいつ始めても、遅すぎることはない。90歳の方でも、正しいトレーニングを行うことで筋量を増やすことはできるんです」

アメリカのクリーブランド・カイロプラクティックカレッジ ロサンゼルス校を卒業し、現在はカイロプラクターとして活躍する榊原直樹氏は、ボディビルの経験も持つ筋肉のスペシャリストだ。

愛知県の名古屋駅近くに、カイロプラクティック院を開院する榊原直樹氏

「自己流で始めるとケガをする人も多いため、正しいフォームを覚えるまでは経験豊富な指導者の元でトレーニングを行ってください」

例えば、ジムに通い始めたばかりの人が、見よう見まねでマシントレーニングをする。一見、正しくトレーニングできているように思えるかもしれないが、実は掛かるべきところに負荷が掛けられていないことがある。

「どのトレーニングにも、必ず“ターゲット”となる筋肉があります。そこに正しく負荷をかけられなければ、膝、股関節など、周囲の関節に負荷が逃げることになる。そうなれば、健康維持のために始めたトレーニングがあだとなって、ケガをしかねません」

三日坊主が鍛えるべきは尻と背中

とはいえ、仕事が多忙で指導してくれるトレーナーのいるジム通いはままならないという人も少なくないだろう。そのような人のために、榊原氏が推奨するトレーニングは、正しいスクワットだ。

「スクワットがターゲットとする筋肉は、大腿四頭筋(だいたいしとうきん、太ももの前側の筋肉)と大殿筋(だいでんきん、お尻の筋肉)です。さらに運動時(スクワット時)の上半身の姿勢を維持するために広背筋(背中の筋肉)も使われています。特に、大殿筋と広背筋は、クルマでいうところのエンジンに当たります。つまり、歩いたり、立ったり、しゃが んだりという生活の基本動作につながる重要な部分。そこが衰えると、排気量が小さいエンジンのようになってしまい、馬力が落ちてしまうんです」

正しいスクワットは、股関節で体重を支える。膝が爪先より前に出ていないのがポイント。股関節を動かした結果、自然と膝が曲がるイメージ。初心者はイスを置いて、支えきれなくなったら座るチェアスクワットがおすすめ

膝などに負荷がかかる、間違ったスクワット例。初心者は、膝が爪先より前に出たり(左)、内股になったり(右)しがちなので注意を

軽くスクワットをした状態で、肘を後ろに引くと、広背筋が鍛えられる。慣れてきたら、水を入れたペットボトルを持ちながらやると効果的だ

大臀筋と広背筋は、体の中でも比較的大きな筋肉で、これまであまり運動をしてこなかった人にまず鍛えてほしい部位だという。

「最近、体幹トレーニングが注目されていますが、大臀筋も広背筋も体幹の安定に重要な役割を果たしています。もちろん体幹を鍛えるのも悪くはないのですが、深層部の筋肉である腹横筋(ふくおうきん)などは、とっても薄っぺらい筋肉なんです」

つまり、トレーニングのプライオリティとして、初心者がいきなり深層部にある薄っぺらな筋肉を鍛えるより、より大きな効果が期待できる筋肉を鍛えた方が効率的だという。さらに、大臀筋と広背筋は効果を実感しやすい部位でもあり、モチベーションも上がるだろうと榊原氏は続ける。

「初心者は正しいフォームを覚えるという意味で、毎日トレーニングを行ってもいいと思います。チェアスクワットは、10回を1セットとして3セットほどでしょうか。ただし、毎日のトレーニングを負担に感じる人は、回数を減らしてください。回数よりも、日々継続することが何より大切なことなのですから」

筋肉量を増やすためには、一度のトレーニング量は少なくとも、まずは継続して行うことが大切。最初は週末トレーニングを目標に設定し、慣れてきたら徐々に回数を増やしていくことをおすすめしたい。

ただし、高負荷をかけた本格的なトレーニングの段階になれば、しっかりとした休養が求められる。“筋細胞を破壊する行為”であるトレーニングには、休養して修復する時間も重要なのだ。運動、栄養、休養、この3つのバランスが整ったときに、より効率的に筋量がアップする。

筋量アップで“心”の健康寿命も延伸できる

健康で生き生きとした老後にかかせない筋肉には、もう一つ重要な役割がある。それは、血流を促進させる機能、つまり血液のポンプ機能だ。

「筋肉は『第2の心臓』としての役割を担っています。筋量が低下すると、その分心臓への負担が増加します。結果、心臓がオーバーワークになり、心筋梗塞など心疾患のリスクが高まるのです」

他にも、例えば心不全患者が早足歩行や坂道・階段で息切れや呼吸困難を起こす原因は心臓の収縮力の低下によるところが大きいとみられてきた。しかし国立循環器病研究センターによれば、運動能力(最高酸素摂取量=体に酸素を取り込む能力)と心臓の強さ(収縮力)とは関係がなく、運動能力と密接に関係するのは、骨格筋(手足の筋肉)の筋力や筋肉量であることが分かってきている。

つまり、心不全患者が坂道で息切れするのは、心臓の収縮力が弱いことが直接の原因ではなく、骨格筋の筋力や筋肉量が低下している結果、運動によって筋肉に疲労物質が蓄積しやすく、それを神経が感じるからだというのだ。筋肉は血液、そして酸素を循環させるためになくてはならない存在ということになる。

心臟病患者の運動能力と心臓の強さ、および筋肉量との関係

引用:国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス より

「こうした健康維持をきっかけにトレーニングを始めた方の多くは、食事や睡眠にも気を配り、規則正しい生活を送るようになります。そして、筋量アップと共に体力もつき、メンタルエネルギーも向上するんです。『やればできる』という実感が自信につながり、性格もポジティブに生まれ変わりますよ」

榊原氏は過去に引きこもりの高校生にダンベルの使い方を指導。彼はその1年半後に体格も表情も見違えるほどに変貌して、今では大学に通い、青春を謳歌(おうか)するまでになったという経験があるという。

実際、ジョギングなどのリズム運動を行うことで脳内の元気ホルモンであるセロトニンの分泌が促されたり、筋トレによって別名“モテホルモン”とも呼ばれる男性ホルモン・テストステロンの分泌が促されたりと、ポジティブになるための物質が生成されることは多くの研究で明らかになっている。肉体的にだけではなく、“心”の健康寿命まで延ばしてくれるとなれば、良いことしかないだろう。

「ただし、必要以上に筋肉をつけると、運動エネルギーの効率は悪くなります。動くためにたくさんのエネルギーを必要とする、いわば燃費の悪いクルマ状態になってしまわないよう、気を付けることも必要でしょう」

最後に、健康寿命を延ばすために、榊原氏の専門であるカイロプラクティックの正しい利用法も聞いてみた。

カイロプラクティック療法だけでなく、TRX、バーベル、バランスボールを使ったパーソナルトレーニングも実施

「カイロプラクティックでは、特に姿勢を重視します。悪い姿勢というのは、肉体にも、精神にも悪影響を及ぼす。そういう意味では、予防医学としての観点で利用していただくのがおすすめです。もちろん痛みを改善するために来院される方もいらっしゃいますが、私の患者さんの半数以上が“メンテナンス”を目的とされているんです。月1回、2カ月に1回……ご自身のペースで通っていただければ十分だと思います」

正しいトレーニングで筋量を増やし、カイロプラクティックでケガの予防をする。肉体的にだけでなく精神的にも健康になれば、より明るい未来が容易に想像できるようになるのではないだろうか。

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